35 とぅるっとぅる、ネトルスープ②
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「あ、しまった」
鳥肉はリースに行ったついでに買ってきたから良いものの。
ポタージュっぽくするやつに、一緒に煮込むのもなぁ。
「今回は野菜だけでいいか」
セロリとか入れても美味しそうだなぁ。
……アレンジ妄想は無限大だ。
毎度おなじみ、トップバッター、一番打者。
何となく先に炒めるイメージ、みじん切りにした玉ねぎをオリーブ油で炒める。
「ダオー、そっちはどう?」
「良い感じ……だと思う!」
なぜかドヤ顔のダオ。
ドライネトルを、魔法で出した水で戻しておいてもらった。
ドライのまま先に魔法ミキサーでパウダーにしてもらっても良かったけど。
どうせあとでまた全体をなめらかにするから、今回はそのままだ。
余すところなく、戻し汁も使いますよ!
「じゃがいもはー?」
「ふっ」
またもしたり顔。
皮をむいて、さいの目に切ってもらっていたがどうやら上手くできた模様。
よ、良かったね……!
騎士なのに剣の腕より包丁さばきの方が上がってるかも。
いや、誰にとは言わないが申し訳ない。
「もらうね」
「入れていいのか?」
「いいよー」
玉ねぎのところへ投入。
「ちょっと炒めたら水必要だから……、戻し汁も入れるし……ちょっとだけ水用意しててくれる?」
「よし」
「あ、ネトルも」
炒めるのはほどほどに、しっかり熱を通すのは煮る時だ。
「水と戻し汁と、ネトル。一緒に入れちゃって!」
お願いすれば、ダオはネトルと戻し汁を加えたあと、真剣に掌から魔法で水をだした。
(魔法……ねぇ)
いやはや、便利。
それに、なんというか。自分の個性ともとれる。
やっぱりわたしには……。
魔女の騎士、選ぶ勇気はないなぁ。
(ダオも、魔法使えなくなったら困るだろうし)
……いや?
べ、別にダオが騎士だったら良いとかそういうんじゃなくて。
他人の個性とか力とかを預かるのがどうもね……。
抗魔力……、魔力が少ない魔物だったら素直な身体能力だけの勝負になるし。
なにより、騎士の命も預かる訳だからねぇ。
そんな簡単に、契約者って見付かるもんかねぇ。
「──ハニティ?」
「…………へ?」
「? 煮えたぞ」
「あ、うん。ごめん、ありがとう」
危ない危ない。思考を飛ばしてしまった。
「じゃぁダオさん、いつものお願いします!」
「うむ」
満更でもない様子で、かまどの火を消して魔法ミキサーに取り掛かる。
この場合はフードプロセッサー?
ダオもこういう魔法の使い方、新鮮だって言ってたけど。
自己肯定感が高まるみたいだし、魔法はずっと使いたいよねぇ。
(実はグランローズ様がもう手配してたりして)
考えても仕方ない。
今はただ、とぅるっとぅるになるはずのネトルくんを待つばかり。
「──出来たぞ!」
またもやドヤ顔のダオは、なんだか楽しそうだ。
「うん、いいね! あとは……塩で味をととのえて~」
玉ねぎとじゃがいもの白と、ネトルの緑が合わさって……うーん。
若干、灰色……?
お世辞にも「綺麗なミドリ!」とは言えないけど。
でもなんとなく体に染みわたりそうなスープ。
「ネトルスープ、完成~!」
器に盛り付けて、食べ物への感謝も忘れずに。
いざ実食!
「「いただきます!」」
◇
「うん、あっさり!」
ふわトゲ衣装の割には意外とクセがないネトル選手。
「やっぱり、鳥肉的なコクが欲しかったかな」
「だが、シンプルな分いくらでも食べれるな」
「それは言えてる」
玉ねぎの存在感と、じゃがいものなめらかな口当たりが良い感じに互いを支え合う。
そこに颯爽と「僕も混ぜて?」とやってくるネトル。
うん、もっと主張しそうだけど……なんだろう。
香りも味も、草? いや、言い方ひどいな。
……野草? 一緒か。
本当に、クセがない。誰とでも友達になれるタイプのハーブだ。きっと。
……ふわトゲさえなければ。
「本当は誰にでも優しいのに、ついツンケンしちゃうタイプなのかな……」
「ん?」
「あ、こっちの話」
おまけにかゆみまでプレゼント。
きっと、素直じゃないんだな。ネトル選手。