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おかのした

おかのした


ここのところゼレンスキーがキーウを空けて欧州巡りしてたのは、G7に向かう各国首脳に色々託してるのかと思いきや、まさかの直接参加とは、、、いや、まぁ、何となくそんな気はしてたけど、、、、、、


さて、ロシア軍は、ここ数日、集中してキーウにミサイル攻撃しています。目的はキーウ市街では無く、ペトリオットの防空システム破壊にあるようです。

ペトリオットを目標とする事自体には軍事的合理性も有りますが、どうせ「古臭えペトリオットなんざ全部ぶっ壊してやんよ」とか啖呵切ってたチンピラ皇帝の指示なんだろうと思うとウンザリする。


キーウ(ペトリオット)へのミサイル攻撃に対し、ウクライナ側は、極超音速ミサイルのキンジャールを含むミサイルを全て迎撃した、としています。

対するロシア側は、キンジャールを迎撃できる防空システムは存在せず、キンジャールによりペトリオット1基を破壊した、としている。

さらに、アメリカからはペトリオットがキンジャールを迎撃した事とペトリオットが損傷した事について公表されています。


これら公表内容等をどう理解すべきか。

先ずは幾つかの前提となる事項を説明します。


キンジャールは、ロシア軍によればマッハ10で飛翔すると共に高い機動性を有しているため、防空システムの攻撃を回避して目標を撃破できる、という代物。

最新式の極超音速ミサイルであり、30年以上前からあるペトリオットで迎撃できるのか?という疑問を持たれる方もいるでしょう。


結論から言えば、私の想定どおりなら充分に迎撃可能です。

想定とは即ち、キンジャールは極超音速ミサイルなどではなく単なる弾道弾。これは別に独自の見解ではなく、イギリス国防省なども同様の見方をしています。


ロシア軍の主張する極超音速ミサイルと弾道弾の大きな違いは回避行動の有無にあります。

極超音速ミサイルの形態として有力視されているウェイヴライダーでは、打ち上げられ弾道軌道の頂点から落下する際、地球の大気を水切り石の様に跳ねることで弾道軌道を離れ、不規則に移動するミサイルですが、大気圏に再突入し、濃密な大気の中で速度と機動性を両立できるかは非常に疑わしい、というかそういう設計思想の兵器ではないハズです。

濃密な大気下をマッハ10で突入し、回避行動を取り、目標に精密誘導できるミサイル。

この弾道弾と巡航ミサイルのいいとこ取りした仕様を達成するには、信頼性が高く超高速制御が可能な半導体、精密誘導を可能にする航法装置、軽量・コンパクトで高出力なエンジン、これらを統合するソフトウェア、Gや空気抵抗・応力に耐えるための弾体形成技術、最終的にアッセンブルまで持っていく基礎工業力。

これらの全てをロシアが持っているとは到底思えません。

そもそも弾道弾は重力加速度を利用する超高速の兵器で、大陸間弾道弾に至ってはマッハ20を優に超えます。短距離弾道弾であってもマッハ10まで持っていくだけなら、そこまで難しくはありません。高く打ち上げて落とすだけ、冷戦時代からある枯れた技術です。

実際、キンジャールの形状を見てもウェイヴライダーやリフティングボディなど特化されたものではなく、単なる弾道弾と同様のもの。

もちろん、マッハ10で突っ込んでくるミサイルを迎撃するのが困難であることは当然のこと。しかし、ペトリオットは航空機や弾道弾を迎撃するために開発され、アップグレードを重ねてきた防空システムです。

流石にペトリオットで大陸間弾道弾を迎撃するのは事実上不可能(相手がデカ過ぎるし運動エネルギーだけでもうヤバい)ですが、最新のPAC3と呼ばれるペトリオットはPAC2以前のものとは完全に別物となっており、特に弾道弾迎撃能力に優れています。

キーウという限定範囲の防空であれば、マッハ10の弾道弾でもかなりの確率で迎撃可能と判断していい。


迎撃能力に防空範囲が関係あるのか?

