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グリーンベレー

グリーンベレー


8月9日以降、ロシア支配下にあるクリミア半島サキ航空基地を始め、ベラルーシのジャブロフカ飛行場などで爆発が起きています。


例によってロシア当局などは事故と表明しており、攻撃による被害である事を否定しています。

ウクライナ側も関与を明確にしておらず、爆発の原因は明らかになっていません。


では、ロシア側の言うように事故かと言われれば、明らかにNOです。

爆発後の被害状況を衛星写真で確認する限り、少なくともサキ航空基地の爆発は、分散駐機している航空機を破壊する意図が明確に見てとれます。弾薬庫等の火災といった偶発的事故であれば、被害の端緒となる施設を中心に被害は広がり、距離に応じて減衰しますが、被害は航空機を中心に各個撃破に近い形で生じています。

一方、ベラルーシのジャブロフカ飛行場は被害状況がサキ航空基地と異なるようにも見受けられます。爆発が断続的に複数回確認されていることから、ベラルーシ当局の火災とする説明と異なっている事は確かですが、衛星写真で見る限りクリティカルな被害が確認できず、破壊活動としては目的が不明瞭です。

現時点における推測ですが、同飛行場をロシアに使用させているベラルーシに対する牽制・警告的な意味合いの攻撃ではないかと思われます。


サキ航空基地の爆発は、当初から原因が注目されていました。

長距離ミサイルによる攻撃、射程300kmに及ぶロケット砲によるものなどなど(誰も事故とか思っちゃいねえ)。この爆発が注目を集めた理由は被害の大小ではなく、前線から数百km離れたクリミア半島で起きたことにあります。

これまでも述べてきたようにウクライナに装備を供給しているアメリカは射程数百kmに及ぶミサイル等の供与は避け、ロシア領への直接攻撃はしないようウクライナに求めていました。

このため、ロシアによる南部侵攻の大動脈でありながら、クリミア半島はこれまで直接攻撃を受ける事がありませんでした。

この爆発はどうやって?クリミア半島はウクライナ領であってもロシアが8年間も支配しており、ミサイル攻撃であればアメリカはこれを容認したのか?

だとすれば大きな転機であるのは間違いありません。ロシアとクリミア半島を繋ぐクリミア大橋への攻撃も現実味を帯びてきます。

世界中のウクライナウォッチャーが注目するのも当然ですが、おそらくミサイル等の飛翔体による攻撃ではないでしょう。

根拠は幾つかありますが、やはり、衛星写真から見て取れる「爆発は単発ではなく、個別に航空機が破壊されている」状況にあります。

確かに航空機は貴重な装備ですが、数百kmの射程を持つミサイル等で各個撃破するのは効率が悪すぎますし、そもそも現時点で供与が確認されている装備の中にそれを可能にするものがありません。


では、この爆発は何なのか。


結論から言うと、爆発当初よりミサイルなどと並び可能性が言及されていた存在、パルチザンによるものと考えられます。


パルチザン、即ち、ロシア支配に対する反抗組織です。クリミア半島は歴史的にも非常にややこしい経緯を辿っており、ロシア人・ウクライナ人以外にもタタール人など少数民族も住んでいました。

2014年のクリミア紛争後、ロシア支配下となったクリミア半島ですが、一部のウクライナ人やタタール人などは住み続けています。

これらの非ロシア系住人の一部が、一般市民として生活しながら、反抗組織として秘密裏に活動していると思われます。


パルチザンは言うまでもなく非正規組織です。ウクライナ軍とは別組織で、その活動目的もウクライナと完全に一致しているとは限りません。


では、今回の爆発はパルチザンによる単独活動でウクライナやアメリカの意向とは直接の関係はないかと問われれば、これも明らかにNOです。


クリミアのパルチザンがどれほどの規模、活動範囲、装備や練度を持っているか、その実態は全く分かりません。それでも間違いなく断言できるのは、航空基地一つを短時間の裡にほぼ壊滅させた実行能力は尋常ではない、という事。

サキ航空基地が前線から遠く離れ、比較的警戒が緩かったとしても、一般市民はおろか、軍の正規部隊でも容易な事ではありません。


こういった作戦を成功させる不可欠のピースがアメリカに存在しています。

アメリカ陸軍特殊部隊、所謂グリーンベレーです。


グリーンベレーはイギリスのSASと並び、世界で最も著名な特殊部隊と言えるでしょう。

ウクライナ侵攻に際し、SASはゼレンスキー大統領の警護などで存在感を示しましたが、グリーンベレーは余り表立った活動をしているようには見えません。

しかし、それは、この戦争でグリーンベレーの関与が僅かという事ではありません。グリーンベレーの主任務は、アメリカにとって好ましからぬ国家の支配下にある現地市民などを反抗組織として糾合する。正しくパルチザンやレジスタンス、ゲリラの組織化と訓練にあるからです。

ある意味、アメリカ軍の裏面を象徴する存在がグリーンベレーであり、クリミア半島ロシア実効支配の状況に介入する最適の部隊と言えます。

おそらく、2014年のクリミア併合以降、グリーンベレーは継続的にクリミア半島へ介入しており、今回の爆発はその最終局面なのでしょう。


クリミアはロシア人にとって要衝である以上に憧れの避暑地でもあります。ウクライナ侵攻の最中にあっても「クリミアは安全」と暢気に観光と避暑を楽しむロシア人は居たようです。

しかし、ロシア人がウクライナ侵攻を他人事のように眺めていられたのもここまでの様です。


サキ航空基地の爆発はグリーンベレーの介入、即ち、アメリカの容認の下、ウクライナがクリミアを奪還するまで続く事を示しています。

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