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プロパガンダ

プロパガンダ


現在、ウクライナは戦況そのものより、ロシア軍キーウ後退後の惨状に注目が集まっています。

ロシア側は例によって西側の捏造と言っていますが、多分、ロシア人でも信じているのは少数派かと思います。


ロシアという国は伝統的に軍人、特に兵卒に対する扱いの軽い国で、給与は困窮するレベルしか支払われません。近年は改善されてきたと聞いていますが、依然として生活に充分な水準ではないとされています。


こういった状況で何が起こるかは決まりきっていて、物資の横流しなどの不正が横行し、士気と規律を保つことができなくなります。

さらにロシアでは徴募兵に対する過酷なイジメ、新兵シゴキが伝統的に行われており、これも士気と規律を著しく削ぐ要因となっています。


不正やイジメなどは、どのような組織においても生じますが、軍という暴力装置に貧困が重なるとろくなことにならないのは古今東西無数の実例が示しています。

しかも、それは属人的な一過性の問題ではなく、組織的な構造上の問題で、ロシアにおいて第二次世界大戦以前から連綿と続いてきた軍の体質です。


規律もへったくれも無い軍隊が戦場でどんな行動を取るか、当のロシア人が良く理解しています。

それでもロシア側は西側の捏造と主張し、民間人に対する加害行為は1件も無い。と言い張る下劣さに、私は「ソビエトと中身変わらないな」と毎回呆れます。


さて、戦争を始めたことに加え、戦場での行為に世界中から批難の集中するロシアですが、ロシアに対する批難一辺倒というわけでもありません。

ロシアと同じ穴のムジナは、日本人が思っているより意外と多いので、国連での採決を見れば世界各国の立ち位置が概ね把握できます。


そういった国の思惑とは別に、個人レベルで「無関係なロシア人まで攻撃するのは止めよう」的な論は、もっと声を上げて行って良いと考えています。

「プーチンを大統領に選んだのはロシア人だし、無関係ではない」という意見も理解はできますが、それでは国家レベルの責任問題を個人にまで負わせて虐殺するプーチンと大きな違いはありません。

何より、ソシオパス気質なプーチンは、自身が始めた戦争が原因でロシア人が迫害されても、心を傷めるどころか付け込む理由ができて大喜びするでしょう。

今まさに、そうした火種を燃やして大火となったのがウクライナでの戦争であることを忘れないで欲しい。

殺すわけでもなければ何をしても良い、なんて意識があるのであれば、考え直して欲しいと思います。


日本国家としてロシアを批難している中(決して一枚岩ではありませんし、ロシア人を攻撃しているものでもありませんが)、ロシアに対して中立的、好意的或いは同情的な意見、言論が出ること自体は健全で、非常に好ましいことだと考えていますが、注意すべきはロシアは他国の言論の自由を利用することです。


ロシアはソビエトの時代から言論というツールを重要視してきました。

兵卒にお金を出さなくても印刷物にはお金を出していたのです。

共産党は出版に際して検閲・指導する代わりに補助金を出し、党に都合の良い言論を形成していました。お陰で、当時、旧東側の印刷物は安価に入手することが可能だったのです。


まぁ、共産党自体、マルクスという碌でなしが書いた「資本論」から生まれた超巨大カルト集団なわけで、言論の重要性を理解していない方がおかしいのですが。


ゴルバチョフの時代、グラスノスチにより共産党の言論支配は終わりを迎えます。しかし、おそろしく荒療治となったこの政策は、赤い貴族の実態を暴くなど共産党がひた隠しにしてきたものを曝け出し、共産党解党のトリガーとなりました。

プーチンにとってグラスノスチは苦い記憶なのでしょう。政権を握るとメディア支配に乗り出します。


当時、ロシアのメディアを支配していたのは、オリガルヒであり、メディア王と呼ばれたグシンスキーです。

グシンスキーは、メディアの力を使って選挙に絶大な影響力を持ち、キングメーカーのように振る舞いましたが、プーチンの大統領就任3ヶ月後には過去の不正を理由に逮捕され、その後釈放されるも実権を失います。


以降、ロシアにおける主要メディアはプーチンが掌握し、終身皇帝の座を磐石なものとしました。

現在では、インターネットに対してもロシア国内における規制がほぼ完了しています。


残るはロシア国外での言論に対する活動です。


インターネット上の言論に対する活動は、中国では五毛党のように人海戦術が主で、ロシアは著名人を使ったプロパガンダが主と考えられています。

言論操作の規模が明らかにされているわけではないので、実態は不明で国内外でどのように活動しているか全体像は定かではありませんが、ロシア政府系ハッカー集団「コージーベア」が米国大統領選に介入している経緯から見ても、ロシアが国外での世論形成・言論操作に相当なリソースを費やしているのは確実でしょう。


