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習近平とプーチン

習近平とプーチン


習近平とプーチンは共に専制国家の独裁者ですが、その性状は大分異なります。


プーチンはソシオパスと断じても問題ないでしょう。

対して、習近平はどうなのか、と言えば「カルト2世」が最も的確な表現になるかと思います。


習近平の父は共産党の重鎮でしたが、毛沢東の不興を買い、迫害されます。

習近平も同様に迫害され、家族と離されて穴居生活のような暮らしを送ることになりますが、そこで毛沢東思想を叩き込まれます。


謂わば、毛沢東は父親を始め自身と一族を迫害した張本人になる訳ですが、習近平は迫害の真っ只中で共産党に入党します。習近平の毛沢東への個人崇拝と毛沢東思想への傾倒を見るに、共産カルト(毛沢東派)怖え、、、という感想しか出て来ません。


毛沢東の死後しばらくして、父親が復権すると習近平も長足の出世を始めます。いわゆる太子党の一人として中国共産党の頂点に登極することとなる訳ですが、父親の力というよりは、父親が所属する派閥やその外の派閥との力関係など様々な、実に様々な事情が合わさった結果であり、どちらかと言うと棚ぼた、と言った方が近いように思われます。


しかし、どちらかと言えば「無難」と思われて推されたトップの座ですが、もはや誰の目にもその地位を脅かすのは困難と思えるほど揺るぎない盤石の体制を築き上げました。


その習近平を動かす行動原理が毛沢東思想です。

端的に言うと、いわゆる共産主義の思想を実学的というか現状に寄せて実現して行こうとするものと思えば、概ね間違いではない。

習近平の場合、毛沢東思想に「中国が世界の中心である(べき)」という中華思想が多分に加味されていますが、熱烈な毛沢東思想の信奉者であることに間違いはありません。


これが、習近平を超巨大カルトの超々巨大セクト(セクトの方がでかい)のトップに立ったカルト2世、と評する所以です。


カルト的なものを利用しようとする立場のソシオパス。どちらかと言うとカルト的なものに利用される立場だったカルト2世。

こうして見るとプーチンと習近平は国の違い以上に対照的です。

そして現在置かれている立場もまた対照的です。


開戦前、プーチンの終身皇帝の座は盤石でした。対して習近平は不確定要素がそれなりに有った。

しかし、1年と経たぬ間に状況が完全に逆転してしまった。


この、奇妙に対照的な二人の独裁者の接近は何を意味するのか。


中露会談後の共同声明を見る限り、特段、インパクトのある内容ではなく、中国は欲しいものはしっかり持って行ったなぁ、ってだけです。

メインとなるものは経済協力で、協力といっても意味合い的には中国の貿易に便宜を図るくらいのものです。

サラッと出ているだけですが、経済分野において中国が一番望んでいたであろう北極海航路についても言及されていました。

さすが中国、抜け目無いって印象ですが、ロシアに拒否する余地は無いし、メリットも有るので、まぁ、妥当なところかと思います。


そして、この会談でロシアが得た最大のものは「孤立の回避」でしょう。

正直、経済協力といっても半導体以外でこの戦争に大きく影響を及ぼし得るものはなく、プーチンが喉から手が出るほど欲しているのは有力国の支持であるハズです。


上海協力機構の会談で素気無く扱われ、孤立するリスクに曝されたプーチンは、ロシアと中国の力関係を思い知らされたでしょう。ロシア、というよりもプーチンが、この難局を乗り越えるには中国の助力が必要であると理解せざるを得ない。


この会談の眼目は、おそらく軍事的支援ではない。習近平も現時点でそこまでのリスクを冒す理由も必要性も無い。ただ、プーチンに

「私は味方だ」

「欧米にロシアだけで立ち向かう理由など無い」

「私の造る世界秩序に加わりなさい」

そう言えばいい。


或いは、プーチンは対等な関係の積もりかもしれません。だとすれば、とんでもない勘違いで道化に等しい。

とっくに格付けの終わった両者の関係は誰の目にも明らかです。


プーチンが喜色を露わにし中露両国の固い結び付きをアピールする姿を、習近平は如何にも大人(ターレン)然とした態度で、鷹揚に眺めていました。


極め付きは、習近平が来年のロシア大統領選に言及したこと。

プーチン再選を支持しているかのような口振りは、本来ならプーチンとして忌避すべき発言でした。

ロシア人は「強い」大統領、皇帝を望んでいるのです。中国に飼われた皇帝などに価値はない。

例え習近平がロシア大統領選に介入などしなくとも、中国の後ろ盾で大統領になった、と見られるのは避けられない。

そして、プーチンの次を狙う者たちはプーチンではなく、習近平の方を向くでしょう。

貧すれば鈍すると言いますが、プーチンはそんな事にも考えが及ばないほど追い詰められている様です。


中国は欲しいものは持って行きました。その中国の目的は中台統一レベルに留まるものでは有りません。

声明などでは「多極化」と言われているものがそれに当たります。


まぁ、多極化というのは方便です。外向きには多極化、即ち、欧米の民主主義に囚われない多様な政治形態を発展させる。と聞こえの良い表現を使っていますが、中国共産党内部では一極化、即ち、(中国)共産党による世界秩序の構築を強く推し進めると習近平が宣言している。


まぁ、気宇壮大な話ですが、習近平は頑張ってます。

正直、アメリカと中国に挟まれて日本は大変です。


それはさておき、この中露会談はウクライナ戦争にどういう影響を及ぼすのか。

評価としては、短期的、表面的な影響はない。というのが結論です。非公開会談においても軍事的支援の実施が決定した兆候は認められていません(プーチンは懇願したでしょうが)。


しかし、中長期的に見ると有形無形の影響が出てくる可能性は高い。それが必ずしもロシアに利するとは限らないのが中国の強かなところです。


プーチンがあおったのは毒の盃でした。

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