50 デレのために
「あ、レトくん食べれない物ある~?」
「…………ダオレン。なんだ、このバカ女は」
「こら、ハニティだ」
「ちっ。…………さっさと殺せ」
「はああぁ!? そんなことする訳ないでしょ!」
「お前、のんきだな」
「そうです、わたしがのんびり魔女です」
「…………」
あ、これは馬鹿にされているな。
ローズさん、もうちょいキツく縛ってくれていいのよ。
「ふん。仮に僕を助けたところで、遅い。また別の者が現れるだけだ」
「えー? 王様、そんなにダオが憎い……の?」
「いや……、あれはどちらかと言うと。恐れているのだろうな」
「? なるほど……?」
あれか。ダオがミスター出来過ぎだから、王の座を奪われるとか被害妄想が激しいとか?
「だが、俺の知る限りレトほどの使い手はそう居ない。……気負うこともないさ」
「…………」
「あ、照れてる?」
「っ、誰がだ!」
「はいはい、可愛いね~。ところで、食べれない物は?」
「っくそ。…………な、い」
「オッケー」
「何を作るんだ?」
「んー、そうねぇ」
正直、めちゃめちゃ迷ってる。
初めてダオに作った時は、かなり弱ってるなぁと思っておかゆにしたけど。
万全とまではいかなくても、レトくんかなり体力ありそうだし。
そうだなぁ。……今回は、『五性』に注目して食材を選ぶか。
食材や生薬には、体を温めたり、逆に冷やしたり……性質? っていうのかな。
食性っていうのがあって。
『熱』『温』『平』『涼』『寒』の五性に分けられる。
ざっくり言えば、あたたまるか、冷やすか、ふつうか。
レトくんには今回、特に呪いにだけアプローチをかけたい。
と、言う訳で、『平』だ。
体を温めることも、冷やすこともない。どんな体質の人が、どの季節に食べても偏った影響がない。
ほかの食材とも組み合わせやすく、安全なもの。
「きゃべつ、とうもろこし、はくさい、……うーん。やまいも? いも系だとじゃがいも、さつまいも……うーん迷う」
「候補が色々あるんだな」
「そっ。まだメニュー考えてるからさ、レトくんと積もる話あるだろうし、キッチンでお話してたら? わたしもあとで食材採ってから行くよ」
「……そう、させてもらうか」
「貴様と話すことなど、なにもないが」
「まぁまぁ、兄弟? なんだから、……ね!」
「……この女、ムカツクな」
「こら、レト」
「ローズさん、やっちゃって~」
「っ!?」
「ハニティ、容赦ないな」
教育ってやつですよ、教育。