48 来訪者
「あ、ダ──」
「俺から、離れるな」
な、なんですとおおおおおお!?
(ちょ、ま、え)
美形がそんなこと言ったら、ドキドキするに決まってるでしょうが!
……と、おふざけはここまでにして。
いや、ふざけてはないんだけど。
「……だれ?」
「分からない。だが、この感じは──」
ダオが落ちていた時のように、はっきり魔力を感じる訳ではない。
けど、土地に満ちたわたしの魔力は違和感を告げる。
ナニかが居る、と。
「!」
手に持ったカゴが勢いよくこぼれ落ちる。
すまん、あとで拾う。
今は、大地に手を付き土を隆起させ、刃から身を守る方が優先だ!
「っ」
っと、今度は逆側から。
たぶん、周りの木々の合間から気配を消して攻撃してきている。
ダオはとっさに剣で飛んできた鋭利なものを打ち払った。
「な、なんなのよ!」
魔物との戦闘に慣れていてよかったのかは分からないけど、今は経験が非常に役立っている。
……とはいえ、魔物以外に命を狙われるようなこと、したか!?
あれか、次の大魔女候補を始末しろ! って誰か企てたか!?
「──なるほど」
ダオが打ち払った刃物を見て、妙に納得している。
「俺に用があるんだろう、出て来い」
「……?」
あ、そっち?
ダオに用事って……、まさかテオレムの……?
「……」
そうダオが挑発すれば、木々の合間から一人の男の子が出てきた。
真っ黒な髪、真っ黒な衣装。
闇に溶け込むような見た目はまるで。
イメージはそう、……暗殺者?
「君を寄越すとは、よほど王は俺が憎いと見える」
「知らない」
「どの道、どちらかは死ぬ。……そういうことだろう?」
「ど、どういうこと!?」
「彼にも呪いが掛けられている、ということさ」
な、……なるほどね!?
「──どうでもいい。さっさと……死ね!」
「は、はやっ」
風の魔法、だろうか?
小柄な体躯を生かして、さらに加速を見せる。
なるほど、影の仕事を担うには逸材と言う訳だ。
だが……甘い! 甘いねぇ!
ここは、わたしの庭なのだよ!
「とっまれえええ!」
土魔法であれば彼のスピードには及ばないかもしれない。
ので、彼が通るであろう道筋。
ダオに至るまでの間にある植物すべてを、成長させる。
もう、なりふり構わず、全部。
「なっ!?」
「ほーら、大人しくしなさい」
植物たちは、伸ばせる葉、茎、根、全てを総動員して少年を止めてくれた。
……ち、違うからね!? ショタコンじゃないし、触手プレイの趣味はないですからね!?
ちょっと、ちょーっとだけ……拝んだけど。
「……レト」
「っ、ダオ、レン」
レトくん、というのか。
キィルとは違って、なんだろう。
ツンツンしたところがまた可愛い……、ショタコンではないです。
というか命狙われていて冷静なのが、我ながらすごい。
「見ろ」
「……?」
「俺達が知る世界は、ほんの一部だ」
「──!? 呪い、が……?」
「彼女はハニティ、地の魔女だ。彼女の、魔力は……。俺達が知るものとは違い……、あたたかい」
「……魔力などっ、この世に不要なものだ!」
「え、ええと」
彼はテオレムの暗殺者? で、ダオに止めを刺しに来て。
仮に失敗したら、レトくんが呪いで死ぬように仕向けられた……でオーケー?
でも呪いは解けないにしても、わたしの料理で軽減できるので……。
「えーっと、レトくん。だっけ? 争う必要、ないんじゃない?」
「なっなにを」
「もし呪いが掛かってるなら、死んじゃうことはないと思う、……多分」
「!? 貴様、治癒魔法が……?」
「いや、そんな大したものじゃないんだけど……。あー、というかダオ。状況説明して?」
「ああ、すまない。恐らくだが……、呪術をつかった魔女。王の愛人が俺がまだ生きていることを王に進言したんだろう。奴らの計算では生きていない日数だろうからな。それで、俺が留まっている地に彼を寄越した訳だ」
なるほど……。
呪術を掛けた人は、追跡というか。呪いの対象の場所が分かるのかな?
「レトくんは、その……。テオレムでいうところの、王直属の魔法使い?」
「そうだな。それと……、俺の弟だ」
「お、おとうとさん!?」