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総動員令ありやなしや

総動員令ありやなしや


8月24日でウクライナ侵攻から半年になりますが、この数日で南部とクリミアの趨勢は決まったように見受けられます。


まず、ロシア軍は南部において補給線を立て直す力を失っています。南部防衛のために兵士を集めたのも補給ができない状況下では足枷となり、前線の瓦解を早める要因にもなりかねません。


なにより、国際社会の反応がウクライナのクリミア奪還を肯定的に見ているのが大きい。

一ヶ月ほど前は、2月24日の侵攻前の状態を停戦ラインと見る向きが多く、ゼレンスキーもクリミアは戦後交渉の過程で取り戻す意向を示していました。

国際社会としても、ウクライナには早期に「欧州のパンかご」に戻ってもらいたい訳で、8年間ロシアの実効支配下にあったクリミア奪還という無理はして欲しくないのが本音だったと思われます。

それが急速にクリミア奪還に舵が切られ、国際社会のコンセンサスが形成されつつあります。


セバストポリ軍港を擁し、アゾフ海の「蓋」でもあるクリミアは軍事的にも重要ですが、それ以上にロシアに言わせると自国領なのです。奪還されればその衝撃は計り知れません。

現実的には、ヘルソン州奪還すらできておらず、捕らぬ狸の皮算用にすぎませんが、ロシア側の兵站が崩れると一気にクリミアまで浸透する可能性があります(そのためにはウクライナ側も相当数の兵士を増員する必要はありますが)。


ロシア軍もそんな事は分かりきっているので、何としても補給線を繋ぎ、ヘルソンの後詰めをクリミアに置きたいところでしょうが、本気でやるのであれば、十万人近いマンパワーが必要で、現状のロシアにはその余力が無い。


このままでは兵站から崩れる事は避けられません。ここはプーチンがリスクをとって総動員令を発するのでは?との考えもあります。

ロシア国内の状況を見る限り、ジリ貧のプーチンが勝てないまでも粘るには、戦時体制への移行が必要であることは明らかですが、私は、やはり総動員令は出ない、と見ています。


総動員令が出ればロシア国内の混乱は避けられない。戦時体制に移行するには、国内の混乱を力技で抑えこむ大統領権限の大幅な拡大や公職選挙の停止などなど多くの法的整備を行い、エンクロージャーを同時に押し進める必要があります。

それが政権内部の抵抗により実現できない状況なのではないかと考えています。

エンクロージャーにより北朝鮮化すれば、極一部のエリートの利権・権力は固定化され安泰ですが、経済が大幅にスクィーズされるため、これまでと同じ数のエリートやオリガルヒは養えません。

オリガルヒの多くは利権を奪われる事が確実で(昨今話題となっているオリガルヒの連続不審死には政権による事前『整理』もあるのでは?と思ったり)、相当な抵抗が起きるのは当然かと思います。

5月9日のロシア対独戦勝記念日、プーチンが戦争宣言しなかったのも、イギリス国防相のリークにより反発が起き、事前に潰されたのではないかとも思います。

この辺の情報は一切オープンになっていないので、妄想に近い話なのですが、私が総動員令が出ない方にベットするのは、ペロシ訪台がアメリカのインテリジェンスに基づく判断と考えているからです。


エンクロージャーは権力者の国内での専横と自由を約束しますが、国外でのプレゼンスが極端に低下します。国連常任理事国の立場も危ういでしょう。ロシアには味方する国も多いですが力がありません。どうしても中国の協力が必要です。


アメリカはロシアの力を削ぐために中露協力を掣肘する必要があり、事実、これまで中国に様々な譲歩をしてきました。

しかし、ペロシ訪台は全てをひっくり返すものです。

第28部でも述べましたが、米下院議長の訪台は2度目です。

1度目の1997年、中国は現在の1/10の国力もありませんでした。唯一の超大国アメリカに対し何も言えない屈辱と怒りを完璧に隠して、やり過ごすしかなかったのです。

そしてペロシ訪台、中国は上から下まで「25年経ってもアメリカの下院議長一人抑える事もできないのか!」と、その怒りは日本人には想像すらできないレベルでしょう。

ペロシ訪台は下院議長の独断ではあり得ません。安全上必要ではありましたが、米軍がこれ見よがしにペロシ氏搭乗機をエスコートしているのですから、中国にしてみればアメリカの挑発に等しい。


これはウクライナ侵攻が長期化する認識であればあり得ない行為です。中国は巨大な国家で完全な統制はできません。一部の跳ねっ返りが暴発すれば台湾海峡はアウトオブコントロールな事態に陥りかねない。

アメリカの戦略として中露が連携して台湾とウクライナで戦争する事態は最悪中の最悪。例え対中強硬派のペロシ氏であっても、自重せざるを得ないところであり、事実、4月に予定されていた訪台は延期しています。


ロシア政権内部を直接確認することは出来ませんが、周辺で生じている事象を統合すれば、その一端を窺い知る事は可能です。

ロシア軍の窮状、戦時経済体制の法制化といった要素はありますが、ペロシ訪台やクリミア攻撃の容認などアメリカの動きは明確で、何らかの事実に基づきウクライナ侵攻が長く続くことは無いと確信しています。


即ち、戦争長期化に繋がる総動員令発令は無い。

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