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お金ってなんですか?一つ目

お金ってなんですか?一つ目


いきなりどうした、と思われるでしょうし、ウクライナ以前から散々やってきた事なので今更感のある方もいるでしょうが、お浚いがてら投稿します。


さて、先程の問いに対しては、概ね「財やサービスと交換可能な(紙幣などの)モノ」と言った旨の回答が多い様に思います。

まぁ、この辺は敢えてゆるゆるの質問にしたので間違いではありません。なお、お金と通貨は異なる概念なので、ここでは分けて考えます。

ここに一枚一万円札があるとします。これでコンビニやスーパーなどで一万円分の買い物が出来、タクシーなどで運賃として支払いに充てる事が出来るのは至極当然の事と思われるかも知れません。しかし、その「当たり前」が当たり前であるために必要な努力・コストはおそらく大半の方々が想像すらしていないでしょう。

本来ならそれで良いのです。それが安定した通貨と言うもの。


しかし、昨今、どうにもこの辺の経済の基礎の基礎が疎かにされ、脅かされていると非常に非常に非常に強く感じます。


一万円札の価値は主に三つの要素により担保されています。

一つに強制通用力。

これは、日本において「お札」は売買やサービスを「円」で決済する手段として一切の制限が無い、という事です。日本銀行法にもそう書いてある。

言い換えれば印刷された紙に過ぎない千円札、五千円札、一万円札に千円、五千円、一万円の価値があるのは法律に定めがあるためですが、法の定めだけでは強制通用力は担保しきれません。


例えば、偽札が蔓延してしまうと紙幣そのものへの信頼が薄れます。これを防ぐために容易に偽造出来ないようお札には様々な工夫が凝らされ、偽札・贋金の製造・使用は厳罰が科されます。現代日本の刑法でも最高で無期懲役が科され、近代以前は死刑が当たり前でした。

カラーコピーした偽札をコンビニで使う阿呆がたまに現れますが、初犯でもまず間違いなく懲役3年、執行猶予が付いても5年になります。これは、可罰的違法性が高い、即ち「私が馬鹿でした御免なさい、では済まされない重大な犯罪」だという事です。


日本のお札は一枚刷るのに凡そ20円ほどコストが掛かると試算されており、これは千円札でも五千円札でも一万円札でも余り変わりは無いと考えられます。一万円札のコストがたった20円?と思われるかも知れませんが、スイスフランと並ぶ世界トップクラスの偽造防止技術の塊なので、精巧な偽札を造ろうとするならイニシャルコストだけで最低数十億円になるし、ランニングコストも20円では効きません。

それだけのコストを回収し、偽札ウハウハ状態になるには大量に、それも秘密裏に流通させねばならず、リスクを考えれば現実的ではない、、、とも言い切れない。

1990年頃から約20年間、スーパーノート、即ち超精密偽100ドル札は世界を席巻しました。

総流通量は一千万枚は下らないとされ、額面にして十億ドル以上、これはもう犯罪組織の域を逸脱している事から、北朝鮮による国家ぐるみの犯罪であると言われています。

実のところ、これほどの規模であっても諸々のコスト、マネーロンダリング時の目減り、リスクの巨大さを思えば、手間に見合った利益になっているかは微妙なところですが、経済制裁下の北朝鮮は何よりドルが欲しいといったところなのかも知れません。

何にせよ、スーパーノートの出現によりドルは新紙幣への移行を余儀なくされました。

この様に、偽札に対抗するには、時に国家レベルを超えて国際的に対応する必要が出てきます。対応に失敗すれば強制通用力は実効性を失うでしょう。


強制通用力を有する紙幣などの法貨を発行する国家・中央銀行は、その法貨による決済能力に責任を持たねばならない訳です。

責任とは、上記の偽札等への対応も勿論ですが、広く流通させるための利便性も担保する必要がある。

例えば、千円札・五千円札・一万円札の何でも、一枚当たりの製造コストは余り変わりが無い。

「だったら、千円札と五千円札は廃止して一万円札だけにすれば良いんじゃね?いっそ一万円札も廃止して十万円札作っちゃおう!差額で国庫も潤ってウハウハ!俺って天才じゃね?」

この話の問題点は多少の思考能力が有れば想像できます。

一万円の物を買おうと思っても十万円札しか紙幣が流通していなければ、五百円硬貨を20枚用意するか十万円札で支払って五百円硬貨で180枚お釣りを貰うかです。百円硬貨は論外ですね。そうなるとどうなるか。

「馬鹿馬鹿しい、カードで払う」

当然こうなる。

これは法貨たる紙幣が決済能力を失い。強制通用力に対する責任を放棄している状態です。勿論、これは極端な例えですが、2円のコストを払ってでも一円硬貨を流通させる理由がここにある訳。

そういう意味で、俺様キングの「1セント硬貨を作るのに2セントかかるから作るの止める」というのは、いかにも無責任男のトランプらしいと言えばらしいのですが、これが余り問題にならないのは、1セント硬貨は流通量が多いので直ちに大きな影響は出ないだろうというのも有りますが、結局のところ俺様キングは硬貨が足りなくて困れば何事もなかったかの様に鋳造するだろうと見透かされているのだと思います。

ぶっちゃけると強制通用力に対する挑戦者としては、俺様キングもコンビニでカラーコピーを使っちゃう阿呆と同レベルって事です。


勘違いして欲しくないのですが、一円硬貨のコストが2円掛かるのは駄目だろ、という議論は、それが法貨としての品位と偽造抑止力を失わない前提でコストを下げようとか、何らかの代替手段を前提として一円硬貨製造廃止を議論するのであれば悪いことではありません。

しかし、利益(通貨発行益)は俺のものだが責任はお前らのもの、の俺様キングが言う事を真に受けるのは、後で恥をかくだけでなく、思考停止の第一歩でしかない。

補足すると「これだけカードや電子マネーが普及しているなら一円硬貨とか無くても大丈夫だろ?」というのは、一円硬貨の代替手段として、少なくとも現状では全く話になりません。

カードや電子マネーで代替するには、お使い可能な年齢層から高齢者に至るまで、人口のほぼ全員に受領・譲渡が可能な機能が普及しているだけでなく、全ての決済場面で対応可能でなければならず、何より、セキュリティ及び停電対策などなどなどなどに関して国が責任を負えるインフラを構築しなけれはなりません。

そこまでやるなら、一円どころか完全なる貨幣・紙幣の廃止を考える領域ですし、現在のテクノロジーでは不可能と言っていい。


まぁ、繰り返しになりますが、安易に俺様キングの尻馬に乗るのはやめましょう。

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