ウクライナへの影響
ウクライナへの影響
トランプは大統領選でウクライナ戦争を就任から24時間で終わらせると宣言していましたが、就任前に「やっは6ヶ月で、なるべく早く終わらせっから」と軌道修正しています。
まぁ、24時間とか無理筋もいいとこなんで、出来もしない事をトランプがムキになって無茶な条件を押し通そうとする方向に行くのが最大のリスクでした。
そういう意味では、軌道修正は歓迎すべきですが、6ヶ月に何らかの根拠が有るとも思えません。
リスケにより期間が180倍された事で過激さは希釈されるでしょうが、戦争終結に向けた圧力としてトランプが取り得る選択肢は、現状、ロシアには経済制裁、ウクライナには支援停止というカードしかない。
厳密に言えば「アメリカ参戦」という超強烈なワイルドカードもありますが、バイデンすら切れなかったカードをトランプが切るハズがない。脅し・ブラフにすらならないワイルドカードなど、既にプーチンを利しているとすら断じて良い。
戦争終結に向けた圧力は既に始まっている。
ロシアには「交渉の席に付かなければ」関税かけるぞ、という脅しを、ウクライナには金銭的支援が既に停止されている。武器弾薬類は、少なくとも無償で供与される事はない。
ロシアへの圧力は事実上無いに等しい。
経済制裁によりロシアはアメリカへの輸出が激減しており、例え100%関税が掛かっても影響は極めて限定的だ。
経済制裁解除という飴を提示する事も想定されているが、チンピラ皇帝が飴を舐めるだけに終わるだろう
対して、ウクライナへの支援停止はかなり厳しい。
アメリカからの支援は武器弾薬類だけでなく人道支援にも多額の供与がなされていた。これが一気にストップする。
この措置はウクライナに限定したものではなく、アメリカが世界中に対外支援として拠出していた資金が全て何の猶予もなく停止される。
これはマスクが企業買収した際などに使う手だ。一度金の流れを完全に断ち切り、自身が認めた事にだけ金を流す。これが生命に関わる事柄にまで及んできた。
資金が途切れる事でウクライナ以外の国や地域でも飢餓や医療欠如による死者が相当数出るが、まぁ、マスクは気にも留めないだろう。
資金を断つのはマスク流マキャベリズムの一端なので、マスクは効果と影響を熟知している。ウクライナ「だけ」を狙ったものではないが、ウクライナは正確に圧力と理解しているだろう。
先程、全ての対外支援停止と言ったが、イスラエルは別だ。イスラエルにはバイデンが供与を停止した2000lbマーク84無誘導爆弾の供与も再開している。これは、マスクではなくトランプの意向だろう。
トランプが平和を愛する人物との評価は正確ではない。ディールとは異なる論理で動く「戦争の不確実性」を嫌悪しているだけだ。
これは、トランプが兵役を忌避した青年期、泥沼に陥りベトナム戦争に敗北した大国アメリカの姿を目の当たりにした事も影響しているのではないかと思う。
アフガンや今まさに泥沼に陥っているウクライナ戦争のロシアを見て想いを強くしているだろう。
トランプは戦争など馬鹿のやる事だと思っている。戦争は外交の敗北という金言も信条に合致しているだろう。ここまでなら平和主義者と言えなくもない。
問題は、トランプが馬鹿をカモにするプレデターだという事。兵士・軍人の類もトランプの考える馬鹿の範疇に入る。
武器弾薬類に関してはNATO諸国が買い付け、或いはウクライナの借款という形で提供される可能性は有る。しかし、それもトランプ次第だ。
そして、最大の問題は、戦争の最初期からウクライナを影から支えてきた不可視の戦域における機能喪失が現実味を帯びてきたところにある。
先日、CIA長官としてジョン・ラトクリフが承認されました。能力に不足のある人選ではありませんが、当然ながらトランプへの忠誠心は高い。
CIAが2022年のロシアによるウクライナ侵攻を開始日に至るまで事前に察知していた様に、ヒューミントやシギントの能力は抜きん出ている。
また、アメリカ軍の諜報機関として国防情報局(DIA)や国家偵察局(NRO)などがあって、哨戒活動や偵察衛星から得た情報を握っています。
これら、戦術から戦略にまで及ぶ重要な情報の元栓をトランプが握っている。
ロシアに対するCIAの活動はウクライナに限ったものではないため、CIAがロシアでの活動自体をストップする事はないが、アメリカ軍の哨戒活動などは、アメリカの資金が投入されているため、マスクなどが横槍を入れて来る可能性も高い。
これまでアメリカが担ってきた機能をイギリスなどNATO諸国で代替するのは完全には不可能だ。
現在のところ、不可視の戦域における機能停止は認められていないが、この先どう転ぶか全く予想がつかない。
鍵を握るのはゼレンスキーになるだろう。
トランプは米露首脳会談を2月の頭にも実施し、ゼレンスキーを含めた三者会談も2月か3月に実施する意向を示している。
ゼレンスキーもトランプの扱いについてはある程度理解しているだろう。トランプに人道だ約束だ欧州の安全保障だ何だと言っても寸毫も心を動かす事はないどころか不快にすら思う。
トランプを動かすには徹頭徹尾メリットを示すほかは無い。
幸い、と言っていいかは分からないが、ウクライナはアメリカに差し出せるものが幾つかある。
穀物飼料や肥料、ほぼ手付かずの鉱物資源、武器弾薬類の「購入」、アメリカから石油を輸入するのも一つの手だろう。しかし、正直、弱い。
トランプは今年の4月中、遅くとも7月中にはウクライナの問題を片付けたいと考えている。
しかし、これまでも言ってきたように、安全保障の一点においてウクライナとロシアは全く相容れない。
何処かでどちらかを叩き伏せなければ決着が付かない可能性が高い。
現在のロシアの損耗率は継続不能だ、が、ロシアも必死だ。北朝鮮からは増派の兆候も認められている。
どう転ぶかは本当に分からないが、三者会談後の動きである程度の方向性が決まると考えられる。




