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宗教問題

宗教問題


先にお断りしますが、以下に述べる内容は教派などの表記が正確ではありません。かつ、宗教の問題は国際政治以上にややこしいものを含む世界なので、極めてディフォルメされた大雑把な記述になっています。


プーチンは、ウクライナ政府がロシア正教の教えを破壊しようとしている。と主張しています。


正教(会)について簡単に説明すると、正教会はキリスト教の教派の一つです。

正教会を東方正教会、カトリックを西方教会と呼称する場合もあります。

日本ではカトリックやプロテスタントといった教派ほど一般的ではないかもしれませんが、正教会全体で世界に信徒数3億人を擁する教派であり、正教の一つであるロシア正教が一時期、旧ロシア帝国の国教であったことから、ゴルバチョフ以後、信教が認められた現ロシアにおいても最大(国教ではありません)の宗教組織となっています。


私個人としては宗教問題に関わりたくないので、

プーチンに、

ウクライナの信教はウクライナの主権以前の問題で他国の大統領が首を突っ込むことじゃない!

というかロシア正教とか貴様の走狗だろ!

何が悪だゲエンナに墜ちろ虐殺者!

ソビエト時代には宗教を散々弾圧してきたKGB上がりが笑わせんな!

と、ウクライナ人が言いたいであろう事の一部を代弁するに留めたいのですが、そうもいかないので、幾つか解説を兼ねて反論していきます。


まず、正教会という教派の組織的な特徴として、一つの国(或いは地域)に一つ正教会(という組織。単一の建物の意味で使われる教会とは異なる)が置かれます(日本にも日本正教会があります)。

各正教会のトップは総主教で、総主教間は正教会規模の大小、歴史の長短に関わらず(少なくとも表向きは)対等とされ、唯一、コンスタンティノープル総主教が全地総主教と呼ばれる「第一人者」になりますが、それも敬意を払われる名誉職的な立場に過ぎません。

世界的規模のキリスト教教派ですが、「正教会」教派としてのトップが存在しないことが、教皇を頂点とするカトリックとは異なる点としてあります。


ウクライナには、ロシアからの独立後にウクライナ正教会が誕生しましたが、同時にロシア正教も存在(存続)しており、対立していました。

本来なら独立国家には独立した正教会が置かれるものであるため、ロシア正教会はウクライナ正教会の独立を粛々と認めるべきところ、現在に至るまでロシア正教会としては承認していません。


これが宗教的理由なのか政治的理由なのか微妙なところですが、少なくともプーチンの政権掌握以後は、その意向を汲んでの判断であると考えられます。

ちなみに、2009年にロシア正教の総主教座に着座した現総主教キリル1世はプーチンの盟友だそうです。まぁ、盟友とはプーチンに都合の良い人物という意味でしかありませんけどね。


ウクライナとしても、信教的な意味で、従来から存在していたロシア正教は排除し難いものだったと思います。

しかし、2014年にロシアによるクリミア半島侵攻・併合が起きるとロシアへの反発が強まり、宗教においても市民レベルでウクライナ正教会独立の機運が高まりましたが、ロシア正教は承認する気配を見せませんでした。


ここで動いたのがコンスタンティノープル正教会です。

「ロシアがウクライナにおける信徒の苦しみの原因となっている」

として賛同する正教会を取りまとめ、2019年にウクライナ正教会独立を承認したのです。


ロシア正教会はこれに反発し、コンスタンティノープル正教会ほか独立に賛同した正教会と断交しています。

実はロシア正教会による断交はこれが初めてではありません。エストニアがロシアから独立した際のエストニア正教会独立にあたっても同じような経緯で3ヶ月ほど断交しました。

現在の断交は2019年から継続しており3年に及びます。


この長期にわたる断交がこの後どの様に展開するかは分かりません(個人的にはどーでもいい)。単に独立承認に対する報復であれば、時期はともかく断交は解消されるでしょう。しかし、これが宗教的理由(神学的相違とは別の次元、宗教組織内における政治的力学の話です)だった場合は正教会の分裂に繋がるかも知れません。


というのも、ロシア正教会は正教会の中でも最大の組織です。信徒数3千万人とも言われるウクライナ正教会が合わさると正教会全体の信徒数の半数を超えます。

総主教間に序列が無く、信徒数は総主教の権威と無関係、

なんてのは最大の信徒数を擁しながら信徒数で遥かに格下(なんて考えてるんじゃないかと邪推)なコンスタンティノープル総主教の風下に立たされている(と感じている)ロシア正教会の生臭坊主(おっと失礼)には不満でしょう。


宗教問題は話が脱線し易いので戻しますが、プーチンの主張するロシア正教を破壊とはどういうことか。

ウクライナにはウクライナ正教会独立後も独立を認めないロシア正教会が残っています。

このロシア正教会の聖職者が迫害されているとの主張です。


確かに、民間人による聖職者追放があったのは事実のようですが、同じ正教会でありながら断交と称してウクライナ正教会らの活動を受け入れず、例え会が異なっても等しく敬せられるべきウクライナ側の聖職者(コンスタンティノープル総主教らを含む)に侮辱行為に等しい扱いをするなどロシア正教側こそ批難される立場のはずです。

なにより、ウクライナ正教会独立後もウクライナで活動しているロシア正教会の聖職者など事実上ロシア政府の工作員に等しいのです。


これは、残念ながら陰謀論めいた話ではなく、ロシア正教聖職者はソビエト時代からKGBなどに協力していた経緯があり、ウクライナはもとよりロシア市民からも不審の目で見られる存在だという事です。

事実として、今回のウクライナ戦争に対するロシア正教の立場はプーチンとロシア政府を追認するものであり、世界の宗教界からの停戦を求める信書への返信は、ウクライナと西側に非があるとする内容で、ウクライナ市民の生命に対する配慮や慈悲など欠片も感じられないものでした。


彼らが聖職者?ちゃんちゃら可笑しいんですが。

着ているのがリヤサなだけでロシア政府のスポークスマンじゃないですか。


あぁ、もう一つロシア正教がウクライナを悪と言ってる事項がありましたね。

ウクライナはLGBTに寛容なので正教にとって悪なんだそうです。

まぁ、宗教界としてLGBTが認められないのはロシア正教に限ったことではないんで、これだけを見ればロシア正教を責めるのもアレかと思います。

所詮は言い訳の一つですけどね。

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