ラストリゾート
ラストリゾート
ラストリゾート、エースインザホール、切札、逆転の一撃、乾坤一擲。
まぁ、そういった大博打をプーチンが打とうとしているようです。
ロシアはウクライナ戦争の総司令をスロヴィキンからゲラシモフに変えました。
斬首作戦はスロヴィキンかゲラシモフがやる(やらされる)と思ってはいましたが、ゲラシモフはどちらかというと悪手の方、、、
この局面で総司令に任命されるなど今年一番の貧乏くじであることは間違いない。
報道などでは、スロヴィキンの更迭・ゲラシモフの昇進、国軍閥の復権とする見方もありますが、ロシア宮廷内の動きは複雑怪奇で、期待されたのか押し付けられたのかスケープゴートなのか、おそらく様々な思惑が絡み合った結果でしょう。
少なくともゲラシモフが望んでのこととは思えません。
巷間、キーウ再侵攻とされている軍事活動の予兆について、斬首作戦、即ち、ゼレンスキー政権幹部の確保もしくは殺害。としているのは、現代においては首都制圧の効果が低下していることに理由があります。
情報化が進み、世界中のどこに居ても即時に情報発信が可能となったことにより、例えゼレンスキーらがキーウを追われ、ヤヌコーヴィチ辺りが復権宣言などしようとも、そんなものにウクライナ軍は従いませんし、泥沼の内戦に突入するだけです。
これが開戦当初であればロシアとして何の問題もありません(でした)。
元々、ロシア(プーチン)はウクライナ解体の過程で内戦化を想定していたと考えられ、さらに言えば、プーチンはゼレンスキーなど歯牙にもかけておらず、キーウを追われれば無力化すると認識していたハズです。実例として、ヤヌコーヴィチはキーウを追われて以降、ウクライナに何の影響力も持っていません。
事実上の政治的空白は容易くウクライナ解体を実現させると考えていたでしょう。
しかし、装備や補給物資を消耗した現在のロシア軍ではキーウ制圧を維持することは困難で、内戦化してしまうと親露派武装勢力を支援することもままなりません。
そしてゼレンスキーの情報発信力、ウクライナ国民と軍に対する影響力、そしてロシアに対する抵抗の意思はロシアとプーチンの想定を遥かに超えていました。
ゼレンスキーが停戦の条件として掲げている事項は、いずれも至極当然の内容ですが、プーチンには何一つ呑めるものが有りません。最低限の賠償すらもプーチンにとっては破滅に等しい。
もはや改めて言うのも馬鹿馬鹿しいほどロシアとプーチンにとってゼレンスキーと政権幹部は致命的な存在なのです。
政治的空白と混乱をもらたすには、ゼレンスキーと政権幹部の身柄確保がベストです。
生きたゼレンスキーを確保できれば、一転して巨大な価値を持つ存在に変わります。
まぁ、生きて確保できる可能性など微レ存中の微レ存ですが。
20万の羊の群れで何ができると思っているのか。
泥濘期が終わるまで侵攻ルートは限定され、展開は不可能です。またもや数十kmに及ぶ車列を不様に晒す積もりなのだろうか。
昨年の開戦時、ゼレンスキーがアメリカの警告を深刻に受け止め、ウクライナに応戦準備が出来ていたら、長さ60kmものロシア兵の墓場が出来ていたでしょう。
頼みの綱である特殊部隊も、昨年は航空機ごと空中で爆発四散しています。
総司令となったゲラシモフは官僚型の軍人です。
現在のロシアの軍事ドクトリンを作り、クリミア紛争圧勝の最大の立役者と言っていい。
しかし、それは不可視の戦域を支配する軍事ドクトリンが機能してこその話。
お膳立てが出来ていれば、味方が山賊だろうがヤクザだろうが勝てる話だっただけのこと。
斬首作戦では、20万の羊を榴弾の雨に向かわせ、虎の子の航空戦力と特殊部隊を殺意に満ち万全の迎撃態勢を整えたキーウに突っ込ませる。
少なくとも、この時期、この戦力では、どこを探しても勝ち筋は見当たりません。
これなんて罰ゲーム?
ゲラシモフは官僚型の軍人で、スロヴィキンは頭の良い山賊型(?)の軍人です。
将校から兵卒に至るまで山賊の集団であるロシア軍を率いるなら、スロヴィキンの方が適任でしょう。
総司令の任は、ウクライナ戦争敗戦の責任を取らされる貧乏くじ。スケープゴートにさせられそうなのはスロヴィキンかゲラシモフ辺りだろうとは思っていましたが、山賊どもを率いる適性を考えればスロヴィキンが7、ゲラシモフは3くらいの確率か、と見積もっていました。
今回の戦争では、山賊に加えヤクザに犯罪者まで率いなければならないので、ゲラシモフ向きではありません。
ちなみに、第63部で、斬首作戦について「スロヴィキンやゲラシモフに作戦の決定権があれば中止するだろう」と言いましたが、総司令となってもゲラシモフに決定権はありません。決定権を握っているのはプーチンただ一人だけです。
ゲラシモフはプーチンを翻意させられるでしょうか?
そもそも無理ゲーとプーチンに言えるのだろうか。
無理ゲーと言って理を尽くし、プーチンを説得するのが軍人の在るべき姿です。どれほど言葉と理を尽くしても皇帝が「やれ」と言うなら最終的に従うのも軍人としての仕事でしょう。
しかし、どう転んでもゲラシモフに得なところが欠片もない。
早くも今年の貧乏くじ大賞はゲラシモフに決定。
 




