30 (一方的に)ライバル魔女、現る
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「あーら、ハニティ! 相変わらず地味じゃない、ほんとに魔女?」
「イエーイ地味サイコー。地味魔女でけっこうですよ、リチアナ」
自宅から一番近い魔法使いの集落、リース。
グランローズ様が主に拠点とする『永遠の樹』に近い集落なので、地属性が得意な魔法使いが多め。
地の大魔女候補は、エボニー含め十人くらいなんだけど……。
みんなわたしに対して友好的、というか。
別に敵対する訳でもなく、大魔女がどうのってよりは一人前になるために修行してるって感じ。
でも……一人だけ、厄介すぎる魔女がいる。
地味っていうか、なんていうか……。
たぶん、胸をバカにしたいんだと思う……!
「まさか……その程度で恵土の魔女を名乗ろうとしているの?」
「うるさいなー」
胸元をバカにしたように見ながら言う。
この人、確かにスタイルは抜群なのよね。
わたしの胸は……どのくらいだろ。
Cくらい? ふつうにある方だとは思う。
けど、成長とか豊かさを象徴する魔女だから、まぁ……たしかに巨乳の人が多い気はしてる。
エボニーも可愛らしいのに胸が大きい。ある意味凶器。
で、こげ茶色の長い髪をしっかり巻いてる魔女、リチアナはその考えが行き過ぎだ。
この子も……Fカップ? くらいあるのかな? きょぬー。
目元も気の強さが良く出ていて、赤い瞳からも勇猛さがうかがえる。
別に、魔女同士で気の強さ出さなくても……。
まぁ魅惑的なのは魔女っぽくて、良いんでない?
それはそれ、これはこれ。
「わたくしがこれほど忠告してあげているのに……まだ、恵土の魔女になろうと?」
「別に、見た目がすべてではないでしょ」
たぶん大魔女の座を狙ってるから、突っかかってくるのは分かるけど……。
なぞにいつも偉そうなんだよなぁ。
「それはその通りですわ。ですが、見た目から分かることもありますわよ」
「例えば?」
「知能の低さ?」
は、はらたつー!
リチアナだけには言われたくないわ!
よかった、ダオを鍛冶屋に置いてきて。
わたしの魔力を感知してるのか、いっつもエボニーの所に行く途中で遭遇する。
「成長とは、物質的な話もそうですし、精神的な成熟も指すんですのよ」
「じゃぁ、リチアナは大魔女になれないじゃん」
「な、なんですってーーーー!?」
あ、無意識で応戦してしまった。
それにしても……、精神的な成熟、か。
そういう捉え方もあるのか。
「まったく……なんてことを。植物同様、見た目に現れる方が先でしょう」
「そういうもんなの?」
「それはそうでしょう。使命もそうですが、魔力のない者から同胞を守るためには見た目も重要です」
「ああ、そういう話」
「なんです、馬鹿にしたような目で」
見た目でふつうの人を骨抜きに! って話か。
いや、てっきり女子のマウント的な話かと……!
一応、理にかなった考え方で言ってたんだね! すまん。
「あのさー、その『成熟した精神』をもって、お互い理解し合う、歩み寄るって考え方はダメなの?」
「? なにをおかしな。そんな前例、ありませんわ」
「いや、過去は置いといて……」
「あなたまさか……! 先人の努力を無駄にしようとでも!?」
「いやいや、話聞いて……」
「我々はよくても、あちらがそうとは限らないでしょう!」
転生の記憶がもどってからなんとなく感じていた違和感が、少し分かった気がする。
こっちの人達は、魔法使いも魔力がない人も関係なく、現状維持ばかり。
打開策とか、自分で考えてより良くする、っていう部分が抜けている気がする。
……そうせざるを得なかった世界なのかもだけど。
まぁ、あっちだとテレビとかネットとかで色んな情報知れたもんね。
でも今は魔法使いの数が減りすぎて、今の世の人達がわたし達を怖がっている訳ではなく。
ずっとこうだったから、じゃぁそうかも。って感じ。
自分たちの目でわたし達を見た感情ではない。
そのことに、前世の記憶があるわたしからしたら、どうしても違和感を覚えるのだ。
「ふーん。……拒絶されるのが怖いんだ?」
「っ! なんとでもおっしゃい」
「わたしは大魔女になってしたいこと、ちゃんと考えてるよ」
「ふんっ、当たり前です。候補者たる者、そうでなくてはなりません」
「……それだけ、じゃあね」
「──あっ! ちょっと!」
これ以上はお互いに不毛だ。
わたしも、自分の考え方押し付ける訳ではない。
……そうか。大魔女になってやりたいことって、ふつうの人だけじゃなくて。
魔法使いの考え方にも、気を配らないとなのか。
むずい。
「──ハニティ?」
「げ」
「……?」