表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/197

中国の判断

中国の判断


2年目に突入したこの戦争で、高まってきた不安要素・懸念があります。


原因は、ここんとこアメリカがあちこちでブイブイやりまくってる事。

気球を撃ち落として中国の面子を潰したり、大統領自らキーウに乗り込んで気勢を揚げたり、と専制国家に対し配慮する気配が無くなってきている。

戦争初期はロシア包囲網のため、険悪化していた中国との関係改善に手を尽くしていましたが、昨年8月のペロシ訪台以降、スタンスが変わりました。

元々、バイデンは媚中とまで言われたオバマ政権の副大統領だったので、関係改善はウクライナ戦争とは関係のない既定路線であったとも言えますし、ペロシ訪台はアメリカのドラゴンスレイヤー勢力に押し切られただけ、とも言われていました。しかし、ここ最近の動きだけでなく、今後の外交スケジュールを見ても、やはり外交スタンス、特に中国に対するそれが変わったとしか思えない。


私は当初、この変化を戦争終息の予兆と捉えており、その考えは現時点においても180度転換はしていません。

しかし、これがアメリカの暴走とまでは行かずとも、それに近いものの様に思えて仕方ない。


気球撃墜が必要な措置であった事に異論はありません。

気球の機能的な意味での用途は不明ですが、文字通り「観測気球」即ち、相手方の反応を探る意図が含まれていることは間違いない。


中国の気球である。と確認された時点で放置する選択肢などありません。

中国に民間などという区分は何の意味もない。民間なら手を出さないとなれば事実上の無制限です。

隙を見せればつけ上がるので、ならず者国家相手に引くべきではないのですが、面子を潰すと面倒なのも、ならず者国家相手のややこしいところ。

珍しく早々に中国が自国のものだと認めたという事は「穏便に済ませて欲しい」というメッセージでもある。


例えば、核兵器を抑止するメッセージを発信するにしても、チャンネルによって温度差をつけるものです。

公式の記者会見などでは「アメリカはロシアによる核兵器の使用を容認しない」程度の比較的温い表現に留まっていても、水面下のチャンネルでは、「核なんか使ったらプーチン君を始めクレムリンの主だった連中の首が飛ぶよ、物理的に」といった具体的な話をオブラートに包んで、持って回った言い回しで、それでも相手がメッセージの意味を取り違える事の無いように伝えます。


これは「プーチンは生命が惜しいから核兵器を使わないのか!」という反発が起きないようにする事で、面子を潰さずに逃げる道を用意するためのものです。

そういった配慮が無ければ、ならず者国家は落とし所を失い、予測も制御も出来ない事態に陥る懸念が高まります。


また、バイデンはウクライナ戦争の和平仲介役として中国が不適格との見解を示しましたが、停戦条件の内容を別とすれば、中国が間に立つ事自体は戦争終結のキーとなってもおかしくない、極めて有力なオプションとなり得る。

和平仲介役として国連は全く機能していません。トルコは力不足で、クレムリンが崩壊でもしない限りアメリカが仲介役になる事態もあり得ない。

ウクライナが呑める停戦条件であれば(まぁ、これが難しいのですが)仲介役中国という選択肢を頭ごなしに否定するのは完全なる過ちです。

これはアメリカの暴走と言ってもいい。


どうにもこうにもアメリカが絶頂過ぎて怖い。


中国がロシア寄りなのは事実であり、当然です。

正確に言えば、中国とロシアは敵同士で互いに見下しあっていますが、アメリカという最大の敵、目の上のタンコブに対抗するため、表向きは仲良くやって行かなければならない。

中国としては、この戦争に距離を置きたいのが本音でしょう。ロシアの苦しい足元を見透かして経済的利益を搾り上げ、美味しいとこ取りをするのがベスト。

しかし、台湾問題を考慮するならロシアを失う訳にもいかず、プーチンの生命などはどうでもいいが、政権崩壊から革命が起きてもとばっちりを食いかねないので、ほどほどの所で停戦して欲しいと考えているハズ。


そんな中国にとってロシアへの軍事支援は有り得ない選択肢、、、でした。

台湾侵攻の準備が整っておらず、コロナ禍からの経済立て直しが始まったばかりの状態でアメリカやEU各国を敵に回すことは避けねばならない。

既に敵に回しているイランや北朝鮮でさえ、公然と軍事支援は出来ないのです。どの国であろうとロシアと運命を共にする覚悟は無い。


それが、ここに来て中国によるロシア支援、それも民間経済の話では無く、軍事支援が取り沙汰されるとは、どういう事なのか。


中国共産党が、ではなく民間のブラックマーケットにおいては、ロシアと半導体などを含む軍事物資の密貿易はあるでしょう。しかし、中国共産党として軍事支援するのは次元が異なり、事実上の参戦に等しい。


これが面子を潰された中国によるアメリカへの牽制であればまだマシと言えますが、いずれにせよ憂慮すべき事態です。


表面上はともかく、ロシアと中国が手を組む事は有ってはならない。これはウクライナ戦争だけに限った話では断じて無い。


アメリカは最強国家です。ロシアも(現時点では)中国も敵ではない。しかし、ロシアと中国が一蓮托生でアメリカと闘うことになれば、話は変わってきます。

アメリカは最強ではあっても無敵には程遠く、様々な問題を抱えています。共に何でもアリのならず者国家が手を組み、アメリカの隙を突くなら、直接の戦争などより遥かに危険な事態になりかねない。


中国がどう動くか、どう判断するか、はアメリカがどう動くかによって大きく影響を受ける。

アメリカに責任があるとは言わないが、2014年のクリミア侵攻時にNATOを含め、アメリカが適切に対応していれば、プーチンが今回の戦争を思い止まっていた可能性も無くはない。


アメリカが中国を理解するのは難しい。しかし、中国をどう扱えば良いかは理解できるハズだ。


正直なところ、アメリカもならず者国家と紙一重な所があるが、どうか、ならず者国家の扱いを間違えないで欲しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