44 魔女の騎士②
ダ…………お?
「ええっと……?」
「失礼。ゼノ、と申します。ハニティ殿」
で、でたー!
リチアナの幼馴染? らしい人物。
赤い短髪からも、炎を操る魔法使いということは見て取れる。
次に得意なのは地の魔法だろうな、と思わせる意志の強い瞳もどこかリチアナそっくりだ。
「紹介したいというのは、ゼノのことですか?」
「いや、ぜんぜん!? むしろ、初めましてでして……」
なんで今割り込むし!
グランローズ様にお話があるにしても、タイミング! 考えてよね。
「お話し中申し訳ございません。少し、お二人にお話がありまして」
「え? わたしにも?」
てっきり、グランローズ様にだけかと思ったけど……。なんだ。
あまり良い予感がしないのは、気のせいか?
「……実は私は、幼き頃から魔女の騎士になるのが夢でして」
(げ)
エボニーが言ってたのはこのことか。
ということは、つまり……。
「そうだったの? ……なら」
「はい。この度、ハニティ殿が次期地の大魔女になられるということで……。差し支えなければ、私が彼女の騎士として自薦させて頂きたく」
「まぁ……」
や、やめろおおおお。
いや、誰でもいいとは思ってたよ!? グランローズ様が見付けてくれるとも。
それに、まだ二年先だし……自分で見付けれるかもしれない。
なにもこんなに早く! というか。
……、ダオの。
ダオの顔が、頭から離れないんですけどおお!
何だこれえええ!
「り、理由を聞いてもいいですか!?」
リチアナの幼馴染ってことは、この集落出身で……そんなに孤独な状況で育ったとは考えられない。
仮に立候補するなら、それ相応の理由があるでしょうに。
「もちろん。私はリースに生まれた魔法使いですが、実は……魔法があまり得意ではありません。なので、剣士として魔物と対峙してきました。その腕を生かせるのは、魔女の騎士しかないと思っております」
「な、なるほど……?」
魔法使いに生まれたけど、魔法が得意ではないパターンもあるんだ?
……あれか、魔力はあるけど上手く属性に変換できない的な?
まぁ地の魔女が多い土地だから、それのせいもあるのかな?
「どうでしょう? ハニティ殿」
「え゛」
「そうねぇ。まだ早い気がしないでもないけれど……。早くに信頼関係を築くのも悪くはないと思うわ」
「ぐ、グランローズ様まで……」
もしかして、グランローズ様から紹介してもらえるという線は……ない感じ?
だ、だったら──ダオがいいよ! そりゃ!
安心、安全。強いし、誠実だし!
でも、他人の命を、魔力を……人生を。預かるなんて。そんなの──。
「待ってくれ」
「「!」」
「ダ、ダオ……!」
「……見学席にいた方か。貴方は?」
「ダオ。ダオレン、だ。今はハニティの元で世話になっている」
「ハニティ、こちらの方が?」
「え? あ、はい。そうです」
本来紹介したかった人なんです……けど、このタイミングではしたくなかったです。はい。
「ゼノ殿……だったか? 申し訳ないが、ハニティの騎士は諦めて頂きたい」
「なっ」
「ええぇ!?」
「……というと?」
こ、この流れは……。まさか!
「俺が、……いえ。──私が、彼女の騎士となり……彼女を守ります」




