シヴィルウォー
シヴィルウォー
シヴィルウォー、即ち内戦です。日本でも先週末に公開された映画の題にもなっていますね。まぁ、私は観に行ってる時間もありませんが、、、
恨み言はさておき、アメリカ大統領選が中東、ウクライナ戦争を左右するに留まらず、今後のアメリカ、引いては民主主義陣営の在り方に大きな影響を及ぼすものとなる事はこれまで述べきた通りです。
誰が大統領になってもアメリカはアメリカ、という時代は2016年に終焉を迎えました。
ある種のノーサイドの精神が無ければ民主主義は機能しませんが、政治的分極化現象と呼ばれるほどアメリカはリベラルとコンサバに二極化し、特にコンサバティブは、トランプが大統領となれなかった場合に激烈な反応を示す虞があります。
これが南北戦争以来の内戦へと繋がるのではないか、そうした懸念が広がっています。
現実にアメリカにおける銃器類販売数は前回の大統領選があった2020年には、前年の1.4倍となり、以降も高水準が続いています。
銃器の所持が権利として認められているアメリカですが、携行には規制を掛けている州は多い、それでも普段から銃を携行する人は増えているという話も聞かれ、国民の中には不安が高まっている。
これが、以前に私が「トランプが勝った方がアメリカとしては安定する可能性が高い」とした所以でもありますが、流石に南北戦争時とは状況が異なります。
南北戦争は、奴隷制反対を掲げた共和党から出馬したリンカーンが大統領に当選したことから、奴隷制存続を掲げたアメリカ南部の州が合衆国を脱退して連合国を称する事となるのですが、法制度上、アメリカには脱退の規程が無いので
リンカーン「違法じゃん。認めらんないよ」
となり、戦争へと突入していく訳です。
奴隷制反対について人道的な側面が無いとは言いませんが、根源にあるのは経済的なものです。
苦役に近い単純労働力を大量に必要とする農業と異なり、工業においては一定程度の基礎学力と労働意欲が無ければ非効率であり、奴隷制とは相性が悪い。
また、奴隷という安価な労働力に雇用を奪われ、低賃金となっていると感じる層も「奴隷制」には反対した訳ですが、奴隷制反対が黒人差別反対とは必ずしもイコールでないのが物悲しい話。
こうしてみると、南北戦争時と現在の状況には通底するところも多いのですが、やはり国家としての規模が違い過ぎるので「俺たちゃトランプ以外大統領と認めねえ!」とか言って合衆国から州が脱退して内戦をおっ始める、という事態にはならない。
南北戦争時の連合国、即ち脱退州は奴隷制が経済の根幹となっていたため、州として脱退するコンセンサスが得られ易かった。
しかし、味方も多いが敵も多いトランプを担いで脱退する、なんてのは例え共和党優勢の州でも無理筋に過ぎる。
精々、選挙結果に難癖つけて法廷闘争、というのが関の山でしょう。
では、ハリスが勝ってもアメリカ情勢は安心できるか、と問われれば残念ながら、そして当然ながら安心・安全とは程遠い、と評価せざるを得ない。
ポリティカルディバイドは地域による傾向はあるものの、南北戦争の様に南部と北部に綺麗に別れてはおらず、斑ら模様となっており、場合によっては家族内においても亀裂が生じている。
南北戦争は決着に4年を要したが、戦争という過程を経た事で一定のカタルシスが生じ、また、リンカーンが南部に対し比較的穏健な政策を取ったことから内戦後の再統合は比較的穏当に進んだと言える。
しかし、いま起きているポリティカルディバイドは内戦とならない分、決着というカタルシスの得られぬまま進行して行かざるを得ない。
民主主義における決着とは選挙結果を以ってもたらされるものですが、トランプ支持者は負ければ「選挙が盗まれた」とするでしょう。
実際に盗まれたかは関係がない、彼らには自らの意思が通らなかった事が何より許せないのであり、それはもはや民主主義ではない。
多くのアメリカ人が、この大統領選に不安を抱いている。
投票・集計・結果、いずれの場面でも混乱或いは騒乱が懸念される。
内戦、とまでは行かずともテロルレベルの低烈度紛争に近い騒乱は充分に有り得る。
残念なことにアメリカの混乱を望むのはロシアだけではない。連中の付け込む要素は多すぎる。
テロルはカタルシスより分断を深める。どちらが勝利してもアメリカのポリティカルディバイドは深刻なものとなり、国民の再統合は4年程度では成らない。
ある意味、これがアメリカ第二のシヴィルウォーの姿かもしれない。
お先真っ暗すぎる。




