F16
F16
ゼレンスキーはG7に一定のインパクトを残して帰国しました。
まずは警備に当たられた2万4千人の警察官にありがとう、お疲れ様でした、と言わせてください。
オンラインではなく対面での参加は、会談の中身以上にメッセージ性が高かったでしょう。
ぶっちゃけたことを言うとG7のお歴々との会談などは別にどうでも良かったんですが、インドのモディ首相から「ウクライナの人たちの苦しみを理解しているよ。これは人道上の問題だから出来る限りのことをするよ」と発言を引き出せたのは結構大きい。
インドは親露と言っていい国であり、和平仲介役の最有力候補(その次が中国、ず〜〜〜っと下がってトルコ)なので、メッセージ性は抜群です。まぁ、インドの外交スタンスから経済制裁には加わらないと思いますが。
さて、実務面におけるG7での成果はF16供与の容認、になるでしょうか。
これも降って湧いた話ではなく、事前調整済の既定路線とも言える内容なので、驚きはありませんが、この戦争に与える影響は大きい。
これは、F16の優れた性能面もありますが、40年以上運用され大量に生産された戦闘機である事に意味があります。
F16は現在も一線級の戦闘機ですが、耐用年数の経過などから既に退役に至っている機体も多く、今後も順次増えていきます。
これらは最新のブロックではありませんが、比較的供与し易い機体が数多くあるという事に他ならない。
戦闘機、特に、損耗率が高い傾向にある支援戦闘機は、高性能な虎の子の機体より多少見劣りしても「おかわり」の効く機体の方が有効に機能します。
これは別に一度に大量に供与する必要も無いのです。「欧米にはF16のおかわりが大量に存在する」この事実だけでロシアには脅威でしょう。
勿論、性能面もF16なら文句無しで、搭載可能なミサイルや爆装も豊富なため、任務に応じて柔軟に運用できます。
大量に生産された機体は部品サプライの安定に繋がり、実戦においては極めて大きなメリットとなる。
問題は、これまでも言われてきた様に、F16の訓練というか航空機の習熟には時間がかかるという点にあります。
航空機は操縦桿とスロットル、ラダーだけでコントロールするものではありません。
西側仕様のアビオニクスや火器管制システムを理解しなければ戦闘など不可能です。分厚いマニュアルやリファレンスを読み込むだけで相当な時間が必要(F16にウクライナ語マニュアル等は無いと思いますが、今時は翻訳も手軽になっているし、パイロットなら英語コミュニケーションも何とかなるかな)。
操縦桿ですらMig29などの機械式とF16のフライバイワイヤでは扱い方が異なります。細かいことを言うと近代航空機はブロックが異なったり近代化改修の前後で全くの別物になることもあります。
ミグやスホーイからの機種転換を習熟レベルまで持っていくには、3ヶ月程度では厳しい。
とは言え、実のところ訓練は先行して行われている可能性も高く、比較的早期にF16がこの戦争に投入されてもそれ程の驚きはありません。
また、この戦争全般においてロシア空軍(航空宇宙軍)はウクライナ領空域での活動が極めて限定的です。活動の大半がロシア領空からの空対空・空対地長距離ミサイル攻撃となっており、多くの場合、ロシア軍航空機はミサイルランチャーとしての機能しか果たしていません。
そう考えると、F16のオプションを全て揃えるためにフルラインの訓練を課す必要性は低いのではないかとも思えます。
F16はマルチロールファイターですが、対地攻撃など想定されているミッションに必要なメニューに絞れば、訓練期間の短縮もできる可能性があります。
いずれにせよ、これまで航空戦力という点において明確にロシア軍に遅れをとっていたウクライナ軍ですが、F16が加わる事により、少なくともウクライナ領内における戦力でロシア軍に劣る所が無くなります。
これは、最早ロシア軍が再度の侵攻を企図しても戦力的に非常に困難といえる事実です。
当然、ロシア軍もその程度の計算はできるでしょう(まぁ、問題はチンピラ皇帝が現実を受け入れられない事にあるんですが)。
後はロシア軍を叩き返すだけです。




