29 大魔女への登竜門
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「あ」
あれ? デジャヴ?
「どうした?」
「……忘れてた!」
月イチの定期商談は終えたし、しばらく予定はないかな~。
そろそろダオにリースの鍛冶屋を紹介しないとかな~。
……なんて、考えが浅はかだった。
「もうすぐ、定期試験……あるんですけど……!?」
「定期試験?」
「そっ。大魔女候補たちの様子見って感じ? そこで基準に達してないと、継承の儀してもらえないの」
「へぇ……」
「グランローズ様は今五十八歳くらい? で、大魔女の最年長なんだけど……継承の儀が歴代の中でも遅すぎるのよね」
「まだお体に不安がないなら……まぁ。それをしてないとまずいのか?」
「不謹慎だけど、仮に儀式をしてない状態で土に還られたら、地の大魔女としての魔力の行き先がなくなるの……まぁ、大地が暴走? するんじゃないかな」
「それはっ、……まずいな」
「でしょ?」
わたしが生まれる前に継承の儀をしてても良さそうなのに……。
そんなに受け継げるような候補が居なかったのかな?
「……試験って、どういうことをやるんだ?」
「それが悩みどころなのよ」
「?」
「普通だったら、そうね……。例えばわたしは地属性に全振りだから、過酷な環境でも生息地の違う植物を育てられるか、とか。土を自由自在に操れるか、とか。育てた植物の魔力量をみられたりとか」
「ふむ」
「もしこれが、炎の魔女なら彼女たちは勇気と希望の大魔女候補……。人をおびやかす魔物を倒すことが多いわね」
「ほう」
「風の魔女たちは自由と彩り……つまり、喜びを届ける魔女だから、なんでも良いんだけど。多いのは風の声を聴いて、困っている人の手助けをしたり、同じく魔物を倒したり。風とどれだけ一体化して飛べるかだったり」
正直、風の魔女は特殊だ。
風のように自由であるってことも大事なんだけど、かと言ってわがまま過ぎて他人に直接の迷惑をかけてしまうと彩りの名は名乗れない。
空を舞えるとはいえ、長距離を飛べるのは大魔女だけ。
大抵は街の行き来で魔力が消えたりするので、郵便とか宅急便のような修行の仕方をする魔女もいる。
なんか魔女って案外……制約が多いのよね。
「調和と命の巡りを司る水の魔女はもっと特殊で、乾いた地域に水を届けたり、雨のように魔法で水を降らせたり。医者になる者も多くて、魔力や血液の流れを視て、不調を発見したりとか。それもあって地の魔女と組むことも多いんだけど。……でも、一番多いのは調停ね。魔法使いと魔力のない人の争いがあったら、一番に呼ばれるし。魔物がどこかに攻めようとしていたら、倒すより先に結界を張って牽制するし」
「バランスをとる存在、ってことか?」
「そう……なのかな? 正直、水の魔女は一番謎だから分かんない」
「魔法使い同士でも分からないことがあるんだな」
そう考えると、魔力を必要としないこともやってるのよね、わたし達。
……あんまり深く考えてなかったけど、それが修行になるって……どういう意味なんだろう。
「ともかく、地の魔女のほとんどは魔法使いたちの食糧確保に欠かせないから……。育てた植物の魔力量をみられることが、一番多いかな?」
「それって、俺も見学できるのか?」
「さ、さぁ? 見学されたことないから、なんとも……」
魔女同士ならあり得るけど、男子にみられたことはどの魔女もないんじゃないかなぁ……?
騎士の契約も、継承の儀が終わってからじゃないと出来ないし。
……げ、そうだよ。
万が一ダオがエボニー以外の魔女にみられたら、絶対そういうことになる。
……特に、あの女にはダオみられたくないな~。
「とりあえず、エボニーのところ行きたいし。鍛冶屋も紹介したいし、……明日リースに行ってみる?」
「ここに一番近い魔法使いの集落か? 行けるのなら、そうしたいが」
「うーん、絶対めんどうな事はないって保証はないけど……」
「?」
「できる限り、そうならないよう努力する」
「そうか? 俺は気にしないが……」
「ダメ! ぜったいダオを見たら、ウザ絡みする魔女がいるから!」
「わ、分かった」
ダオはわたしが守らないと!