第48話 ツインテールアタック
「うがぁぁぁぁぁ!! 新学期やだー!! ずっと夏休みが良いぃぃぃぃ!!」
そう言って、教室内で可愛らしいツインテールを振り回すのは片桐さん。
そんな片桐さんを灯は苦笑いで宥めていた。
「まぁまぁななちん。 時間が経つのはしょうがないよ。 ほら、現実を認めよう」
「嫌だぁ。 認めたくない現実だってあるんだよぉ……うぅ……お昼までぐっすり寝て、ダラダラした生活を過ごしたいぃぃぃ……」
片桐さんは灯の机に突っ伏して、グチグチと呟く。
灯はそんな片桐さんを見て困った表情を浮かべながら、肩を揺すった。
「もう夏休み終わって1週間だぜ? そろそろ片桐さん諦めなって。 諦めたくない理由はなんとなく分かるけどさぁ」
「うぅ……でもさぁ、でもさぁ……」
片桐さんは右頬を机にくっつけながら俺の方を見る。
片桐さんの柔らかそうな頬は机にピッタリとくっついていて、綺麗な髪が頬を撫でた。
「泉。 ななちんがここまで嫌がるのには、理由があるの」
「理由??」
「それはねーーーーーー」
灯の真剣な表情に、俺は思わず背筋を伸ばしてしまう。
しかし、理由を聞くと少し拍子抜けしてしまい、身体の力が抜けてしまったのだった。
「ーーーーーー体育祭の練習をすっごくしたくないっていう理由なの」
「………へ?」
「嫌だぁぁぁ! 炎天下の中、行進の練習とかダンスの練習したくないぃぃぃぃ!!」
「ぐぼぉぉ!!」
俺がポカーンと口を開けて呆けていると、片桐さんが席から立ち上がる。
そして、拳を握りながら俺の方を向いた時、片桐さんの綺麗で可愛らしいツインテールは、俺の顔面に思いっきりヒットした。
い、痛い……!! 顔面が痛いのは勿論なんだけど、髪が目に刺さって目が開けられねぇ。
「ぐぉぉぉぉ」
「ちょっと泉大丈夫!?」
「!? どうした? 誰にやられた!?」
「「ななちん(片桐さん)だよ!!!」」
灯から理由を聞いた片桐さんは手を合わせて謝ってくる。
それに対して俺は、手をヒラヒラと振って大丈夫だと伝えた。
……ツインテールって、武器にもなるんだな。
「片桐さん、そこまで嫌わなくて良いんじゃないの?」
「嫌だ! 暑い中何回も何回も同じ動きをしないといけないのは嫌だ!」
「えぇ……」
「高山だって暑い中行進の練習とか嫌でしょ!? まだクーラーが効いた部屋で数学とかやった方がマシだよ!」
片桐さんは拳を強く握り、その拳を見ながら熱く語る。
その様子を見て、俺は余計なことは言うまいと思った。
「あー! 体育祭は全然晴れて良いから、練習の間は出来るだけ雨降ってくれー!! 頼むー!!」
片桐さんは手を合わせて空の方を拝む。
その様子を見て、俺と灯は苦笑いを浮かべたのだった。




