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プーチン「損耗率30%? 関係ない 行け」

プーチン「損耗率30%? 関係ない 行け」


軍事関係では可笑しな数字が神話のように語り継がれることがあります。

今回のウクライナ侵攻でも「ロシア軍の陸上部隊は既に30%以上の損害を出しており、これは事実上の作戦継続不能・撤退ラインを超えている」といった趣旨の報道・解説が散見されました。

戦争では30%の被害が発生すると軍を維持できなくなり、全滅と判断される。という論拠です。


これは、嘘ではないが正確でも適当でもない話で、継戦能力を適切に表していません。

どうも、この30%という数字が一人歩きしているように感じるので、ブレイクダウンします。


まず、損害率30%で全滅判定とするのは、部隊単位の機能を維持できなくなる機能的推計と、実際の戦争において軍がその目的を果たせなくなる被害を、経験的に推計した統計上の数字の二つに区分して考えなくてはなりません。


部隊という単位で見れば、30%の損害は、課せられた任務を果たす機能の喪失を意味します。演習なら、その部隊は全滅と判定され、実戦でも少なくとも米軍なら撤退します。

しかし、軍という単位で見れば、話は全く違ってきます。

そもそも、戦争は大なり小なり非対称戦です。同程度の戦力が真正面から撃ち合うなど稀なこと。

劣勢側なら10%の損害でも形勢を覆すことは困難になり、壊乱状態から敗北するでしょう。

逆に、優勢側なら、劣勢側の勇戦により半数の損害を受けても、残る半数が劣勢側を撃破する可能性が充分にあります。

つまるところ、軍の撤退ラインなどはケースバイケースとしか言いようがありません。


このへんは、知識として持ち合わせていなくとも、なんとなく感覚的に想像・理解できるのではないでしょうか。

機能的推計と経験的推計は、適用範囲からして異なっており、個人的には、混同する方が難しいと思うのですが、メディアとかは、敢えてミスリードしたりするので注意が必要です。


確かに損害率30%超えは、ロシア軍にとっても激痛です。しかし、おそらくウクライナ軍にもほぼ同様の損害が発生していると推測されます。

プーチンは、このウクライナ軍の痛みを拡大する事で、ウクライナ側の譲歩に繋げたい考えなのでしょうが、余り上手くいっておらず、逆にロシア軍の損害が拡大しています。


一ヵ月ほど前の戦闘では、ロシア軍の渡河作戦失敗の映像が公開され、大隊規模、一千名が全滅とされています。

古来、渡河作戦は損害が大きく、特に橋梁部はキルゾーンとなる格好の条件、死地です。そんなことは基本以前の問題で、そんなとこに無策で(いや、まぁ、無策では無かったと思いますが、結果を見れば無策と言われても仕方ないでしょう)大隊戦力を投入して全滅とは、百年前の軍隊も驚きです。


通常、実戦では、全滅と言っても潰走状態で半数以上は逃げ帰るものです。よって、一定以上の損害を与えれば、経験的推計からも「全滅判定」となるのですが、報道された画像から見て撃破された車両が数十両、画像では確認できない車両を含めると百両近い撃破数となっていても不思議ではありません。加えて、架橋任務を負った工兵、随伴する歩兵を考慮すると、一千名の損害というのも、むしろ甘い見積りのように思います。


ここまでの損害が発生した要因は、渡河地点がウクライナ側にダダ漏れの状態だったとしか考えられません。仮設や渡河の状況がリアルタイムで伝達され、最適なタイミングで仮設橋を攻撃、分断したところに榴弾の雨を一方的に叩き込んだものと思われます。

まさにキルゾーンといった状況で、戦闘開始以降、ロシア軍になす術は無かったでしょう。


この戦闘については、ウクライナ軍の戦巧者ぶりを称えるべきなのかも知れませんが、2月24日のウクライナ侵攻以来、ロシア軍の拙劣さを示す事例が多すぎます。


ロシアの前身は言うまでもなくソ連です。スターリンの時代には、最大で一千万人を超える軍隊を保有していました。その後、人員を減らしますが、それでも五百万人超、現ロシア軍の五倍以上になります。

現在のロシア軍を指揮するのは、そのソ連の軍事ドクトリンを産湯として生まれた最後の世代です。


どんなドクトリンか分かり易く言えば

「数は最も基本的な『質』である」

「一人殺すために三人殺されても四人目が残っていれば良い」

、、、まぁ、こんな感じのアレが延々とそんな感じ(全く分かり易く無い)。


この話をした時に「(ソ連軍トップなら)馬鹿でも出来そう」とのたまう輩がいましたが、馬鹿でも出来る。ではなく、正気では出来ない。です。


敵軍兵、敵国民間人はおろか、自軍兵、自国民間人の生命すら、紙切れのように焼き払えなければソ連軍将校など務まらない。


ロシア軍は、5分の1以下に削減された人員にアジャストするため、大規模な軍制改革を実施していますが、それを実際に運用する高級将校の意識が変わっていないのだと思います。


ロシア軍が今回投入した初期戦力は約20万人。しかし、それを100万人の兵力と同じ運用の仕方をしている。

未だに世界最大最強のソ連軍だと思考停止している。

そして、それはプーチンも同様。


損害率が30%を超えてもプーチンは撤退しない。

しかし、これ以上継戦しても戦果には繋がらないことは理解できています。

本当に「戦争は終わらせる方が難しい」

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