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妄想大会

妄想大会


俺様キングがやっちまいましたな。

いや、まぁ、大統領選勝利の時点でマグロ男の暴走はほぼ確定事項であったし、そうなると俺様キングのイラン攻撃も確率が高い、とは評価していたのですが、、、

不測の事態でない分、ここまでは事前のリスク評価の範囲内で脳容量が退化するほどでもないとはいえ、その波及効果はカオス過ぎて全く予測がつかない。


俺様キングはイランの最難関核施設に対しB2ステルス爆撃機6機を以って最強バンカーバスターGBU-57を12発ぶっ込んでいる。

こいつは14t近い弾体重量を持ち、高高度からローンチされる事で重力加速度により地中深く潜り込んで炸裂するピアシングウェポンです。

その貫通力はコンクリートを60m貫く。通常兵器としては事実上最強の地下攻撃兵器と言えます。

それが12発。しかし、徐々に明らかとなってきた核施設への被害は「直接的には軽微」との評価に留まります。


これはどうした事か。


まず、前提として最難関核施設は地下80mの深度にあり、GBU-57を以ってしても単発では撃破不能とされていました。

しかも山岳部の厚い岩盤層に対してはピアシングウェポンは著しく貫通力が低下します。

このため、私は、核施設攻撃方法として直接的に核施設の心臓部を攻撃するのではなく、地上から核施設に繋がる坑道及び電路をGBU-57の大量投入で寸断し、核施設としての機能を事実上封じ込める作戦に出ると踏んでいました。

これなら放射能汚染のリスクも低く、或いは事前通告する事で人的被害を避ける事も可能ではないか、というもの。


しかし、蓋を開けて見れば12発のGBU-57を岩盤層にぶち当て一部坑道が埋まっただけに見える。大山鳴動して鼠一匹、といったところか。


軍事作戦は、事前に彼我の損害や波及効果を見積もってから実行するものです。

岩盤層の80m下にある核施設を直接狙っても撃破の可能性が低い事などCIAやDIA(国防情報局)なら私などより桁違いの精度で計算できるハズ。

何故、こんな中途半端な作戦を実行したかと言うと概ね二つの理由が想定されます。


一つは、アメリカによる核施設空爆からイランのカタール米軍基地攻撃までが一連の政治的なポーズ。即ち、茶番の類ではないか、というもの。

ロジックはこうです。

俺様キングは戦争まっぴらなので爆走するイスラエルを抑えてイランと停戦させたい。しかし、ラムジェット換水するマグロ男を抑えるには象徴的な勝利が必要。

そこでイランと内々に「大々的に核施設への攻撃を行いイスラエルに花を持たせるけど壊滅的なものにはしないと約束するよ!イランとしてもそれだけだと面子が立たないだろうからカタールの米軍基地を攻撃しなよ、ただし人的被害は出さないでね!お返しにイスラエルはアメリカが抑えるし地上侵攻もしないよ!これで一旦手打ちにしよう!あ、核施設は『平和利用』でお願いします」みたいな?感じ?の密約を結んだんじゃないかなぁ。

現状を説明するにはコレが一番しっくりくるし、俺様キングの流儀にも適う様に思う。

苦しいイランが応じれば、表向き(裏の話だけど)はイスラエルも同意するだろう。

しかし、イランは俺様キングを信用していないし、イスラエルはもっと信用していない。この手の密約に応じるか、と言われると微妙なようにも思う。


そこで二つ目だが、妄想ではなく事実から行こう。

俺様キングはCIAを信用していない。

正確に言うと事実しか言わない連中は大嫌いってところ。

例えば、自分を有能だと思ってる王様が「こいつは素晴らしいアイディア!」と披露したものを「素晴らしい!流石王様、さすおう!ぶらぼーわんだほー!」と讃える家臣は信用するが「やめて下さい王様、そんな事をすればえらい事になります」と反対する連中は毛嫌いし遠ざける。

まぁ、どこにでもある話だね。ソ連とかね、ロシアとかね。

俺様キングは「厳正かつ精緻な情報分析を旨とする」情報機関CIAを毛嫌いしている。というのは第一次政権時から囁かれていた。

あれこれと理屈を捏ねて反対する抵抗勢力と見ている訳だ。俺様キングが「小賢しいインテリエリート」の分析を信用せず、「可愛い部下やご友人」の言葉に信頼を寄せているのはG7でも明らかになっている。

イスラエルがイランを空爆。その報に触れ俺様キングは狼狽し急遽帰国している。外のG7首脳陣が緊張しつつも「来るべきものが来たに過ぎない」レベルの諦念に近い表情であったのとは全く異なっている。

可笑しな話だ。世界最大最強の諜報機関CIAを有するアメリカの大統領が200機余りの航空戦力が投入される事実上の開戦を察知できていない?そんな馬鹿な。

詳細は省くが、軍事的ステージングには様々なリソースが費やされる。ウクライナ以上に世界から注目されている中東の起爆装置が撃発する予兆をCIAが見逃すなど有り得ない。

最初は俺様キングの演出か、とすら疑ったが、アレが演技なら大したモノだ。アカデミー賞モノと言ってもいい。


余談になるが、俺様キングは実業界出身というよりエンタメ色が強い。アメリカ人らしい外連味たっぷりな所作は「アプレンティス」(映画じゃなくてリアリティショーの方ね)でも遺憾無く発揮されていた。

しかし、TACO(Trump Always Chickens Out=トランプは何時もビビってやめる)について記者に問われ、「ビビってるわけねーだろ、二度とそんなこと言うな」と苛立つ俺様キングを見て私は失望しました。そこはワナワナと震えながら「Nobody calls me chicken!」(言わずと知れたマーティの台詞)とやるとこだろ?

