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第33話 アイスクリーム大事件

 外に出ると暑い暑い太陽が容赦なく降り注ぐ。


 さっきまでコンビニの中に居たから、外に出た瞬間、またコンビニに引き返したい気持ちになった。


 下を見るとコンクリートが熱そうだ。


 もしかしたら陽炎が出ているのかもしれないな。


「後少しで夏休みだね〜」


 公園のベンチに座っている夏服の灯が、カップアイスに悪戦苦闘しながら話し始める。


 表情は険しく、しきりにスプーンをアイスに突き刺していた。


 あ〜分かるよそれ。 アイスがカチカチすぎてスプーンが上手く刺さらないんだよな。


 こんな暑い日には早く食べたいのに、食べられないのはストレスになるよな。


「その前にテストあるのマジだるい〜! でも、高山が勉強教えてくれてるから、今回もなんとかなりそう」


 灯の隣にいる夏服の片桐さんが、2つにパキッと割ることができるアイスを食べ始める。


 それ、美味しいよな。 時々食べたくなる。


 昔はよくアイスを買っては都と半分こしてたっけ。


 …………そういや、都と俺用にこの割れるアイスを買ったのに、何故か都と晴に食べられてたことがあったな。 それも複数回。


 …………次晴に会ったら、アイス奢らせよ。


「みんなは夏休みの予定決めてんの?」


 俺はバニラアイスを齧りながら聞く。 クッキー生地が入っていて、サクッとした食感が心地よかった。


「うちはバイトでお金貯めつつ、遊ぶかなー。 今年も海とプール、お祭りは行きたいよね」


 そういや片桐さん、ファミレスでバイトしてるって言ってたな。


 俺も折角だし夏休みに短期のバイトでもしようかな?


 そうすればお金も手に入るし、手に入ることで灯を遊びに誘えるかもしれない。


「私はお姉ちゃんの紹介で短期のバイトを少しする予定。 後はななちんと同じ感じかな」


「あかりーん!! 今年もいっぱい遊ぼうねー!」


「ねー!!」


 2人はこの暑い中抱き合う。 その姿はなんだか微笑ましかったけど、絶対暑いだろという言葉が喉まで上がりかけた。


「どんなバイトする予定なんだ?」


「テーマパークのチケットカウンターや清掃の仕事!! 結構時給とかも良いみたいだし、無理ない程度に働くつもり」


 灯はスプーンでアイスが掬えたことに目を輝かせながら、アイスを食べ始めた。


「へぇ〜なんだか面白そうだな」


「あれはやらないのあかりん? ぬいぐるみの中の人」


「やらないよ。 ってか、夢を壊すようなこと言うのやめてよ!」


 子どもの頃は無邪気だったけど、高校生にでもなると、ぬいぐるみの中の人の大変さを想像することができる。


 暑い中着ぐるみを被る。


 そして、愛想を振り撒きながら知らない人と写真を撮る。


 ……うわぁ。 楽しいかもしれないけど、きつそう。


「高山はなんかしないの?」


「俺もなんか短期のバイトはしようと思ってるけど、なにしようか悩んでんだよね」


 そもそもバイトしたことないから、どんな短期バイトがあるか知らないんだよな。


「プールの監視員のバイトはどう? 夏にしか出来ないバイトだと思うけど」


 プールの監視員のバイトか……確かに良さそうだな。


「ちょっと気になるから、帰って色々調べてみるわ。 灯ありがとな」


「えへへっ。 どういたしまして」


 早速帰ったら、この近辺でプールの監視員のバイト募集しているところがないか探してみよ。


「あ"あ"あ"っ!?」


 俺がどれぐらい稼げるんだろう?と考えていると、近くから灯のダミ声が聞こえてくる。


 何事かと思って灯の方を見てみると、灯の大きな胸の上にアイスクリームが少し乗っていた。


 どうやら、スプーンで掬った時に勢いよく胸の上に乗ったようだ。


「もうっ! ベタベタして最悪なんだけど〜」


 灯は指でアイスクリームを掬い上げる。


 そして、そのまま勿体ないと言って、アイスクリームをペロッと舐めた。


 …………おおう。 なんだか見たらいけない物を見てしまったような気がする。


「ぐぬぬぬっ……!!」


 俺がそっと視線を外すと、灯の隣にいる片桐さんが恨めしそうに灯の胸を見ていた。


 俺は無意識の内に片桐さんの胸を見る。


 片桐さんの胸は存在感が確かにあったけど、灯に比べると少しインパクトが足りないように感じた。


「…………」


「ひぇ」


 グリンっと片桐さんが首を回して俺の方を見る。


 目は見開いていて、瞳孔が開いている様子はとても怖かった。


「?? どうしたのななちん?」


「いや、なんでもないよ。 な、高山ぁ……」


「ア、ハイ」


「?? 変な2人」


 灯は不思議そうな表情を浮かべていたけど、そんなに気にならなかったのかニコニコでまたアイスを食べ始める。


 俺は片桐さんからの視線を受けて、アイス以外の寒さも感じたのだった。

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