表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/61

53 すべてをやさしく包む、ポトフ先生②

 意図した訳ではないのだけれど、最近汁もの、多くない?


「まぁ、余すところなく。ってねぇ~」

「?」

「こっちの話~」


 さあ、作りましょう。

 呪い特効のポトフ先生。


 ……いや、ほんと。なんでわたしの料理だけって感じなんですけど。

 まぁダオの呪いの印も、最近は色素うすすぎて……あれだ。

 朱肉で遊んで体に押してしまったあと、風呂に入っても落ちない~って言うレベルでうすい。

 ……いや、あれけっこう濃いか?


「……いかん、脳内脱線した」

「何を作るか、決めたか?」

「うん、ポトフにしようかなって」

「なるほど。野菜がたくさん摂れるな」

「……ほんとうに、呪いに効くのか……?」


 半信半疑のレト。

 そう言われると、テオレムだと料理をつかって呪いを施す……とかあるのかな?

 真逆の使い方だけど。

 不安そうなのも分かる。


「うーん、正直わたしも理屈は知らないんだけど」

「ダオレン、ほんとうに大丈夫なんだろうな……?」

「心配するな。もしハニティのことが信じられないなら、俺を信じろ」

「あら」


 あらあらあら? まぁまぁまぁ。

 いいお兄さんですこと!

 ……誰にとは言わない、今日もありがとう。

 尊い。


「…………やっぱりバカ女だ」

「こーら」

「──っと、作りましょうかねぇ」


 今回はウインナー……ソーセージ?

 まぁ、ソーセージの一種だし、長さ的にはソーセージよね、うん。

 それと野菜とを一緒に煮るから、特に出汁とらなくてもいけるっちゃいける。

 前世だったらコンソメキューブとか入れて、もっと美味しく出来るんだろうなぁ。

 いや、うちの野菜もリースの肉屋さんもイイもの提供しているし、美味しくできるはず……!


 という訳で、けっこう簡単だ。


 切って、煮込む。

 それだけ。

 手抜き? ノンノン、効率的と言ってほしい。


「……また脳内脱線した……」

「俺は何をすればいい?」

「!? お、おまえも料理を、するのか……?」

「なーに言ってんの。ダオはもう、料理魔法のプロフェッショナルよ!」

「ほう。あの『みきさー』とやらは料理魔法と言うのか?」

「い、いやごめん。勝手に作りました」

「し、信じられん……あのダオレンが……」


 テオレムでのダオは、いったいどうだったんだろうなぁ。

 近衛騎士……王の護衛でもあり、戦では前線にもでる。


 普通は、王の側を離れることはなさそうなもんだけどねぇ。

 やっぱり、すごく強かったんだろうな。


「とりあえず全部一口大に切るから、……じゃぁダオにはじゃがいもとにんじん任せちゃおうかな!」

「おう」

「終わったら教えてね~」


 決して固い野菜を押し付けたわけじゃありませんから、ええ。


 わたしはといえば、はくさい、ソーセージ、セロリ担当だ。


(そういえば、このソーセージは……豚なんだろうか?)


 なんのやつか聞いてこなかったけど、ボアほど赤くはないと思う。 

 ソーセージと言えばクローブが臭み消しで入ってることが多いけど、強い鎮痛効果と抗菌作用があって、歯痛や歯肉炎を抑えてくれる。

 抗酸化作用にも優れていい子なんだけど、ハーブ単体で使用すると効果が強いので妊娠中の方とかには控えるようにって書いてたな。


 ソーセージに刻んで混ぜる程度は摂りすぎなければオーケーかな。


 ……まぁ、そんな心配するようなことないんですけどね!?


「いかん、セルフツッコミが捗る……」

「?」


 先にソーセージを一口大に切る。

 うん、この前みたいに赤くないからきっと豚さんでしょうな。


 ナイフを一旦洗って、はくさい、セロリも洗って土を落とす。

 同様に一口大に切れば、はい準備オーケー。

 やはり鍋と並んで自炊の救世主、ありがたや。


「うわ。鍋で思ったけど、キノコ入れたらもっと良かったかな……」


 なんかキノコ入れるだけで鍋って美味しくなるよね。わたしだけ?


 ちらっとダオの方を見れば、ローズさんに蔓を巻かれて大人しく座っているレトくんが、ダオの作業をじっと見守っている。

 微笑ましい。


(ああいう手合いは、実は兄大好き説あるからな)


 もう、すべてに感謝したい。


「──ハニティ、出来たぞ」

「お、ありがとう」


 さーて、やりますか。


 コンソメも入れてないし、まずはソーセージを焼いて……肉の油っていうの?

 あれを出しましょうかね。


「オリーブ油に~ソーセージ入れて~」


 火であたためた鍋にオリーブ油を入れれば、トロッとした状態からすぐにサラッとした油に変わる。

 いいね~。


 そこにソーセージを入れて、表面がいい感じになるまで焼く。

 あとで煮るからね、そこまで火入れなくていいよね。

 鼻の奥に届く香りは、すでに食欲をそそる。

 このまま食べたい……いや、我慢……!


 いい感じになったから、水を加えてローリエ参上。

 清涼感と甘い香りをもつこの子は、臭み消しに役立ってくれる。

 それだけじゃぁ、ありません。


 胃腸の調子を整えたり、血行を良くしてデトックス効果も。

 そうだね、呪いに良さそうだね。

 あんまり煮過ぎるとえぐみが出るから、途中で取ります。


 沸騰したので先ににんじんとじゃがいもを入れて煮込む。

 少し経って、はくさいとセロリを追加して煮込めば──。


「あとは味をととのえるだけ~」


 ポトフ先生、ほぼほぼ完成──!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