これ、誰がやったんです?
これ、誰がやったんです?
先日、ちょっと意外な報道がありました。
クリミア大橋での爆発についてです。
ゼレンスキー「俺はやれって言ってねーし」
10月8日に起きたクリミア大橋の爆発は、一部にはロシアの偽旗作戦的な何かである可能性を指摘する声がありましたが、多分ウクライナ系パルチザンによる攻撃だろう、知らんけど。というのが私の認識でした。
しかし、ゼレンスキー発言の報道を受けて、この爆発に当初から感じていた違和感が強くなります。
爆発前後の映像等から、クリミア大橋をロシア側から走行してきた車両が爆発し、近接して走行中の列車に積み込まれた燃料に引火したものと判断されます。
爆発の威力、列車の積荷を知っていたのであれば情報収集能力と起爆タイミングも含め、にわかパルチザンに可能な作戦内容ではない。
そう考えれば特殊部隊を通じてウクライナ側の統制下に置かれたパルチザンによる活動と見るべきですが、クリミア大橋の爆発はウクライナの軍事ドクトリンには絶妙にマッチしないのです。
クリミア大橋は政治的な判断を必要とする戦略目標になっています。最終的に破壊するにしても、攻撃の時期、規模や方法は計算尽くで実行されるハズです。
まず、私はウクライナがクリミア大橋を攻撃するのは早くともヘルソンからロシア軍が撤退して以降と考えていました。ウクライナ軍の作戦の幾つかを見る限り、明らかにウクライナ軍は攻撃に際してロシア軍を隘路に誘導し徹底的に叩く軍事ドクトリンを採用しています。
このドクトリンに則れば、最良の攻撃タイミングはロシア軍が雪崩を打ってクリミア大橋を通り撤退するその時です。
それまでは、クリミア大橋は「心理的に安全と思わせる」ことが肝要。「橋を渡ってる最中に攻撃される」という危機意識が有っても、クリミア大橋を攻撃したらウクライナもタダでは済まない、と考える余地が有れば渡ってしまうでしょう。
故に、10月8日の爆発はヘルソン・クリミアに駐留するロシア軍の撤退を躊躇わせるブレーキともなり、クリミアに追い込んだ際には兵士を窮鼠にもしかねない。
そして規模や方法にも疑問符が付きます。結果を見れば車両橋の片側車線の一部と列車の丸焼き。確かに輸送力の低下は免れませんが中途半端に過ぎます。
作戦目標がクリミア大橋の破壊であれば車両に爆発物とか不確実性が強いし、意志が徹底されていません。脅しや警告であるなら戦略性の欠片も感じられない。
爆発した車両も軍用車両ではなく民間車両の様で、結果として民間人の被害は避けられないとしても最初から民間人爆殺を折り込んでいるのはウクライナやアメリカの作戦として違和感が強い。
これが、乾坤一擲のロシアにトドメをさす最終作戦なら理解できますが、こんな中途半端な規模の攻撃ならもっと効率と確実性の高いスマートな方法が幾らでもあります。
どうにもウクライナのドクトリンからすると採りそうもない、愚策に近いやり方ですが、爆発時の報道でゼレンスキーもウクライナ国民も喜んでるし、ロシアの偽旗作戦とも思えなかったので、まぁ、ウクライナ側がやったのかなぁ?みたいな?感じ?だったのですが、ゼレンスキーの「命令してない」発言で、訳がわからなくなりました。
もちろん。命令しててもしてないと言ってるだけかもしれませんが、じゃあ、これ何のためにやったの?となります。
では、爆発はロシアの偽旗作戦なんじゃねーの?とも言い難い。
偽旗作戦説の根拠は、爆発の前からロシア軍はミサイル攻撃の準備をしていたとするものです。
理屈としては分かりますが、戦争中にミサイルを準備するのは突拍子もない行動ではありませんし、何より、爆発はロシアの面子を大きく損なう事態です。
クリミア大橋は多額の金を掛けたプーチンの誇りであり、クリミア支配の象徴です。メドベージェフはクリミア大橋への攻撃はウクライナ破滅の日とまで脅していました。
それがプーチン君のお誕生日会翌日にボカーン。
これで報復が核兵器使用というなら偽旗作戦の可能性も有ります。
しかし、実際には残り少なくなったミサイルから100発にも満たない数をやっとの思いで発射しただけ、メドベージェフは破滅の日(笑)とからかわれ(真偽不明)、プーチンは「今回はこのくらいにしといたるわ」とチンピラみたいなことを力無く言ってて、これが偽旗作戦なら、プーチン君とメドベージェフ君には羞恥プレイの趣味があるとしか思えません。
逆に、欧州にガスを供給するノルドストリームの破壊はプーチンの指示に基づく可能性が高いと考えています。
破壊目的は主に二つ、欧州のエネルギー政策にダメージを与えること、そしてオリガルヒの牽制です。
ロシアはソ連の時代から、西側に対して「善きエネルギー資源供給者」でした。
冷戦期の険悪な東西関係にあっても、エネルギー資源供給に関しては、露骨に盾に取るような真似はせず、西側と信頼関係を築いて来たのです。
ドイツのメルケル首相による安全保障や危機管理を無視したロシア産ガス一辺倒という明らかに誤ったエネルギー政策が看過されたのも、この信頼関係有っての事。
ソ連は、口では何と言おうと西側の金が必要でした。エネルギーを武器や盾にとる一面が無い訳ではありませんが、西側との信頼関係を損なわないよう慎重だったのです。これは、ロシアとなっても変わりありません。
故に、ロシアは開戦当初からエネルギーを盾にとる場合でも、パイプラインの故障や点検などと理屈を付けていました。
それなら、別に破壊などしないで何とか理屈を付けてガス供給を停止したら良いのでは?と思うかもしれませんが、石油やガスといったエネルギー産業は超巨大利権であり、プーチンであっても100%掌握はできません。
ガスプロムやロスネフチは国有企業ですが、経営や利権にはオリガルヒなどもガッチリ食い込んで、、、いや、まぁ、食い込ませているんですけどね、元ドイツ首相シュレーダーとか国外の要人を利権に噛ませる事もしており、その利権構造は複雑怪奇。
オリガルヒなどにしてみれば、ガスを止められるのは迷惑でしかない。
そういったオリガルヒを黙らせるプーチンらしいやり口であり、或いは、ノルドストリームだけでなく、ノルウェーのバルチックパイプも潰せるんだぞ、という脅しともとれます。
話が横道に逸れましたが、クリミア大橋の爆発は偽旗作戦とも思えないし、ウクライナ側のやり方とも噛み合わない。そうなるとウクライナ側の統制下に無い反抗組織が有力候補になるのですが、、、ロシア側から走行して来た車両が爆発してるのが引っかかるんですよねぇ、う〜〜〜〜〜ん???
これ、誰がやったんです?




