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プーチンの選択肢

プーチンの選択肢


プーチンはもう自分でもどうしていいか分からなくなっている。

そういう状態に見えます。

というか、特別軍事作戦の名目すら忘れてるんじゃなかろか。

苦労して確保したアゾフ大隊も捕虜交換しているし、非ナチ化とか騒いでたのにいいのかよ、、、


いや、まぁ、プーチンが開戦にあたり主張したウクライナ非ナチ化やNATO拡大阻止などのレトリックは最初からまやかしです。

アゾフ大隊をアッサリ解放している事一つとっても真面目に騙してやろうって気概すら感じられません(或いは「アゾフ大隊返すからそろそろ停戦も考えてみない?」というプーチン君の不器用なサインかも知れませんが)。


プーチンは、この局面からどの様な選択肢が取り得るでしょうか。


この戦争を終わらせる(停戦させる)には、将来的リスクと現在のリスクを天秤にかけ、この戦争を続ける被害の方が大きいと認識させる必要が有る、、、とする論が散見されます。

間違っているとまでは言いませんが、正確とも適切とも言えません。

そもそもの前提が違うのです。


腹立たしい事にこの戦争は、始まりからして将来のリスクを回避するためでも現在の脅威を排除するためでもなく、プーチンの自己満足を得るためのものでしかありません。

今や自己満足どころか、この戦争が国家の屋台骨すら揺るがしつつある現状、ロシアにとっての最善手は、クリミアを含めウクライナ領から即時完全撤退する事です。

その上で、ウクライナへの賠償と引き換えに経済制裁を解除させる。

「ロシア」の出血を最小限に止める方法はこれくらいしかありません。

それでもロシア国民は塗炭の苦しみを20年以上はなめることになるでしょう。


ここまで拗れる前なら、エンクロージャーにより自ら国際社会から孤立する手も有ったのですが、最近の国際会議の場で旧共産圏、中国、インドからも距離を置かれている状況が判ってきました。

エンクロージャーと言っても中印などの援護、旧共産圏の協力が無ければ立ち行きません。

現在の孤立無援に近いロシアがエンクロージャーに踏み切ると5年から8年ほどで色々な面が行き詰まり、その後は中国などに良い様に刈り取られる草刈り場と化すでしょう。

ある意味、日本に北方領土が帰ってくる可能性は、このパターンが一番高い様に思いますが、極東と中央アジアの政情がカオスになるのでやめて欲しい。


ロシアがこの「戦争」に勝つ方法はたった一つ。

アメリカに手を引かせる事です。

ロシアの新たな戦略が、ウクライナの電力系インフラを破壊し、冬が来れば凍えて降伏するだろうなんてものなら、馬鹿も大概にしとけってレベル。


結局のところ、戦争が続いているのは、誰も「ロシア」の事など頭に無く、保身と面子、自身の利益しか考えていないからです。


メドベージェフなどは、クリミア大橋に手を掛けたなら、それがウクライナ破滅の日だと息巻いていましたが、破滅をもたらす報復攻撃はミサイル不足で100発も飛ばす事ができず、しかも半数は迎撃されました。

死者の多寡で効果を示すなど愚劣な行為ですが、1千億円相当の貴重なミサイルを使って数十名の民間人を殺害しただけ。

それでいて「今回はこのくらいにしといたるわ」とかプーチン自ら言っちゃうんだからマフィアのボスどころかチンピラの捨て台詞かって話です。

そこまでしなければ体面を保てない事が落ちぶれた独裁者の状態を物語っています。


プーチンがロシア帝国皇帝の座に在るのは、必ずしも「恐怖との同化」によるものだけではありません。

若き開明的指導者という噴飯ものの虚像から始まった数々のラシアンファンタジーを、曲がりなりにもロシア国民が受け入れてきたからです。


ソ連の崩壊はロシア人に自由をもたらすと同時に尊厳の消失でもありました。

ソ連は世界を二分する一方の雄であり、いずれ資本主義によって堕落した世界を統一する理想社会。自分達はその栄えある一員、、、、、、のハズだった。

しかし、ソ連の崩壊によりロシア人が目の当たりしたものは、資本主義より堕落した共産党であり、西側諸国より不自由で貧しい自分達であり、超大国アメリカとの国力の差でした。


ロシア人のプライドは砕かれたというより最初から無かったかのように消失しました。

そこに現れたプーチンは(自作自演で)鮮やかにテロ事件を解決し、(石油価格の上昇で)経済を立て直して、(メディア操作により)偉大なロシアを再興した(ように見せた)のです。

ロシア人がプーチンを支持する姿は、ヒトラーが第一次世界大戦敗戦後のドイツを掌握した時のようでもあり、詐欺の被害者は何度でも詐欺に引っ掛かるという実例のようでもあります。


それゆえに、偉大なロシア帝国がウクライナなどという旧ソ連の一地方(少なくともプーチンはウクライナを正当な国家と認めていません)に負ける事は、ラシアンファンタジーの終焉と同義。


プーチンは勝利して得た肉を切り分けるのは得意でも、自分がひっくり返したテーブルは片付けられない。

敗戦は時間の問題だというのに、覚悟が決まらないのです。


もはや優勢の明らかなウクライナが停戦する理由はありません。

ウクライナで積み上がった怒りと憎悪のツケは間違いなくロシアを破滅させる域に達しています。


この状況下、プーチンの選択肢は「一旦退場」、おそらくは亡命しかなく、覚悟が決まらないから悪あがきをズルズルと続けているのでしょう。

或いは、覚悟を決めて準備をしているのかも知れません(妄想)。


ここで一旦の退場としたのは、プーチンが権力の座を諦める理由が無いからです。

毛沢東は大躍進政策の失政により5000万人とも言われる餓死者を出し失脚するも、その後、紅衛兵を使い文化大革命を起こして復権し、終生権力を保持し続けました。


退場した後、プーチンがもう一度復権できるかは分かりません。しかし、このままで3年後に権力を維持できている可能性に賭けるよりは、はるかにマシな状態です。

チェチェンのカディロフやスロヴィキンの登用、ウクライナ4州併合は、亡命と復権を見越した事前工作の一環ではないか、とも考えられます。


亡命先はおそらくシリアでしょう。

北朝鮮やイランの可能性もありますが、両国とも文化が違いすぎるし、北朝鮮は貧乏だし、で亡命生活が楽しめません。


プーチンに必要なのは亡命の決断とウクライナの混乱です。

亡命にウクライナは関係ないと思われるかもしれませんが、戦後交渉や戦犯追及の回避、亡命からの復権、いずれにおいてもゼレンスキー政権が少なからず邪魔となるのは間違いない。


カディロフとスロヴィキンという汚れ役の登用、そしてベラルーシに集められた部隊。

取り越し苦労の可能性も高いのですが、この二つを軽視するとクリティカルな事態に陥る懸念があります。

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