マグロ男と俺様キング
マグロ男と俺様キング
いつまでも現実逃避している訳にもいかないので、直面するリスクの評価に戻りましょう。
ウクライナも問題だしアメリカのポリティカルディバイドも深刻だが、目下最大のリスクは中東と言えるだろう。
マグロ男はイランを空爆し「核計画」とやらに痛打を浴びせたと自賛しているが、俺様キングが言うようにアメリカは今回の「立ち上がる獅子(でいいのかな?)」作戦には参加していない。少なくとも直接的にはね。
本当に核施設を壊滅させる積もりであったなら、この作戦にはアメリカの全面的な協力が絶対不可欠だがソレが無い。
この作戦にはイスラエルからF35・F15・F16総勢200機余りが出撃している。大戦力と評していい。これだけの航空戦力がウクライナに有れば戦争にも勝っていただろう。
しかし、イランの核施設は主要なものだけで4箇所に分散配置されており、これを破壊し核兵器製造を頓挫させるにはマーベリック級のパイロット一個中隊と大量のバンカーバスター+αの装備が要るのだ。
実際、衛星画像などから確認できた核施設への被害は壊滅的と評価できるものは無く、最難関と見られている核施設はほぼ無傷と言える状態だ。
イラン核施設への攻撃は映画のように奇跡的一撃で決まるものではない。これがゲームならミッションフェイルドとかダスエンデと言った締まらない結末を迎えているだろう。
はぁ、、、、、、溜息しかでない。
昨年、マグロ男の目論見を第五次中東戦争とその勝利にあると評価した様に、現在、イスラエルとイランは事実上の交戦状態にある。
問題はマグロ男の思い描く勝利条件だ。
マグロ男はハマスの大規模攻撃により安全保障の敗者となった。戦時内閣が終結すると汚職に関しても罪に問われるだろう。
これは、ガザを更地に変え、パレスチナ人をガザから一人残らず消し去ったとしても濯ぐことは出来ない。
ハマスとは結局のところ「イスラエルへの憎悪」そのものであり、イスラエルの行為はハマスを産み育てる事と同義で、戦闘の狂熱が醒めればイスラエル国民は再び拡大した憎悪と向き合う羽目に陥いるからだ。
そしてイスラエルは「迫害された可哀想なユダヤ人」ではなく迫害する側として戦争犯罪に問われる汚辱に塗れた。
しかし、マグロ男にとっては理想的なモデルケースが存在する。
9.11だ。
ハマスごときにしてやられたへっぽこ首相ではなく、「ハマスを影から操るイラン」という「巨悪」を倒した指導者として「それまでの数々」を塗り潰すのが、イスラエルではなくマグロ男の勝利です。
とは言え、イランは腐っても大国。経済制裁のためGDPをドルベースで見るとイスラエルの1/10程度だが実態的には購買力平価でイスラエルの約3倍と大きく逆転する。
加えて、両国の間には湾岸諸国が横たわる。
サウジアラビアはイランとは仲が悪い(控えめな表現)がアラブ世界の盟主として、またホルムズ海峡の安定を考えればイスラエルを批難せざるを得ない。
イスラエルはイラン上空の制空権を取ったとしているが、それだけで戦争に勝てはしない。
或いは、イスラエルのモサドはイランのトップであるハメネイ師すら暗殺することが可能かも知れない。
それでも、首がすげ変わるだけだ。イランがイランである限りマグロ男は勝利者ではなく暗殺者の親玉でしかない。
今回の作戦名は含蓄に富んでいる。
イラン革命前、パーレビ朝ペルシャでは紋章や国旗に伝統的な「獅子と日輪」即ち太陽を背に剣を持つ獅子の姿が描かれていた。
立ち上がる獅子とは、イランを解体し反体制派による親イスラエル・親米政権を立ち上げる事を表している。そう判断して良いと思う。
とは言えイスラエルが独力でなし得るものではない。
であるなら、イスラエルの中途半端な核施設攻撃の狙いは核施設そのものではない。核施設を完全に破壊してしまえばイスラエルは侵略戦争の大義名分を失う。
イスラエルとイランの戦争気運を高め、双方をのっぴきならない状況に置くことそのものがマグロ男の目的。
事態がエスカレートすればイランは核兵器製造に踏み切るだろう、そうなればイスラエル寄りの俺様キングは参戦せざるを得ない、、、マグロ男はそう計算していると思う。
実際、マグロ男はトランプの大統領選勝利と同時にイスラエル国内の穏健派を排除している。この辺りから本格的に戦争の準備を始めていたのだろう。
しかし、まぁ、ハリスが勝っていたらこの事態は防げたか、と言われると正直微妙に思う。
現状、俺様キングがアメリカを支配し、今まさにイスラエルとイランはのっぴきならないところまで来ている。
俺様キングの決断が最後のピースだ。
トランプは戦争を嫌悪している。そこに自分が脚を踏み入れるなど真っ平だ、そう考えているのは間違いない。
しかし、俺様キングの思い描くアメリカにもイスラエルは不可欠なのだ。
本当に最終段階となれば俺様キングがイランを攻撃する可能性は高い。
そうなるともう連鎖的に世界に戦争が広がっていく事はリスクというより確実、そう言うべきだ。
イラン解体が短期間で終結する見込みはない。
そして、仮にイラン解体が成ったとしても、その後の展開もほぼ見えている。アフガニスタンを見れば分かる。
イランを解体し、親イスラエル・親米政権を立ち上げてもイスラエルとアメリカがソレを維持する事は不可能だ。
イランはアフガニスタンの4倍以上の人口を抱えている。イランの現体制に不満を持つものもいるだろう。パーレビ朝の残党もいるだろう。しかし、人口の90%程度がシーア派だ。宗教的不満から生まれたイランという国をイスラエルの都合で作り変えようなど不可能以前の問題なのだ。
更に、アラブ世界はイスラエルとアメリカに反感と警戒心を募らせるだろう。イランと仲の良くない(控えめな表現)サウジアラビアであっても、イランがシーア派の受け皿となっていたメリットが確かに存在する。
中東の不安定化は避けられず、この問題は10年20年では解決出来ない。
はぁ、、、俺様キングの戦争嫌いに期待せにゃならんなんて、、、、、、




