56 継承の儀②
「なんじゃ、やっときおったか」
「あら、かわいらしい方ね」
「……」
(わーーお)
華やかな道を進んでいくと、一本の樹があった。
大樹、といっても差し支えはないが、精霊が宿るというには……なんというか、ふつう。
幹の太さは……うーん、片手を伸ばしたくらい。
高さはどれくらいだろう、少なくても四階建ての建物くらいは余裕である。
けど、もっとこう……ゲームとかで言ったらいわゆる世界樹と言われるものの大きさは、相当大きい。
それほどはない、深い森に行けばありそうな……ふつうに大きい樹って感じ。
永遠の樹が大事ってのは、本体そのものじゃなくて、ラヴァース様が大事ってことなんだろうな。
……なんだけど、その前にグランローズ様の造り出したテーブルで優雅にお茶をする面々はふつうじゃない。
炎の大魔女、メイラフラン様。
燃えるような赤い髪が見事な、艶やかな女性。
彼女の座る隣に立つのは、ヴィルクス様。
これまた金髪の美形。
お似合いだな、うん。
風の大魔女、エルドナ様。
魔力の暴走前に先代のハルバーティ様がお力を与え、大魔女を継承した珍しい経歴の方。
そのため黒と緑の混在した髪が特徴的で、わたしより年下……だったよね?
お若いかわいらしさと反して、口調はなんか一番ご年配な気がする。
その横には、黒い髪が素敵な美形アトラ様。
そしてわたしと一番関係が深い、けど一切が謎の水の大魔女──シークイン様。
濃い蒼色の髪が、短く切り揃えられ白い肌に良く映えるうつくしい人。
なんだろう、金の首飾りも相まって……クレオパトラ!?
いや、会ったことないから分からないけど、イメージそんな感じ。
ただただそこにいるだけで圧倒的な存在感。
女王様。威厳のある方。
お傍にいるのはハリル様。
比較的若い人が多いこの場所で、たしか……三十六歳とかそのへんだったかな?
シークイン様と一回り違うらしい。
銀の長い髪がこれまた見事な、うつくしい人。
主とおなじく、物静かだけどたしかな存在感を放つ。
……美形しかおらんが?
地味魔女のわたし、大ピンチ。
「お待たせしました、みな揃ったわね?」
「グランローズの菓子と茶はうまいからのぉ、大して待っとらん」
「エルドナ、あまり運動しないんだから食べ過ぎは良くないわよ」
「だれが引きこもりじゃ!」
「あら、そんなこと言ったかしら?」
「な、なんじゃとぉメイラァ!」
「……」
──まさに、カオス。
シークイン様と魔女の騎士たちの慣れてる感が、すごい。
「ほらほら、ハニティが困るでしょう」
「ぬ、ぬぅ……」
「失礼したわね、続けてちょうだい」
「ハニティ。貴女がラヴァースに認められ、それを私たちが証人として宣誓すれば儀式は終了よ」
「は、はい……」
具体的に認めていただくには、どうするんだ……?
「……定期試験での成果、見事でした。ラヴァースもきちんと見ておりましたし、貴女が大魔女となってやりたいこと。それを示せば、大丈夫ですよ」
「分かりましたっ」
ふむ、……魔力を使って育てた植物と、相手のことを想ってつくる料理で魔法使いのふつうを変えたい。
そう宣言すればいいのかな?
ダオたちも他の魔女の騎士に従って、少し遠目から見守ってくれている。
き、緊張してきたあああ。
「で、では……」
ラヴァース様、つまり永遠の樹。
精霊に自分のやりたいことを伝え、そして認めてもらうこと。
それが、……この儀式の目的。
(大丈夫、美形が多いだけ……いつも通り……)
見守る皆さんが総じて美形なだけで、他は変わらない。
ずっとそのために、修行してきたのだから。
前世の記憶が甦って、そのための手段が明確になっただけ──
「待って!!!!」




