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関税

関税


トランプの大統領就任日が迫って来ました。

トランプは就任当日からスロットル全開で突っ走る気満々。

指名された政権スタッフの顔触れを見るだけで目眩がする程強烈です。

諸般の事情により個別評価の部分は投稿せず、総評の方だけ簡単に触れます。


とは言え、何も新鮮味はありません。

結論から言えば「トランプを止められるモノは無い」と、これまで言ってきた通りの人事であり、強いて言えば対中シフトが、より明確となった程度でしょう。


主要閣僚の半分は大統領選挙の論功行賞と言えます。

残りの半分はトランプが権勢をふるうための手足となる、忠誠心の高さで選んだ人選です。

どちらにも強烈なのが混じってて、通常であれば閣僚にはなれない。大統領に指名されるだけでなく、上院での承認が必要だからです。


通常、新政権の主要閣僚は1月20日の大統領就任日までに公聴会を経て上院で決を取り、承認を得る必要があります。

今、アメリカはトリプルレッドの状態にあるため、上院も共和党が優越しており、一見、支障はない様に思われるかも知れませんが、指名されたメンバーには「公聴会に出したらアカン」奴とか公聴会で袋叩きにされそうなのが混じっているので、共和党内の反トランプ議員が離反する可能性がある。


任命には閉会中任命と言って、議会が開かれていないタイミングで任命する裏技もありますが、就任というハレの日を前に、指名した閣僚が否認されるというケチが付くことをトランプが容認するとも思えないので、根回しは済んでいると見るべきでしょう。

或いは、公聴会に出したらアカン奴は、共和党議員の忠誠心を測る試金石の積もりであるかも知れません。


いずれにせよ、指名されたメンバーには、ダークトライアドと目されるトランプの一面が如実に現れています。

即ち、法や手続きを軽視し、力で現状を変えようとする意思。

この辺は深掘りすべき話かとも思いますが、これまた諸般の事情によりカットさせていただきます。


トランプの力の源泉はアメリカ国内にあっては人事権です。

まぁ、これは古今東西どこも同じではありますが、トランプの場合、能力よりも忠誠心の比重が圧倒的に高い。

これは、トランプの第一期より明確です。言うまでもなく、誰もトランプを止める事はできず、習近平やプーチンの様な独裁傾向が強化されている、という事。


この、ほぼ唯一の例外と言えるのがイーロン・マスクでしょう。マスクは独自の価値観で動いており、トランプに対する忠誠心とは無縁の存在。

マスクは論功行賞によりアメリカ政府効率化省(DOGE)のトップに就きます。コレは大統領選挙の時点で公言されていた事項ですが、マスクは年間6兆ドルのアメリカ国家予算の1/3、2兆ドルを削減すると掲げています。


DOGEの位置付けには不明な点もありますが、大統領や政府機関への助言等を行う諮問機関となるハズです。

法的な強制や執行能力は持たないが、トランプをバックに広範な影響力を行使する事が可能となるでしょう。トランプ政権の予算編成には間違いなく絡んできます。


2兆ドル削減は明らかにハッタリですが、削減の対象はコレも選挙時点で一部明言されています。

アメリカ教育省の廃止を始めとする大幅な人員削減が、その主なものとなっている。教育省長官人事も廃止を見据えたものと言われており、かなりドラスティックに実行される可能性は高い。


マスクもまたダークトライアドと評されており、コストカットを何の抵抗もなくやってのけるだろう。

ただし、マスクがこれまで率いてきた民間企業と異なり、政府機関職員を解雇するとなると退職手当を大きく積まなければならず、短期的には予算は削減額より増額の方が大きくなると考えられます。

トランプの任期4年では人件費削減効果は限定的にならざるを得ない。


この辺のしわ寄せが何処に来るかは、正直、計りかねます。

アメリカという巨大な国家の予算には様々な利権が絡み、マスク・トランプというダークトライアドのコンビでも恣には出来ない。

共和党は伝統的に「小さな政府」を目指しており、コストカットや政府機関の廃止には「比較的」前向きではあるハズですが、議員それぞれの支持層はアメリカの縮図とも言えるため全面的な支持を得る事は難しい。