単純化してみましょう。

ターゲットがマッハ10で遠ざかっている場合、迎撃(?)するにはマッハ10を超えなければ追い付くことすら不可能です。

マッハ10で横切っている場合はどうでしょう?不可能ではないでしょうが、高速で移動するターゲットを捕捉するのは物理的にも技術的にも中々大変です。

では、マッハ10で近付いている場合は?この場合、ターゲットは自ら接近して来るのです。彼我の距離以外は変動しません。迎撃には絶好の条件と言えるでしょう。

極超音速ミサイルの脅威が喧伝され、迎撃不可能と言われるのは、ミサイル防衛のフェーズに関係があります。

ミサイル防衛のメインは中間フェーズと呼ばれる高高度域における迎撃です。これは、早期迎撃という面と広範囲をカバーする面で有効ですが、標的となった都市と防空システムの距離が遠いことに問題があります。上記の例で言えばマッハ10で横切るミサイルを捕捉しなければならないという事。

そして、この唯でさえ難易度の高い中間フェーズでの迎撃に対し極超音速ミサイルは回避行動を取ることから、迎撃困難・不可能とされています。

対して、ペトリオットは終末フェーズと呼ばれる目標付近からの迎撃です。上記の例ではマッハ10で近付いている状態。これは必ずしも迎撃不可能では無く、防空システム次第では高い確率で迎撃可能でしょう。


ではロシアは何故、弾道弾に過ぎないキンジャールを極超音速ミサイルと称しているのか。

簡単に言うと、極超音速ミサイルはプーチン君の「ぼくがかんがえたさいきょうのへいき」の一つだからです。

極超音速ミサイルの構想自体は昔からありましたが、プーチンは2018年の教書演説で6種の新兵器について言及しており、極超音速ミサイルもその内の一つ(正確には、キンジャールとウェイヴライダータイプのアヴァンガールトの二つ)です。

権力を握り、周りに異を唱える者がいなくなると出来ることと出来ないことの区別が付かなくなるのは何処の国でも同じ。

プーチン君が「作れ」

と言ったら「おかのした」

と言うしかない。

波高500mの津波を起こすという「ぼくがかんがえたさいきょうのへいき」核魚雷も、プーチン君が「作れ」

と言ったら「おかのした」

と言うしかないのです。

波高500mて、、、巨大隕石衝突か超々巨大地震でもなければ起こせません。

核兵器は人類が有する最大規模のエネルギー発生源ですが、自然の力に比べれば微々たるものです。

世界最強の核兵器ツァーリボンバですら、超巨大な台風1個のエネルギー総量と比較すれば1/1000程度に過ぎない。

核魚雷のTNT換算2メガトン(ツァーリボンバで50メガトン)のエネルギーでは、500mの水柱(鬼滅の話ではない)は上がるでしょうが津波を起こすには力不足です。

まぁ、プーチン君の「ぼくがかんがえたさいきょうのへいき」のスペックは眉唾物だと思っておけば、概ね間違いではない。


キンジャールはプーチン君にとって自慢のおもちゃな訳で、古臭いペトリオットに迎撃などされてはならないし、ペトリオットなど破壊できて当然なのです。

当然、プーチン君は「キンジャールでペトリオットを破壊しろ」と言ったでしょう。

返事は「おかのした」しかありませんし、結果は「破壊しました」と言うしかない。

ロシア側はペトリオット「1基」の破壊を主張していると報道されており、ロシア側主張の原文を確認していないので実際の主張とは異なっている可能性もありますが、ペトリオットはミサイルを発射するランチャーやレーダー、火器管制装置など複数のユニットから構成されていて、1基とは何を指しているのか判然としません。

通常1基と言われればシステム全体を指しますが、、、多分ロシアの連中はあんま考えずに適当な事言ってるだけだと思う。


アメリカはペトリオットが「損傷」したと公表しており、ロシアの連中は逆にビックリしたんじゃないかね。

ペトリオットの様な終末フェーズの迎撃では、当然ながら迎撃しても残骸は落ちてきます。

落下物によって被害を受ける可能性はありますが、直撃していれば「損傷」レベルでは済みません。炸薬のダメージだけではなく、運動エネルギーも衝撃波だけで建物が吹き飛ぶレベル。


キーウで翌日以降も防空が機能しているのを見る限り、

迎撃に成功、その際、落下物により防空システム機能には影響しないレベルの軽微な損傷を受けた。

というのが実態かと思います。まぁ、アメリカの公表通りですね。


戦争で発表される戦果に信頼性が無いのは当然の事です。そもそも、戦果確認は非常に困難なタスクで、特に長距離攻撃の戦果をリアルタイムで確認する手段などロシア軍にはほぼ存在しません。

「パトリオット1基を破壊」ってのは何を破壊したのか、どうやって破壊を確認したのか、、、などと考えるだけ虚しい話です。

問題は、国民やウクライナ、世界に対し虚報を流していることより、統治者であるプーチンに耳触りの良い虚構を吹き込んでいること。


ロシアは結局、ソ連と同じく独裁者のご無体に

おかのした

As you ordered

などと答えるしか出来ない国だということ。


事実と異なる報告がなされ、事実と異なる報告に基づき判断がくだされる独裁者・専制国家の宿痾。


ロシアはソ連の二の舞になるという未来予想が強ち荒唐無稽でもない事に不安を感じます。

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