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WTO

WTO


WTO、世界貿易機関ですね。

その使命を一言で言うと「自由貿易の推進」。

前身のGATT(関税と貿易に関する一般協定)と狙いは同じですが、より広範な権能を与えられています。


GATTを含め、なんでこの機関が求められたかと言うと、(世界)経済の健全な発展ってのは勿論なんだけど、保護主義が貿易戦争から第二次世界大戦へと繋がる様を目の当たりにして「関税は下手に扱うと本物の戦争に繋がる」という危機意識から来た面も強い。

換言するなら、WTOには、貿易における国連安保理としての機能も期待されて「いた」。


本来、アメリカはWTO加盟国として「その関税が正当なものであるか」チェックする機能を法律で整備し、担保している。

例え大統領であっても好き放題に上げ下げする事は出来ないのですが、トランプは「緊急事態だからチェックなんかあとあと」とディールの材料に使う火遊びに夢中だ。


トランプが就任直後から爆走しているさまには世界中が注目している。トランプには実績を、それも早急に示さなければならない理由がある。

トランプはアメリカ合衆国憲法上、今期4年限りで退任となる。一部共和党議員からは憲法改正して再度大統領選に、なんて動きもあるようだが、トランプへの追従レベルでしか無い。

通常、新しい大統領は8年のタイムスケジュールで未来図を描ける。これが4年となるとかなり厳しい。任期終盤にはどうしてもレームダック化するからだ。中間選挙で負けるとレームダック化は更に決定的なものになる。


アメリカには「最初の100日」とも呼ばれる大統領就任後の蜜月期間がある。民意の象徴とも言える大統領には、この期間、マスコミも両院両党も協力的になる。

しかし、逆に言えば、この最初の100日で新たな大統領の評価が下され、その評価は後の政権運営に大きく影響を及ぼす。

トランプがウクライナ戦争の問題を4月中には終わらせたいと考えているとする理由もコレ。


トランプの大統領就任日、議会で承認されていた主要閣僚は国務長官のルビオ唯一人でした。これは、私が思っていた程にはトランプが議会を掌握出来ていない証左とも考えられます。

トランプ、そしてマスクの手法は余りにもドラスティックで、アメリカ国内からも少なからず反発の声が上がっている。分断と軋轢を無視してトランプ政権が爆走するのは最初の100日で高い評価を受け、中間選挙に勝てる実績を必要としているからだ。


アメリカがトランプを熱狂的に支持している、というのは正しくない。熱狂的に支持する者も多いというだけだ。

選挙レビューでトランプの勝因を野球に例え、1・2点差で勝ち切った。と評した様に、激戦州でのトランプの勝利は全て2ポイント差以内の接戦だった。

有効票投票者を100人と換算すれば、その内のトランプに投じた1人がハリス支持に変わっていたなら逆転していた数字だ。


トランプは自分に敵が多い事を充分に理解している。

むしろ、敵を作る事で支持を得てきたと言った方が正しい。

トリプルレッドも議席数は僅差の部類だ。

何としても支持者の狂熱に応えられるだけの実績を示さなければ、中間選挙は耐えられないだろう。

そのために関税を弄ぶ火遊びに興じている。


本来、WTOはトランプの火遊びを咎めるのが仕事です。

しかし、WTOは国連安保理と同様に機能不全に陥っている。

これは、貿易紛争解決に係る最終判断を担う上級委員会の上級委員選任がアメリカの反対のため2019年から行われていない事によります。

このため、中国などが「WTOに提訴する!」と言ってるのもポーズ以上のものにはならない。

実際、WTOからは「まずは落ち着いて、関税の報復合戦はやめてください」くらいのコメントしか出ていない。

上級委員会の代替手段としてMPIA(多国間暫定上訴仲裁アレンジメント)が導入されているが、どこまで機能するものかは、心許ない限り。


存在感の薄いWTOですが、トランプは二期目になってからは脱退に関して言及していません。

一期目の時はWTOに対し不満たらたらで脱退を仄めかしていましたが、ある意味WTOが骨抜きとなった事で、トランプにしても残っている方がフレームワークとして利用できる、或いは脱退して中国などに自由にさせる事を懸念しているのかも知れません。


この辺り、離脱も再加入もトランプの胸先三寸なWHOとは扱いが異なっています。

WTOは加盟したい、と言えばどの国でも入れてくれる機関ではありません。

自由貿易を担保するために国内の法整備・体制整備は元より、他国とのトラブルなどについても解決が求められる事もあります。

国にも依りますが、多岐にわたる大小様々な問題を解決する必要があり、色々とややこしいロシアなどは加盟申請から正式加盟まで20年近くかかっています。

、、、今にして思い返せば、ナビウリナが経済貿易相やってたのって丁度加盟のための体制整備やらなんやらで無茶苦茶大変な時期だな、その後任はベロウソフだし、同情する気はさらさらありませんが、この2人今も昔も苦労してんなぁ、、、


話が横道に逸れましたが、仮に、トランプがWTOから脱退し、大統領が変わって新大統領が「やっぱWTO戻るわ」とか言っても「お前んとこの法制度どないなってんねん!関税を脅しに使うとか、体制整備からやり直して来い!」となるでしょう。

それほどトランプのやり方は様々なリスクを孕んでいる。


WTOはトランプの関税政策とは全く相入れませんが、それだけに160ヶ国余りが加盟する機関からアメリカが孤立し、独自の「WTO経済圏」など形成されてはアメリカと言えど衰亡は避けられない。

トランプとしても上級委員会の無いWTOであれば、そんなリスクは冒す必要がないという事でしょう。


様々な問題があるにせよ、国連やWTOは第二次世界大戦後の国際秩序を担い、築いてきました。

まぁ、トランプ1人の責任ではありませんが、これまで国際秩序に傾けられてきた努力が崩れ去ろうとしている。


なんかもう凄く虚しい。

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