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不良OYAJIの夜は更けて

「おい、こんなところで何やってんだよ」


カナブンが声をかける。

男は凄みを聞かせて睨み付ける。


「なんだと? あっ」


男はカナブンが声をかけた次の瞬間小さく驚いた。

今崎はカナブンの腕をつかんでいたのだが、どうも様子が変だ。

カナブンが男に話しかける。


「もうちょっとましなカッコできねーのかよ?」

「えーっと、来てたのか? 文治」


ばつが悪そうににやける男。どうやらカナブンの知り合いみたいだ。

男はサングラスを外して急ににこやかな顔つきになった。

カナブンと男の間に割り込もうとしていた今崎だったのだが、その場でとまどっている。

男は今崎の方をちらと見ると穏やかに話しかけた。


「んーっと、なんだ。お友達も一緒か」

「で、なにやってんの? 親父」


親父? ということはカナブンのお父さんか?

心配になって今崎の後ろから付いて来たみんながびっくりしている。

翔一郎が男に手を振ってにこりと笑う。


「こんばんはー。文蔵おじさん」

「ああ、ショウちゃんも来てたのか。こんばんはー」


スキンヘッドの男が満面の笑顔を浮かべる。やくざ風の男は、実はカナブンの父親だったのである。

カナブンと翔一郎は幼馴染で家が近所ということもあり、小さいころは翔一郎はカナブンの家によく遊びに行っていた。

文蔵は県警に勤務しており、カナブンが小学生の頃はPTAの会長も務めていた。今日はPTAから頼まれて祭りの警備に来ていたのだ。

カナブンが横目でにらむようにして話しかける。


「ところでさー。なんだよ? 文蔵(ぶんぞう)親分ってのは」

「あー、いやー。テキ屋の連中が勝手にそう呼んでいるだけだ。県警の仕事で知り合って面倒見てるんだよ」

「それにその格好。みんな怖がってんだろ。警備なら警備で、もうちょっとマシな服とかあんだろ?」

「だってこれしか持ってないんだよ」


文蔵はカナブンに頭が上がらないようだ。


「そんな訳ないだろ、おふくろには何て言ってきたの?」

「あー、いやー。かーちゃんには内緒で出てきた」

「おやじー。警備にかこつけて、そんな格好で夜祭をうろつきたかっただけだろ? また夢の中でおふくろに怒られるぞ」

「あー、いやー。そりゃ困る」

「あんまり夜更かしすんなよ。じゃあな」


カナブンはふんと言いながら立ち去った。

後ろから文蔵が叫ぶ。


「文治ー! かーちゃんには内緒にしといてくれよー」


カナブンの母親はカナブンが小学5年生の時に病気で亡くなっていた。

いつも家を出るときには、位牌に「どこどこに行ってくるね」と挨拶してから出るようにしている。

金谷家では母親はまだ、文蔵と文治の心の中に生きているのだ。


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