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半導体

半導体


コロナ禍と共に半導体不足がクローズアップされ、随分と時が経ちましたが、未だ完全解消には至っていません。

様々な要因が重なってのことなので、容易く解消とはなりませんが、先は見えてきているので、今しばらくの我慢が必要です。


まぁ、日本で半導体不足と言ってもピンと来ない方が大半かも知れませんが、不足どころか規制を受けているロシアでは深刻です。


ウクライナ侵攻が始まった昨年2月の時点でロシアは規制を食らい、以降、半導体関連の輸入がストップした形となっています。


では、そもそも半導体(セミコンダクタ)とは何か?


まず、導体は電気や熱を通し易い物質の事です。

鉄や銅などの金属は、電気や熱を通し易い導体。

対して、電気を通しにくい物質を絶縁体と言い、ゴムやプラスチックなどがイメージしやすいでしょう(ゴムゴムの実のゴム人間とか)。

意外に思われるかも知れませんが、不純物を含まない完全に純粋な水は絶縁体になります。半導体の代表格であるシリコンも不純物が無ければ絶縁体です。


半導体とは、電気の通し易さが導体と絶縁体の中間くらいの物質、という意味ではなく、特定の条件によりその性質が導体と絶縁体に切り替わる物質の事です。


半導体と聞くとスマホやパソコンのCPU(プロセッサ)を思い浮かべる方も多いかと思いますが、半導体の機能・用途は極めて多岐にわたります。


特定の方向にのみ電流を流すなどの機能を持つダイオードや電荷の状態でオン・オフが切り替わるなどの機能を持つトランジスタ。


ダイオード一つとっても、整流器のパーツ以外に新たな特性・機能・用途の研究・開発が様々な機関で続けられており、電気を光に変換する発光ダイオードの中でも長きにわたり実現困難だった青色発光ダイオードの実用化に成功し、中村修二氏ら日本人3名がノーベル物理学賞を受賞したのは記憶に新し、、、って、もう8年も経つのか、、、

電気を光に変換するダイオードの仕組みを逆に利用すれば、光を受けて起電力に変えるダイオードとなり、光センサーなどに利用されます。


そしてトランジスタです。

元々はレーダーなどの電波を増幅するアンプとして開発されたものでした。

というか現在でもアンプとしての利用も幅広く、耐久性や小型化に難点のある真空管に代わりレーダーやラジオ、ギターアンプなど様々な用途に使用されています(真空管にも利点は有るので、現在でも無くなってはいませんが)。


しかし、何と言ってもオン・オフの切り替えを電気的な「スイッチ」として扱うことにより、電子的計算機、即ち、コンピュータ開発に繋がったことは世界を一変させました。


トランジスタ単体の機能はシンプルです。

導体、即ち電気が流れる状態をオン。絶縁体、即ち電気が流れない状態をオフとして、これを電気的に切り替える。

言ってみれば、機能としては部屋の照明を点けたり消したりするスイッチとなんら違いはありません。

トランジスタの優れた点は機械的動作を必要としないことで、摩耗することなく、瞬時に膨大な回数オン・オフの切り替えが可能となるところにあります。そして、その機能を「露光」即ち、ウエハー上に焼き付けることで極めて極少サイズに作成できるのです。


このスイッチ1個のオン・オフを二進数の1と0になぞらえ(=1bit)、8個のスイッチを一つのセットにすると2^8=256までの数値として扱う(=1byte)ことが出来ます。


余談ですが、私たち世代のオッさんには256という数字は馴染み深いというかニヤッとする数字かと思います。

コンピュータは二進数で処理するため、データなどは2^n個で管理すると都合が良く、特に、1byteは2^2^2^2で色々と使い勝手の良い単位であったことから、文字数の最大値や行(列)数の最大値、コンピュータRPGのレベル最大値や持てるアイテムの最大値であったり、etc、etc、etc、、、と非常に様々な場面で出くわすので、この数字を見ると思わずニヤッとしてしまいます(私だけ?あと十六進数で「すべてがFになる」とか痺れます)。

