俺の知ってる情報戦と違う・・・
俺の知ってる情報戦と違う・・・
アメリカ中間選挙は、下院は共和党が勝利していますが、上院の決着が付きません。
上院100議席の内、確定は共和党49・民主党49議席。採決は同数の場合議長が決裁しますので、議長職を押さえている民主党が取ります。
このため、共和党は残る2議席を押さえねば上院で優越できません。
残る2議席の内、1議席は来月の決選投票が確定しており、1議席は集計が遅れています。
アメリカの選挙は、お祭りの様な面もあり、開拓時代と変わらない手続きの州もあります。
このため、票の有効・無効の確認に時間を要する場合もありますし、郵便投票が消印有効か否かでも違ってきます。
何れにしても接戦故に確定がでません。
改選議席の数で言えば、今回の中間選挙で獲得した議席数の得失は共和党が20対13となり、勝利しているとも言えますが、議会で優越していなければ意味がないのです。
最終的に上院で共和党が優越するか否かは未確定ですが、選挙前の大方の予想は「上院・下院共に共和党大勝」でした。
共和党の躍進を阻んだ要因は、トランプへの反発と中絶問題と分析されており、私としても概ね同意します。
トランプ政権はアメリカ人中間層の不満を吸収する形で誕生しました。
金持ちであっても絶妙にエリートらしさが無く(実際、政府の役職に就いた経験は無く、政治エリートではありませんでした)、鼻持ちならないエスタブリッシュメントに対抗するシンボルとして大統領になったのです。
トランプの政治スタイルは、良く言えば「有言実行」になりますが、抵抗するものには味方や部下に対しても、得意の「お前はクビだ!」を連発し、愛想を尽かす政府関係者も後を絶ちませんでした。
当の共和党員すら真に受けてはいなかったマニュフェストを次々に実現させるトランプを「果断」と受け止める支持層が強固であるように、「下品」「粗暴」と顔を顰める層も多いのです。
バックトゥザフューチャーのビフはトランプがモデルだそうですが、正にヤンキーのステレオタイプというのは、映画の扱い通りアメリカにおいてもヒールにカテゴライズされます。
熱狂的鉄板支持層が居れば、激しく嫌悪する者も居るということです。
中絶問題は、、、宗教の問題なんでここでは置いておきましょう(触りたくない)。
本稿で取り上げるのはロシアによる情報戦です。
プリゴジンのハスキー犬ムーブは明らかに利敵行為であり、少なくとも共和党にプラスとなる要素はありません。
なんで情報戦の元締め(の一人)がそんな阿呆な事をするのか。
情報戦だけに秘められた意図が無い、、、とは言いませんが、微レ存でしょう。
選挙の大勢が決したと思い込んで、アメリカをも動かした俺の偉大な功績だと(主にプーチンに)アピールしているのだと考えられます。
ロシアがソ連の時代から言論をツールとしてきた事は第8稿の「プロパガンダ」で触れています。
しかし、それはソ連やロシアが情報戦において知見の集積があるとか巧緻であるという意味ではありません。
ソ連の時代から言論統制という力業でやってきているので、往々にして稚拙であったり、権威的であったりします。
言論統制は現実を無視し、都合の良い虚構を流布する事を強要します。
言論統制の行き着く先が思想統制となり、ダブルシンクを生み出します。
思想統制やダブルシンクは理想と現実が相反する場合でも容易に受け入れる下地となります。
ソ連やロシアでは権力者がシロと言えば黒でも白、クロと言えば白でも黒なのです。
戦争を仕掛けた方が被害者面し、民間人虐殺を無かった事にし、強制連行を避難させたと言い張れば、それが罷り通る世界。
故に、情報戦もトップの意向がそのまま反映され、融通が効かないというか判で押したようなものになりがちです。
日本での実例を見てみましょう。
日本の偉い人や著名人、賢いと一般には考えられる人の中で、散発的に出てくるお決まりの論旨があります。
概ね「戦争は良くない事だが、ロシアにはロシアの正義があり、これを軽んずるのは正しい事ではない。ウクライナにも非がないわけではなく、ウクライナへの支援が戦火を拡大している」といった内容。
ある程度、発信者なりにオブラートに包んではいますが、こういうことを手を変え人を変え、延々と発信させている。
ちゃんちゃら可笑しいわ。
ウクライナ侵攻がロシアの正義(国是)であれば、止めろというだけ無駄であり、是非の問題ではないだろう。しかし、この戦争はプーチン個人のつまらない夢想から出た惨劇に過ぎない。
ウクライナとロシアで失われた生命財産、付け加えるなら世界に混乱を招いた責は、プーチンが負わねばならない。
ロシアメディアではこの期に及んでも「(ヘルソンからの退却について)大統領を責めるべきではない」などと言っているが、いつまでこの幼稚な言論統制を続けるつもりだ。
ロシアの情報戦とは、極論すれば「声の大きい方が勝つ」という思想(あながち間違いでもない)に基づいており、事実より実力、道理より暴力で押し切るものなのです。
日本人が想像する情報戦とは根本的に異なります。




