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ヒトラー「悪いことは全てユダヤ人のせい」

ヒトラー「悪いことは全てユダヤ人のせい」


ナチスの話をしていたハズなのに、前稿ではいきなり宗教の話になって面食らわれた方、どーもすいません。

しかし、ナチスの話をする上でキリスト教とユダヤ教の対立を無視するのは適当ではありません。


ローマにおけるキリスト教の国教化はキリスト教拡大の原動力となりました。

キリスト教隆盛により、発言力もそれまでとは比較になりません。キリスト教カソリックの頂点たるローマ教皇は、世俗権力の王や皇帝すら凌ぐ影響力を持つに至ります。


その教皇自ら「悪いことは全てユダヤ人のせい」みたいな事を平気で言っちゃうんだから強烈。

神聖ローマ帝国、帝政ドイツは、カソリックの影響下にあり、ユダヤ人に対する偏見の歴史は筋金入りなわけです。


では、その流れを汲む第三のライヒたるナチスドイツは?


神聖ローマ帝国に生まれたルターは、その反骨精神の現れか「ユダヤ人を迫害するくらいならユダヤ人になる」みたいな感じだったんですが、ある時を境に「ユダヤ人は××で○○で△△だ!(←聞くに耐えねえ罵詈雑言)」になっちゃいます。

まぁ、ルターは聖職者とは思えないくらい口の悪い人なんでアレですが、これも、結局のところ、ユダヤ人改宗の試みが失敗した事に対する「宗教的正義心」から出た言葉であることに物悲しい想いを感じます。


しかし、そもそもバリバリのユダヤ教徒にキリスト教に改宗しろと言っても無理な話です。

イエスをキリストと認めろ、くらいなら何とか受け入れる余地があったかも知れません。しかし、ユダヤ教徒にとって、神はキリストとは比較にならない隔絶した存在です。これを同一視するなど、おそらく、イエスの弟子やユダヤ教からキリスト教に入った初期のキリスト教徒などには、発想すら無かったでしょう。そういうのは、どう考えても多神教の緩い宗教的文化の発想です。

さらに、キリスト教は拡大するにつれ変質していきます。

ユダヤ教では偶像を崇拝することが禁じられています。ユダヤ教の流れを汲むキリスト教やイスラム教も同様です。しかし、実際には、キリスト教の教会に行けば絵画もあるし「ユダヤ人のせいで」磔になったイエスの像がどーんと鎮座して皆が拝んでる。しかもイエスの姿はどうみても白人でユダヤ人の顔(イエスは人種的にはセム族と考えられます)には見えない。

ユダヤ教では滅多やたらと神の名前を呼んではいけませんが、神と同一であるとしながら道端で平気でイエスの名を連呼する。etc etc

ローマ人のラテン系のノリにユダヤ人はついていけないし、ノリの悪いユダヤ人は「あ!こいつユダヤ人だな」と分かってしまうのです。


結局、宗教改革でもユダヤ人に対する反感は緩和されるどころか悪化しました。

ルターは、ユダヤ人の家は打ち壊せ、財産は没収して追放しろ、農奴にしてこき使え。とまで言いました。宗教家っぽく、しても許される、ですらないのです。


ルターの興したプロテスタント。これを更に推し進めたのがヒトラーにとって「正統な」キリスト教です。

ヒトラーに言わせれば、イエスはユダヤ人では無い。聖書も半分以上ユダヤ人が関与しており、そんな部分は認められないので削除しろ。と、まぁ、こんな感じ。

ものの見事にキリスト教の矛盾点が破裂した結果、と言えます。


こんな突き抜けた思想を公言するヒトラー率いるナチスに対しても、ローマ教皇や国際社会は、当初、歓迎さえしていました。

これまで述べてきたように、ユダヤ人迫害はナチスに始まったものでもなく、何より、共産主義と言う脅威が存在し、ナチスドイツにはその対抗馬となることが期待されたからです。


しかし、ナチスドイツは国際社会の想定を超えていました。当時の国際社会はヒトラーの極端な優生思想と実行力を甘く見過ぎていたのです。


「悪いことは全てユダヤ人のせい」

と、ヒトラーが公言しても

「あぁ、戦争に負けて鬱屈した国民の不満をユダヤ人に転嫁して人気取りしてるんだな」

くらいにしか考えませんでした。為政者ほどそういった認識でしょう。

第16部でナチズムを、極右思想に基づく全体主義。と表現しましたが、右翼とは本来「保守」派を指す言葉で、為政者を含めた旧来の支配層には「とんがってるけど理解できる(ハズ)」と受け入れられたのです。


残念ながら、ヒトラーの頭の中に渦巻いていたのは、そんな生っチョロい常人の思考ではなかった。

一言で言えば優生思想ですが、アーリア人であるゲルマン民族を優生種とし、ユダヤ人などを劣等種として、優生種を保護・改良・繁殖させ、劣等種は隔離・断種・絶滅させる。

これを実現するためなら何でもやる。そして実際にやったのです。アメリカが第二次世界大戦に参戦していなかったら実現していた可能性は割と高かったでしょう。


ヒトラーのソレは、極右という言葉では言い表わせないウルトラナショナリズムです。


滑稽なことに、プーチンのウクライナ侵攻は、ナチスドイツによるズデーテン併合からチェコスロバキア解体に至るやり口と酷似しています。

ゼレンスキーが亡命していたり、弱腰であったら同様の結末を迎えていたことは間違いないでしょう。

おそらく、プーチンは、アンシュルスの事例なども含め、ヒトラーの戦略を研究していたのだと思います。まぁ、プーチンの経歴を見れば、していない方がおかしいレベル。

そのプーチンが自分の事は棚に上げてナチズムとの闘いとか言っちゃうんだから別の意味で凄いことです。


プトラー「悪いことは全て西側のせい」


ウクライナ侵攻から100日を経過しましたが、依然として戦闘は継続しています。

ウクライナはロシア軍を叩き出すまで継戦するでしょう。

では、ロシアは?

次稿からは再び戦況に注目していきます。

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