翻って日本です。日本は言論の自由が保証されているので、虚偽や誹謗中傷、犯罪行為でも無ければ罰せられることはありません。テレビの出演者が自国の首相を公然と馬鹿だ阿呆だと言っても平気でいられる国は世界でも少ないのではないでしょうか。

日本人がロシアに好意的な発言をすることが認められることは元より、ロシア政府の人間がロシアが正しいと言い張ることも、日本人が何らかの利益供与を受けてロシアを擁護することも、それ自体が罪に問われることはありません。


個人の感想ですが、正直なところ、ステルスマーケティングに対する直接的な規制すら無い日本のメディアやインターネットは自由を通り越して無法地帯だと感じています。

テレビなどのステマやヤラセを、視聴者から批難された時だけ問題扱いするBPOなども、機能しているとは言えません。


さらに言うなら、ロシア政府の人間が立場を明らかにしてロシアの正義を主張する行為は自由の範囲でしょう(嘘八百並べ立てるのは論外ですが)。それはスポークスマンとしての言論だからです。立場を明らかにしている以上、聞く耳は持つべきだと考えます(ロシア外交官は聞くに耐えない嘘吐きだ!という意見には同意します)。


しかし、日本人などがロシア側から金銭などを得て(いる事を隠して)ロシアの正義を主張するのは、自由を通り越して無法に属するものです。

日本人の感覚では、言論の自由の範囲と感じるかもしれませんが、実態的にはスパイ行為と変わることなく、これが戦時で敵対国家からの使嗾によるものであった場合、日本以外の国ではスパイ行為で逮捕されるでしょう(ロシア・中国とかなら戦時・使嗾の如何に関わらず逮捕されます)。


言論とは、同じことを言っていても、誰が言ったかで印象が全く異なります。

当たり前の話ですが、幾らロシア外交官がロシアの正当性を主張しても反発しか生まないでしょうが、同じ事を言っていたとしても日本の有名人、偉い人、賢い人が言えば、納得してしまう人というのは一定数居るのです。


この当たり前をロシアはソビエトの時代から忠実に実践していました。国外の世論形成・言論操作には現地の協力者を使うのです。

グラスノスチを荒療治と言いましたが、この情報公開により、ソビエトが各国にばら撒いたお金と相手(協力者)についても、世界が知ることとなります(荒療治が過ぎるぜゴルバチョフ)。

グラスノスチによりソビエトの関与が表沙汰となって、政権を揺るがす大騒ぎになった国もあり、日本においても日本共産党にソビエトから資金が提供されたほか、日本共産党がソビエトに党本部建設資金を無心したことまでバレるなどしました。


まぁ、現在、日本共産党などには、ロシアも金を払ってまで協力を求めることはしないでしょう。

日本共産党は中国やベトナム、キューバの共産党と異なり、未だ政権を握ることもできず、民主主義にお情けで生かしてもらっている世にも恥ずかしい共産党なので。


じゃあ、誰がロシアの協力者かと言われれば、ロシアの主張と同じことを言っている有名人、偉い人、賢い人、という事になるでしょう。

特に「賢い人」の場合は、ロシアの欺瞞を理解できるにも関わらず、ロシアに同調しているのだから、まぁ、そういう事なのでしょう。


プロパガンダはどの国もやっていることで、ゼレンスキーの演説もプロパガンダです。

例えロシアであっても、ファクトに基づくものならやればいい。


しかし、今回の戦争に限らず、ロシアの主張には無理があり過ぎる。

本来なら、クリミア紛争の時点で西側はもっと積極的に関与すべきだった。

2014年当時、現在の状況を想定できなかったのは責められる事ではないし、NATOの介入が紛争のエスカレートを招くおそれがあった事も理解できる。それでも、西側の事なかれ主義がプーチンを冒険に走らせた一因となったのは間違いない。

せめて、ロシアは無関係などという主張を毅然とした態度で否定し、今後、侵略行為は認めずNATOによる軍事的オプションもあると明確にしておく必要があったが、それを怠った。


結果的に西側は、ロシアのプロパガンダを安易に受け入れてしまった。


言論の自由を手離す必要はない。しかし、そろそろロシア(に限らず中国などに対しても)の白々しいプロパガンダにNO!を突き付ける時期に来ているのではないか。

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