マスクやトランプにとってコストカットは手段の「ハズ」ですが、様々な抵抗に遭って手段が目的にすり替わるとロクなことにならない。

何にせよマスク・トランプがやろうとしている事はアメリカを少なからず混乱させる事はまず間違いない。


マスクの当面のやりたい事は規制緩和と見て良いでしょう。

最終的な目標が火星移住という壮大な夢なのか、それすらも何かのカモフラージュなのかは誰にも分からない。

しかし、大統領選挙への多額の献金と有形無形の支援はトランプを再選に導き、マスクにしてみればこれからが収穫期となる。

その影響はアメリカには留まらないだろう、とか言ってるそばからドイツなどに口先介入やってるよ、、、質が悪過ぎる、、、


マスクが何時までトランプ政権下で影響力を行使出来るかは分かりません。マスクもトランプも互いをどう利用するか計算しているのでしょうが、俺様気質のダークトライアド同士で上手く行くとも思えない。

マスクが影の大統領と呼ばれている事をトランプは少なからず不快に思っており、仮初の蜜月が長く続く事はないのではないかと考えられます。


一方のトランプがやろうとしている事は割りかし分かり易い。

偉大なアメリカの最も偉大な大統領になる事。

そのための最大の武器、とトランプが考えているのが関税です。

トランプは貿易赤字を敵視しており、ドル高も貿易赤字の一因と見做している。

コレを解消するため輸入品に一律10%、気に入らない国には25%から60%、或いはそれ以上の関税を課す、としている。


トランプの目論見は物凄く単純だ。

関税を課すことで貿易の不均衡を解消し、産業の国内回帰を図り、関税収入を原資に減税する。

雇用は増え、税金は安くなり皆んなハッピー!

不法移民を全て送還して労働需給関係が変われば給与も上がる。これでインフレも大丈夫だろ!


そんな単純な世界なら誰も苦労はしない。


懲罰的な関税はトランプの好きなディールの材料という面もあるでしょう。

就任前からトランプは様々な国や地域に揺さぶりをかけている。

同盟国などにもお構い無し。

コレがどれだけ危うい火遊びか理解しているのだろうか?


アメリカの繁栄の一端は自由貿易にこそ在る。

ソ連が冷戦期にあってさえ「善きエネルギー資源供給者」として振る舞っていたのは、エネルギーに関してはソ連を頼っても安全保障上の問題とはならない、という安心感がソ連経済を支えたからだ。

しかし、輸入額4兆ドルのアメリカが関税を武器に輸入相手国を好き勝手に脅すと言っている。

こんな国を誰が信頼し、安心して貿易できると言うのか?


ましてや、アメリカは冷戦直後の完全一強国家には程遠い。

アメリカが駄目なら外の道を探ろう、という動きはトランプ政権一期目の時点で既に顕在化していた。

トランプに振り回されるリスクをBRICs、グローバルサウスだけでなく、同盟国、EU諸国にまで警戒される。ソレだけで目に見えないリスクや損失の大きさは計り知れない。

アメリカという経済や安全保障の背骨が、大統領就任前から、その意義を失い始めている。


アメリカの保護主義はトランプの専売特許ではない。

しかし、大体ロクな結果にはならなかった。

特に、1930年のスムートホーリー法は、大恐慌の対策として自国産業保護を掲げて輸入制限や高関税を課した事で、国家間の対立や疑心暗鬼を招く事態に発展し、第二次世界大戦の遠因ともなったとされる。


そういった経緯もあってアメリカには関税に関して一定の制限があり、大統領が「明日から関税かけるね」と言っても勝手には出来ない。

所定のめんどくさい手続きが必要、、、なんだが、法と手続きを軽視するなら、やり方は幾らでもあるんだよなぁ、、、


以前「自身が戦争を起こさずとも、トランプが戦争の遠因となり未曾有の被害をもたらす可能性は無視できない」とした根拠の一つがコレです。

トランプは戦争に興味が無い。戦争に勝った大統領よりノーベル平和賞を貰った大統領と呼ばれる方がトランプの好みでしょう。

しかし、トランプが考える栄光のアメリカの姿は余りにも非現実的で世界の安全保障に深刻な亀裂が生じかねない。


トランプが就任直後から実行するとしている関税と不法移民送還は間違いなくインフレを加速させる。

トランプはFRBにも手を突っ込んで来ると予想され、独立性は担保されないだろう。

減税と給与の増加もインフレには追いつかない。全体的に見てアメリカ社会は生活が苦しくなるだろう。

輸入品に一律関税を課すなど経済音痴もいいところだ。


しかも、トランプが目の敵にしている中国、メキシコ、カナダの3ヶ国を合わせると輸入額の50%近くになる。

そこに高関税を課すとなると生活への影響は大きい。

輸入が駄目なら国産品に代替されるだろうとトランプは考えているでしょうが、ただでさえ需給が逼迫している中でやって良い施策ではない。


1月20日がマジで憂鬱。

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