46 視えたもの
ゼノって人も、エボニーも、周りにいた人も。
グランローズ様がお開きを宣言して、徐々に帰路につき。
今は、わたしとダオ、そしてグランローズ様のみが会場に残った。
「……テオレムの、方でしたか」
「はい。シークイン殿の託宣に従い、『永遠の樹』を目指していたところ力尽き、ハニティに介抱して頂きました」
「……そう。彼の国には、まだ呪術が残っているのですね」
「ええ。……ですが、ハニティの料理を食べるごとに、不思議と弱まっているんです。……何か、ご存知なのでは?」
「どうして、そう思うの?」
「永遠の樹とは、つまり……貴女か、地の精霊か。どちらかを指すものかと」
「そうかもしれないわね。……でも、そうじゃないかもしれないわ」
(大魔女の皆さんは、本当に言葉を選んで話されるなぁ)
それはつまり、はっきりと言ってはいけない……なにか秘密を抱えているということだ。
「あ。そう言えば、イフェイオン様から、わたしにも永遠の樹が視えたって聞きました」
「あらあら……。本当に、もうすぐなのね」
「「?」」
「大丈夫。イフェイオンがそう言うのなら、他の大魔女にも伝達されていると思うわ」
「はぁ……」
おっしゃることが、まっったく分からん。
「貴女は、私達にない知識がある。……そうでしょう?」
「! 多少……ですけれど」
「でもそれを、違うことに使うことも出来た。……例えばそう、この場で私を土に還すことも」
「!?」
あれか? 試験の料理に毒を混ぜたり……的なことを言っているのかな。
「それをせず、……リチアナすら思い遣る使い方をしましたね? 貴女が貴女であったから。……だから、地の大魔女に選んだのですよ」
「わたしが、わたしだから……」
ハニティとしての自分も、前世としての自分も。
どちらが欠けても、ダメだった。
そういう、こと?
「永遠の樹とは、命を繋ぐ象徴。……まるで、貴女が言ってくれたように、他の生命への感謝のようですね。……でも、シークインたち水の魔女は、生と死。どちらも司る魔女なの。……だから、貴女でないとだめだったようです」
「治癒魔法は……、呪いには効かないと……?」
「さぁ、どうでしょう」
「シークイン殿が視たのは、……まさか」
「?」
「いや、……ともかく。来週に備えて、……帰ろうか?」
「ハニティ。──待っています」
「は、はい」
何だか釈然としないけど、たぶん大魔女の魔力の譲渡先を決める継承の儀だったら、他の大魔女も揃う……はず!
来週、だ。
今はそれに備えて、しっかり休もう。
……今日限りの関係だと思っていたダオが、「帰ろう」と言ってくれるのがこんなに嬉しいとは。
気付かない方が、良かったのだろうか。




