５１ 再会【ダオ視点】
「…………」
「ハーブティー、嫌いか？」
「…………」
「レトは、相変わらずだな」
「ダオレン、あの女は何者だ？」
我が弟ながら、感情の起伏に乏しいのはいつものこと。
だが、珍しく他人に興味を抱いたらしい。
……テオレムにいた頃の俺達からすれば、奇跡的なことだ。
「ハニティが、気になるか？」
「ばっ──、そんなんじゃない！ このローズとやらもそうだが、一介の魔法使いではあるまい」
いつもハニティを手伝う薔薇の精霊は、不思議そうにレトを見る。
「つい先日決まったことだが、次の地の大魔女……恵土の魔女だ」
「!? 次代の大魔女か、……どうりで」
「得意の暗器が魔法で防がれて、悔しいのか？」
「……ちっ。今までこんなことが無かっただけだ」
「お前の風魔法も大したものだが、ハニティは地属性特化の魔女らしい。……本人は謙遜しているが、魔法も相当な腕前だ」
「それくらい、……見ればわかる」
「なんだ、素直だな？」
「……結界に入ったあたりから、おかしいとは思った。この広大な敷地に……魔力をちりばめるなど」
「なるほど、感知能力も健在だな」
「ふんっ」
テオレムに居た頃。
王の護衛や戦で前線にでる俺と違い、彼は主に裏の仕事を引き受けていた。
単独での行動が多く、風のように身軽に。
魔力を感知して、相手の力量を推し量る。
……それが良いことかはともかく、最高の暗殺者だった。
「それで？ 王は俺が生きているのが我慢ならないのか？」
「あれはもう王とは呼べまい。……ほぼ錯乱状態だな」
「ふむ……深刻だな」
「ふん、魔女を侍らせるからこうなる。自業自得だ」
「かろうじて呪術や闇の魔法を継承することで人々を支配してはきたが……、そこにハニティが現れた」
「……偶然にしては、できすぎだな」
「お前も、呪いの心配がなければいつでも抜けれるだろう」
「……どうでもいいことだ」
「俺は、少し思い知ったぞ」
「なにをだ？」
「魔法には、様々な使い方があるのだと。……世界は広いんだと、な」
「ほう？ 刃となる以外に、使い道があるとでも？」
「ああ。例えば……、そうだな。ハニティはなにも防衛のためだけに土に魔力を込めている訳ではない。その魔力で、植物の成長を助けている」
「成長……？」
「地の大魔女は、慈愛と成長を司る存在だそうだ」
「……慈愛……？」
混乱するのも無理はない。
魔法は他人を傷つけるために。
誰かを、支配するために。
そう教え込まれてきた俺達には、理解が追いつかないものだ。
「くだらない……」
「お前も、ハニティの料理を食べてみれば分かるぞ」
「……ふん」