反対にツイッターの文字数制限が280とか見るとモヤッとします、、、


コンピュータとは、電流のオン・オフで表される二進数の数値を加減算するための装置です。

ディープラーニングの果てに何億手もの先読みを行う将棋AIも、実写と見紛うばかりの美しく精彩なCGも、膨大な計算を積み重ねた結果に他なりません。


この半導体関連の製品・半製品・素材等の規制がロシアに何をもたらすか。


まず、ロシアにおける半導体の生産能力。

ロシアにおいても単体(ディスクリートと言います)のダイオードやトランジスタならソ連時代から有る枯れた技術なので大きな支障なく生産は可能でしょう(青色発光ダイオードとかは厳しい)。


問題は集積回路です。

ロシアで高精度の半導体を生産できるのは、ほぼミクロングループ1社になりますが、ミクロンが生産している半導体のプロセスルールは90nm。

これは、15年くらい前の初代iPhoneで使用されていた半導体と同じプロセスルールになります。

因みに世界トップメーカーである台湾のTSMCが生産している最新の半導体プロセスルールは3nm。


プロセスルールとは、シリコンウエハー上に実装される配線の幅、、、くらいに思っておけばいいでしょう。

実のところ、この配線幅の微細化は行くところまで行っちゃってるので、最新プロセスルールの配線幅が3nmになっているわけではなく、「3nm相当」くらいの意味です。


配線幅が90nmから3nmに変わるとどうなるかと言うと、幅が1/30になるので、面積当たり実装できるトランジスタの数が30*30の900倍になり、トランジスタとトランジスタの間隔も相応に近くなるので、電子のやり取りにかかる時間は短くなり(つまり計算が速くなる)、やり取りに必要な電子の量も少なくなる(つまり省電力)。

まぁ、ここまで来ると理論通りに行くものではありませんが、概ね「そういうもの」くらいに思っておけば良いでしょう。


90nmと3nmの間には9世代くらいの違いがあります。半導体メーカーが最先端のプロセスルールを1世代微細化を進める場合、千億円単位の投資と1年以上の期間を必要とします。

つまり、ミクロンとTSMCの間には、わりかし絶望的な技術力の差があるということです。

そして、半導体生産分野では、技術力は生産能力と密接な関係があります。


ミクロンは半導体生産技術を育成するための国策企業で、輸出なども行っていますが生産能力は限定的です。

さらに、半導体生産にはざっと10の製造工程がありますが各工程で使用される機材は日本を始めとした西側諸国が独占しており、長期保存の効かない薬液やメーカーサポートを必要とします。

90nm世代であればシリコンウエハーや薬液等を西側水準(11N)のものから数段落ちる代替品を使って生産することも可能でしょう。しかし、歩留まりの極端な悪化は避けられず、今後も悪化が徐々に進む事は確実です。


このまま半導体規制が継続した場合、3年後にミクロンが90nm世代の半導体を生産出来るか、は、かなり厳しい。5年後はマズ無理でしょう。まぁ、5年後にロシアが無事でいられるとも思えませんが。


長々と述べてきましたが、現代社会は半導体抜きで成り立たせる事ができません。

では、ロシアがどうするかと言うと誰かに頼るしかない。

半導体に関してロシアが頼れる国は一つしかありません。言うまでもなく中国一択。


その中国も大っぴらにはロシアに半導体を供給できません。半導体生産のキャパシティはロシアなど比較にならない中国ですが、構造的にはロシアと大差ない。

西側のサプライチェーンから締め出されればロシアの二の舞になります。


この構図、どこかで見たことがあるかと思います。北朝鮮です。


ロシアはでっかい北朝鮮になる。と、何度か同じことを言っていますが、半導体分野においては、既にロシアは北朝鮮化しています。

北朝鮮と同じく、しょうもないプライドは人一倍の大国気取りですが、中国の支援なくしては国家が成り立たない。


ロシアと北朝鮮の事実上の同盟関係は象徴的です。

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