最後に、質問した記者にニヤリと笑って見せれば完璧だったのに、俺様キングはエンターテイナーとしても今一つだわ。


閑話休題、俺様キングがCIAやDIAを信用していたなら、G7の途中に慌てふためいて引き返すような醜態を晒す事も無かったでしょう。

ここからは妄想になりますが、俺様キングはマグロ男から空爆の準備について事前に聞かされ、その際「予防的に準備はするけどトランプ国王からやって良いって言われなきゃやらないよ」といったやり取りがあったのだと思います。

この辺は俺様キングとチンピラ皇帝の間で情報共有されていた可能性も高い。イスラエルによるイラン空爆に対するロシアの反応は完全に虚を突かれたものに見えた。イスラエルによる攻撃のリスクは認識しながらも、チンピラ皇帝は自ら俺様キングから得た「イスラエルをグリップ出来ている」という情報を信じ(たかっ)たのではないか。

俺様キングも諜報機関からのアラートより「イスラエルは俺様がグリップしている」という心地良い虚構を信じたのではないか。

であるなら、その先も充分想像がつきます。

話が違うと問い詰める俺様キングに対し、マグロ男は答えたでしょう。

「申し訳ないトランプ国王陛下、イランが核兵器を製造中との緊急情報が入って貴方にお伺いを立てる時間が無かったのです。

しかし、これで大方の核施設は破壊できました。これも貴方の国の兵器のお陰です。

ただ、残念ながら最難関核施設は破壊出来ませんでした。核施設が残っている限り中東そしてイスラエルの平和は脅かされたままです。

イスラエルに出来なかった事も、世界中のどの国にも出来ない事も、貴方なら可能です。貴方の国の最強バンカーバスターなら外の誰もなし得ない最難関核施設も破壊できるのです。

どうかイスラエルと世界の平和のため核施設を破壊してください。核施設さえなくなれば戦争を続ける理由も必要もありません。

イスラエルと世界は平和をもたらした貴方を讃えるでしょう。

残された時間はありません。御決断下さいトランプ国王陛下」

とね。


こんな口車に乗せられてアメリカの大統領が判断を誤るものか?政権内には破壊が困難と分析できる組織と人材が揃っているだろう?

そう思われるかも知れません。

しかし、大国のトップが凡そ信じ難い言葉に踊らされて戦争に踏み切るのは珍しい事ではない。

チンピラ皇帝が「侵略者が花束で迎えられる」という正気を疑う虚言を真に受け国を傾けている様に、イエスマンしかそばに置かない俺様キングが「俺様しか出来ない」「俺様なら出来る」「俺様が決断すれば戦争は終わる」「俺様が中東そして世界に平和をもたらす」と煽てあげられ、気持ちよくなっちまったら、自己愛の強烈な俺様キングがうまうまと口車の乗ってしまう姿は、余りにも余りにも余りにも容易に想像できてしまう。


勿論、この二つは私の妄想に過ぎません。

しかし、一つだけ断言できるのは、中東が安定する事は無い。イスラエルとイランの停戦は次の戦闘を始める前振りに過ぎない。


マグロ男はイランに勝利した。安全保障の敗者から逆転しうる勲と言える。俺様キングへの配慮から今暫くは「イランへの」攻撃も控える可能性は高いし、戦争を続ける事は勝者の立場から戦争当事者の立場に逆戻りにもなる。

ラムジェット換水も一息入れるタイミングに思われ、或いは狂熱の醒めぬ内に解散総選挙に打って出る可能性も有る。

これでマグロ男も止まると考える方も居られるかと思いますが、残念ながらイスラエルの勝利は平和に繋がるものではなく、むしろ逆。イスラエルには、未だ奪還叶わぬ高価値人質が、生存の可能性が低い方々を除くと70人程度、ハマスに囚われており、マグロ男はコレを火種にガザを真っ平らにする気満々だからだ。

戦争の終わりは新たな戦闘を始めるためのものです。


囚われた人質が取り戻される可能性はほぼない。

考えても見てほしい。人質を返せば無体はしないとアメリカの保証付きで停戦したというのにイスラエルはガザでご無体ばかりだ。

現代の砂漠の民と言えるイスラエル国民は、例え非道と誹られようとマグロ男のガザへの攻撃もイランへの攻撃も受け入れ、或いは肯定・賞賛すらするでしょう。

しかし、マグロ男が「ユダヤ人」の人質を蔑ろにすれば激烈に反発するのは間違いない。

マグロ男はガザを真っ平らにするに当たり、人質を無視した作戦行動を取らざるを得ないが、これをエクスキューズするため、予め「イランに対し勝利する」という実績を作った可能性すら有る。


そんな事のためにイランと戦争?妄想も大概にしろとの声が聞こえてきそうですね。

本稿では幾つかの点を曖昧にしたため妄想大会となってしまったのでここまでとしておきましょう。


なんとも締まらない話でお付き合い頂いた方には申し訳ない。

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