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鉄道部隊

鉄道部隊


効率の良い輸送手段は何かと問われれば、答えは船舶と鉄道になります。


馬鹿でかい国土を有するロシアは、帝政ロシアの時代から鉄道に力を入れてきました。

これは軍事面においても同様。伝統的にソ連やロシアは兵站の主要な部分を鉄道に担わせることで、大量、高速、ローコストでの兵站物資の輸送を実現しています。


この鉄道輸送はロシアの軍事機能の前提と言っても過言ではなく、本来、多くの軍事的リソースを割くべき兵站部隊のスリム化に成功している、、、と単純に言い切って良いのかは、評価の難しいところです。

と、言うのもロシア軍の場合、事実として兵站部隊はスリムなのですが、代わりに鉄道専門の工兵部隊、即ち、鉄道部隊が存在し、これが結構な規模となっているのです。


鉄道部隊の役割は、鉄道の敷設、維持、破壊された鉄道の復旧になります。

鉄道網がロシア軍兵站における動脈であるのは広く知られた事実であるため、当然ながら敵対勢力は鉄道を破壊する作戦に出るのですが、鉄道部隊により短期間で復旧する事が可能です。


この戦争の序盤においても、ウクライナ領東南部やベラルーシで鉄道網に対する破壊工作が実行されていましたが、鉄道部隊が比較的短期間で復旧させています。

鉄道部隊の存在により、特殊部隊やパルチザンが鉄道網に対する破壊工作を行っても短期的な効果しか望めません。


戦争の継戦能力とは、兵站能力に外ならず、ロシアの場合、輸送の要である鉄道を分断すれば、そこから先の部隊は組織的抵抗力を失います。

そのため、ウクライナ軍は大反攻としてアゾフ海への打通を目指し、ロシア軍の動脈の一つを断ち切るつもりです。現在はその100kmほど手前で戦っている状態。

前線の動きを見る限り、ウクライナ軍は概ね三方向での攻勢を仕掛けています。

その内の一つであるバフムート方面はあからさまな陽動ではありますが、残る二方面の攻勢は本命であっても違和感の無い攻勢ポイントです。

即ち、オレホフとベルカノボシルカを起点とする攻勢。オレホフからは要衝トクマクを経てアゾフ海・メリトポリを窺い、ベルカノボシルカからはアゾフ海・マリウポリが窺えます。

しかし、どちらの攻勢ポイントも余りにも分厚い防御陣地を真正面から攻略しようとしており、ウクライナ軍とロシア軍の双方に人的被害が増加している。

この様なヘッドオンの戦闘では、攻撃側のウクライナ軍が不利となるのは当然の事で、これが大反攻の本命とは考えられません。あくまで、陽動としての攻勢であり、主戦力によるアゾフ海への打通を助けるための前線押し上げを目的としたものでしょう。


その意味では、大反攻を現段階で評価することにはほとんど意味がありません。

ウクライナ軍は、主戦力を投入し、戦線を大きく動かすブレークポイントが来るのを待っている。それは、おそらくは、ロシア軍の消耗が拡大し、温存しているロシア軍主戦力が前線に引きずり出されたタイミングではないかと思います。

何故ならロシア軍との戦いはウクライナ軍主戦力である機甲部隊の目的ではないからです。

ロシア軍主力が前線に張り付いた虚を突く形でウクライナ軍機甲部隊はアゾフ海を目指し、鉄道網を切り裂く、その時を待っている。


ロシア軍もその辺は理解しているでしょう。ある意味、この大反攻は我慢比べに見えます。


ウクライナ軍は、ロシア軍が主戦力を温存しておける限界、ブレークポイントを待っています。

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