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安心してください、効いてますよ。

安心してください、効いてますよ。


のっけから不安にさせたかも知れませんが、経済制裁について投稿します。


前稿では、一国の経済を湖に例えました。

河川による流入と流出が他国との貿易にあたり、降雨と蒸発が自国内の生産と消費にあたります。


経済制裁は、流れ込む河川を堰き止めることにより、湖を干上がらせようとする行為ですが、当然ながら流出もストップするので、本来はプラスマイナスゼロのニュートラルな行為です。

ロシアの様に貿易黒字の大きな国でなければ、直接的には干上がることがありませんし、そのロシアすら最大の収益源である石油・ガスを止める事が出来ず、逆に貿易黒字が急拡大している状態。←今ここ


駄目じゃん!とお嘆きの貴方、安心してください、効いてますよ。


河川が運ぶのは真水ではなく、様々な栄養素を含んでいるからこそ、湖を豊かにします。

お金(真水)が流入しても、それに伴う栄養素(物資)が少なければ、栄養素が薄まりインフレーションが起きます。

このため、5月までロシアのインフレは高い水準にありましたが、6月以降はインフレ圧力が低下するでしょう。

これは、6月以降、徐々に経済制裁の影響が表面化するためです。


ウクライナ侵攻により、多くの欧米企業がロシアから撤退しました。象徴的な事例としてはマクドナルドが挙げられるでしょう。

実は、ロシアでは、撤退しても三ヶ月間は従前と同じ給与を支払う義務が企業にはあります。このため、ロシア国民の中には、働かずとも三ヶ月給与が支払われるし、一ヶ月もすればウクライナ侵攻も終わって、欧米企業もまた戻って来る。と楽観的に考えていた人々が一定数居たと思われます。

しかし、例えウクライナ侵攻が即時終結したとしても、欧米企業が戻ることはありませんし、雇われていたロシア国民は直接的な人数だけで数十万人、間接的には百万人に及ぶと考えられ、これらの失業者をロシア企業がカバーしきることは出来ません。

そして、欧米企業に雇用されていたのは、比較的高収入な都市部の住人が多く、ロシア経済に与える影響は、今後さらに拡大するでしょう。


この様な、湖の例えで言えば、降雨の減少に相当する要因が重なって、一旦インフレ圧力は低下します。

しかし、長くは続かないでしょう。ロシアの生命線、石油収入が減少するからです。


欧州各国は安いロシア産の石油・ガスに依存して経済を回してきました。その利益を最大限に享受してきたのがEUの勝ち組ドイツです。

ロシア産ガスが無ければ経済はおろか、冬には国民が凍死しかねない。そのドイツをしてロシアとの訣別を決断するに至りました。

まぁ、資源を楯に取られるリスクを無視した従前の政策が明らかに間違っていたのですが、今後は段階的にロシアからの買い付けが減少し、大っぴらにロシアから石油を買い付ける国はインドくらいになります。


インドは、、、掣肘する事は現状不可能です。中国を意識した時、アメリカであってもインドを自陣営に留めて置かねば戦略が成り立ちません。それを充分理解しているインドはロシアとの関係も優位に進められます。この戦争最大の勝者は間違いなくインドになります。

インドは、安いロシア産石油をさらに安価に調達し、莫大な利益を得るでしょう。戦争が終わった後もロシアへのプレゼンスは高まる一方になり、中国との力関係にも有利に働くことは確実です。


そのインドに頭が上がらなくなるほど助けられたとしても、欧州から得られた資金の穴は埋められません。そもそも、石油価格が買い叩かれているに等しい。


これまでも述べてきた様に、ロシア経済は石油価格次第です。現在の貿易黒字は未だ欧州から石油・ガスの代金が入っているのと同時に、経済制裁により貿易支出が抑えられているだけであり、石油価格は現時点においても、危険水域にあります。


今後、ロシア産石油の需要・価格は下降するのみで、上昇する要因は見当たりません。

ロシアという湖に流れ込む石油輸出対価という大河は、湖を潤す水量を確保できなくなります。


さらに、流入を堰き止められるのは真水だけではなく、栄養素、特に重要なのが半導体です。

半導体は、工場を一つ作れば生産出来る類いの物資ではありません。資源大国であり、大抵のものは自国でなんとかなるロシアですが、半導体ばかりは自国内で半導体需要を賄う事は不可能です(まぁ、自国内だけで半導体需要を賄える国家は存在しませんが)。

軍需物資に転用可能な半導体は幅が広く、制裁は民生用品にまで影響が及びます。


真水も栄養素も制裁で完全に堰き止める事はできず、抜け穴から溢れ落ちる量も相当なものとなるでしょうが、それだけでは湖は保ちません。


ロシアは、ソ連崩壊時以上の経済的惨事に見舞われます。

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