地均し
地均し
ウクライナによる大反攻は既に始まっています。
所謂戦車戦こそ開始されてはいませんが、前哨戦ともいえる地均しが行われています。
この戦争の中盤から猛威を振るったハイマースのロケット弾は射程が80km、ロシア軍は司令部や燃料・弾薬庫など重要施設を前線から80km以遠に置かざるを得なくなりました。
即ち、歩兵や機甲車両など移動目標を除けば、前線から80kmは地均しの出来た状態です。
しかし、大反攻とされる攻撃の準備には足りません。目標の重要度・脅威度によっては前線の150km以遠、或いはロシア領内の施設さえ沈黙させる必要があります。
ゼレンスキーがエイタクムスなど中・長距離の精密攻撃手段を求める理由がコレ。
ロシアがこの戦争の序盤に大きく躓いたのは、最序盤に対空施設など叩くべき目標すら録に把握できておらず、地均しがおざなりのまま強引に陸戦戦力を突っ込んだからです。
乾坤一擲の大反攻で、ウクライナがロシアの阿呆と同じ轍を踏むことは考えられません。
重要・脅威施設を念入りに潰していくでしょうし、最終局面では榴弾砲やハイマースを猛射し歩兵や機甲車両を事前に叩くでしょう。
では、前線から80km以遠の施設を潰すにはどうするか。射程が足りなければ打つ手は概ね二つ。手が届く所まで近づくかレンジエクステンデッド、即ち射程を延ばすかする訳です。
前者の極端な例が特殊部隊による(潜入)破壊工作で、パルチザンなどもコレに加わります。尤も、ウクライナの場合、特殊部隊とパルチザンの境界は何というか曖昧です。
ウクライナ南東部におけるウクライナ軍特殊部隊は例のアゾフ大隊などが活動していますが、アゾフ大隊は元々、2014年のウクライナ政変で親露派武装勢力に対抗するためのパルチザン・義勇兵だったものが国軍に編入された準軍事組織です。
ウクライナの中・長距離攻撃能力は限定的なため、敵地(まぁ、大半はウクライナ領ですが)に潜入して施設を攻撃できる特殊部隊は大反攻に向け重要性が高まっています。
アゾフ大隊もご存知のとおりマリウポリにてほぼ壊滅状態になりましたが、再編成され新たに活動しています。
そしてレンジエクステンデッドに関しては実態が今一つ判然としません。
ウクライナは欧米から供与された兵器ではロシア領を攻撃しない、としており、ロシア領内を攻撃しているのはウクライナ製兵器であるハズですが、巡航ミサイルなのかドローンやUAVの類いなのか施設の近傍からの攻撃なのか長距離攻撃であるのかすら、ウクライナ・ロシア双方の情報が不明瞭過ぎて何とも言えません。
おそらく、何らかの長距離攻撃手段をウクライナが開発・製造しているのは間違いありません。
とは言え、対独戦勝利記念日の前にクレムリンにドローンが突っ込んでいるのはウクライナ側の「攻撃」とは到底思えない。
青びょうたんはプーチン君暗殺を狙ったテロだと騒いでいましたが、チンピラ皇帝のおわす宮殿でドローンが爆発しているのに何とも緊張感の無い動き、対空装備まで施された最重要建造物への襲撃など、本来のロシアなら大騒ぎで責任者のクビが飛んでもおかしくは無い。
いや、まぁ、飛んだかどうかは知りませんが、コレは偽旗作戦と呼ぶのも恥ずかしいレベルでは?
コレが大統領暗殺未遂のテロルであるなら、テロリストも警備も、某極東の国で起きた首相暗殺未遂事件より稚拙でお粗末です。
殺されるのを恐れてコソコソ逃げ隠れしているチンピラを、クレムリンに居るかすら分からないのにドローンで爆殺しようとは、しかも、その間抜けのドローンを阻止出来ないとは、前線で命懸けの戦いを続けている兵士が聞いたらなんて言うだろうね?
まぁ、お粗末過ぎる茶番などどうでもいいが、ウクライナ製の長距離攻撃兵器は、確認された情報頻度から見て、生産力に課題が有る可能性が高い。思うに、試験製造された兵器を実地に使用しているだけで、生産ラインは確立されていないのではないか。
ロシア領は攻撃出来なくとも、中・長距離攻撃手段が無いと特殊部隊だけでは結構厳しいと思っていたところ、イギリスからストームシャドウ供与の話が出てきました。
ストームシャドウは航空機発射型の巡航ミサイルです。
ウクライナに供与されるのは射程が1/2ほどのモンキーモデルですが、それでもハイマースの3倍、射程距離250kmになります。ウクライナ領内の標的には充分手が届きます。
問題は、英国製で西側仕様の航空機発射型巡航ミサイルをミグやスホーイに懸架・火器管制できるのか?とか思っていたら、すぐさまストームシャドウがルハンシク攻撃に使われた、とか迎撃した、といったニュースが流れています。
う〜〜〜ん。まぁ、イギリスはストームシャドウを納入したと言っているので、ミグやスホーイへの搭載はクリアされた課題ではあると思います。
例によって供与の公表はセレモニーに過ぎず、ウクライナ側航空機の火器管制を改修するところまで終えた上での公表であっても違和感はありません。
ストームシャドウの詳細は判っていない部分も多いのですが、イラク戦争などでの使用実績から、比較的低高度を亜音速で侵入し、高精度の目標捕捉能力を持ち、空中での起爆ではなく目標を貫通して炸裂する高威力弾頭、レーダーに映らず迎撃困難。という認識、評価を得ています。
やる気と能力の欠如したロシア軍の対空兵装で迎撃とか眉唾物としか言いようがない。
まぁ、ロシア側の言う「迎撃」とは、自身の被害と引き換えにウクライナの巡航ミサイルなどを破壊する行為、とでも考えておけばいい。
さて、ウクライナ南東部とロシア南部では、物理的に地均しが行われている訳ですが、ゼレンスキーは欧州各国を歴訪し、支援要請だけで無く今後の方向性についての調整を勢力的に行っています。
これもまた「地均し」に他ならず、オープンにされない内容も含め、この戦争の行方に影響を及ぼすでしょう。
とか言ってたらゼレンスキー来るの?!マジ?!20日って今日じゃん。
oh……
頼むから要人警護を抜かりなくお願いします、、、




