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電子

電子


不可視の戦域について、本稿では電子戦における攻防について述べていきます。


電子、としていますが電波を利用する領域での攻防になります。

電波は光と同じく電磁波の一種で、その用途は多岐にわたりますが、本稿では通信と探知に絞ります。


どのように強力な装備でも情報が無ければ無力です。というより、現代の「強力な装備」とは「情報を最大限に活用できる装備」と言い換えても良いでしょう。

ハイマースの射程は約80km(厳密に言えばハイマースに搭載されるロケット弾の射程距離)ですが、目標の位置「情報」が無ければ100m先の目標すら撃破は覚束ないでしょう。しかし、ひとたび位置情報を得られたなら、80km圏内の目標を誤差2〜3mの範囲内で補足することができます。

このハイマースが目標を補足するにあたり活用する情報は発射時に諸元入力される位置情報だけではありません。飛翔するロケット弾はGPS衛星と「通信」し「探知」を行うことにより、自らの位置情報を得る(これは車や携帯電話がGPS位置情報を取得するのと基本は同じです)ことで目標に弾体を誘導できるのです。


このように現代装備の諸活動を支えているのが電子(電波)の領域です。

ハイマースは一例に過ぎませんが、GPS衛星の活用に留まらず、前提となる目標の位置情報を得る時点で、既に電子戦が大きく関わっています。

位置情報を得るため、通信の傍受、発信位置の探知、ラジオコントロール・ドローン等による捜索、確認した位置情報の伝達などを行なっており、それに対抗するためのECM(電子妨害)に始まり、欺瞞、暗号・圧縮化、物理的な破壊などなど、更にそれらに対抗するECCM(対電子妨害)などなどなど。と、まぁ、終わらないイタチごっこが電子の領域において繰り広げられているのです。


電子戦装備は機密性が高く同盟国に対しても技術の詳細はブラックボックス状態です。この領域においても、クリミア侵攻時はウクライナがロシア製通信機やレーダー等を使用していたことから、ロシア側が圧倒しています。

当然でしょう。どれほど通信を暗号化しようとも、復号のシステムをロシアが握っていれば、通信内容は全て筒抜けとなり、いざとなれば通信そのものを妨害できる。レーダーは位置を暴露され、破壊される。などなど。

サイバー・電子の両戦域で完敗したウクライナ軍は情報を分断・攪乱・消去され、勝ち目など最初から有りませんでした。


しかし、ウクライナ侵攻では立場が完全に逆転しています。

現在、ウクライナが使用している秘匿性の高い通信機はアメリカ製に置き換わっていると考えられます。この機器は音声等の情報を暗号・圧縮化し、極めて短時間電波を発信します。これにより傍受を防ぎ、ECMに対しても一定程度対抗できます。

これに対して、ロシア軍は通信機の多くが電子戦の影響を受けて使用困難となっています。このため一部では民生用通信機、即ち私用携帯電話で通信しているとされ、ウクライナ軍に通信を傍受される側に回ってしまいました。

本来なら、ロシア軍にも一定のECM耐性を有する通信機が相当数配備されているハズです。

それがこの体たらくを晒しているという事は、ロシア軍の悪い癖、即ち着服や横流しが起きているのでしょう。身から出た錆ですね。


電子戦は機器が有ってスイッチをオンにすれば終わる戦いではありません。状況によっては電子戦部隊は沈黙し、潜伏して敵陣に接近する場合もあり、ECM等を常に稼働させるのではなく、使い所を戦術に組み込まなければ効果は半減どころか脅威度の高い目標として袋叩きにされかねません。

この実戦ノウハウも機器と共にNATO(アメリカ)から供与されたものでしょう。

不可能の戦域は表面化する戦果は極一部ですが、その努力は結実しており、ウクライナに大きく貢献しています。




去る9月8日、エリザベス2世女王陛下が崩御されました。

第二次世界大戦を経験し、英国・英連邦の国民と共に歩まれた在位70年に及ぶ生涯の貢献、伝統と開明的進取のバランスに優れた近代王室・王族の範とも言うべき存在でした。

英国王室、国民らの悲嘆如何ばかりと思います。

謹んでご冥福をお祈りいたします。

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