47 ミスター何それ、気遣いの男
「ハニ──」
「あああああのさ、外、作業、してるから!」
定期試験が終わって次の日。
晴れて本当のプレ大魔女になったわたしのやることは、特に変わらない。
試験……あの後の帰路といったらもう……地獄だった。
(あんな、告白みたいなこと言っといて、ふつうなんだもんなぁ……!?)
美形で天然属性のダオは、「そんなこと言ったか?」レベルで普通だった。
こ、こちとらどんな顔して話せばいいかも分からんというのに!
まぁ、逆に言えばダオは本当にわたしの魔法の使い方とか、目指す大魔女像とか、料理とか。
それらに感銘を受けたんだと思う。
ありがたい話ではありますが……なぁ。
魔女の騎士については、ほんと。
楽しそうに料理で魔法使っといて、なんでそんなこと言えるのかって……聞いちゃいそうで怖いよ。
という訳で、わたし。
昨日からずっとダオと正面きって話すのを避けております。ええ。
逃げではありません、決して。
「……」
ダオも、なにか言いたそうにはしているけどそれ以上は追及しない。
空気が読める、彼らしい。
(──というか、結局リチアナはダオのこと本気じゃなかったのか?)
プライドを傷つけられた、って意味でダオのことを狙っていたのか。それともわたしへの嫌がらせなのか。
それは分からないけど、最後は妙に静かだったなぁ。
うーん。
ダオはダオで、結局わたしのところに帰るって言うし。
グランローズ様はシークイン様じゃあるまいし、意味深なこと言うし。
うーん。
「──考えるより、手足動かそ」
分からないことが多いなら、まずはやれることをってね。
今日も今日とて、庭で作業。
今は、ソレルっていう緑のハーブを仕込中。
別名スイバ、スカンポ。
独特な酸味があって若葉を摘み取って、ティーにもサラダにも魚料理にも。
効能的には解熱や肝機能の改善に期待がもてるので、これまた有能なハーブ。
前世ではオムレツに入れるといい、と本に書いてあった気がする。
成長が早くて、種からもすぐ育つし、なにより根が! 根が張る子。
……お値段じゃないよ?
なので水はけが良いちょい日陰の場所に、ちょっとだけ種を植えた。
来年からはこぼれ種から勝手に増えると思う。
「……日陰、か」
こういう、影もさ。
他の植物が、別の植物の手助けをして、成り立ってるんだな。
「転生魔女、気付かされてばかり」
灯台下暗し、じゃないけど。
前世の方が圧倒的に技術が進んでいても、こういった昔から変わらないこと? っていうのは見逃しがちで。
むしろ、こっちでも学ぶことや気付かされることが多くある。
いつか聞いた、知らないってことを知る。
まさに今、そんな状態だ。
「……ん?」
とか考えていたら、庭の植物たちの魔力がなにかを訴えている気がする。
「ど、どうした……?」
慌てているような、焦っているような。
そんな気がする。
たしかに、言われてみれば……、敷地内になんか違和感を感じる。
結界があるし、魔物ではない。
……来訪者?
「──ハニティ!」




