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第16話 ✳︎私の気持ち

 晴ちゃんが忙しない様子で帰っていく姿を、私と高山君は手を振って見送った。


 それにしても……晴ちゃんすっごく可愛い娘だったな。


 あんな可愛い娘が昔からの知り合いで、兄のように慕ってくれているなんて、高山君漫画の主人公みたいだ。


「ん? どうしたの永吉さん?」


「べっつにー。 ただ、あんな可愛い女の子の幼なじみがいて、高山君も隅に置けないなーって思っただけだよ」


「い、いや、あいつは確かに可愛いけど、ただの幼なじみだから! 可愛い妹分だから!!」


「ふ〜ん」


 高山君は手を振って慌てた様子で言う。


 でも、晴ちゃん。 私に対して警戒心持ってたと思うんだけどな。


 露骨に出てくることはあんまりなかったけど、私のことを見定めているような気がした。


 ま、私がモテないって話題が始まった頃には、その警戒心もほとんどなくなっていたんだけどね。


「と、とりあえずもう時間も遅くなってきてるから帰ろっか」


「うん」


 私たちは歩き始めて駅の方へと向かう。


 歩いていると人通りが多くなってきて、人工的な光で街が輝いていた。


「高山君ってどれくらい晴ちゃんと仲が良いの?」


「うーん……かなり仲は良いかな。 もう知り合って9年ぐらい経つからな」


「じゃあ、色々な晴ちゃんのこと知ってるんだ」


「まぁ、そりゃね」


 高山君の言葉を聞いて、私の中にあった小さなモヤモヤした気持ちが大きくなる。


 高山君、多分私のこと異性として好きだよね?


 晴ちゃんが来る直前、私に愛の告白をしようとしてくれていたんだよね?


 私は『残念美少女』とか、『猪突猛進アッカリーン』なんてへんなあだ名をつけられているけど、告白されたことはある。


 だから、あれは愛の告白をする寸前だったことは分かっていた。


 正直、私は高山君のことをどう思っているのかはよく分からない。


 高山君のことは好きだ。 


 面倒見がよくて、優しい雰囲気を纏っている。


 話していて楽しいし、私の話で高山君が笑ってくれていると、心がポカポカして嬉しい気持ちになる。


 でも、この気持ちは異性に対しての『好き』なのか、友達に対する『好き』なのかは正直分からなかった。


 今感じているモヤモヤはきっと、嫉妬などの負の感情だ。


 でも、この感情はなんなんだろうか?


 好きな人に仲が良い可愛い女の子の幼なじみがいたことに対する感情?


 それとも、友達に自分よりも仲の良い友達がいたことを知ってしまったことに対する感情?


 分からない。 分からない。


 でも、一歩前には出てみたいという気持ちになった。


「高山君。 高山君のこと、泉って呼んでいい?」


「……え?」


「私のことは永吉さんじゃなくて、灯って呼んで欲しいな」


 私がそう言うと高山君、いや、泉は驚いた表情を見せた。


 でも、それは少しの間だけで、泉は笑いながら私のお願いを聞いてくれたのだった。


「もちろんいいよ! じゃあ、これから俺は灯って呼ばせてもらうし、灯は俺のことを泉って呼んでね!!」


「うん!!」


 泉に灯と呼んでもらえると嬉しい気持ちになった。


 正直、今の私が泉に対して思っている感情は分からない。


 だから、これから知っていきたいと思った。


「あ、もうすぐ電車来るよ」


「急ごう急ごう」


 私たちは急いで駅へと向かい、電車に乗る。


 そして、泉が私の家の近くまで送ってくれて、そこで今日は解散をしたのだった。

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