ヴィクトリープラン
ヴィクトリープラン
ゼレンスキーが、バイデン、ハリスそしてトランプに示す、としていたウクライナ戦争終結に向けたグランドデザイン、即ちヴィクトリープラン(勝利計画)は策定が完了し、その概要が少しずつ漏れ伝わってきています。
ただし具体的な詳細は公開されておらず、フェイクニュースの対象ともなっていますが、少なくとも領土割譲や近々に戦争終結を求める内容でない事は確かなようです。
この計画にはアメリカ議会、というか共和党が求めていた「支援に対する効果」が包含されているハズです。
昨年、アメリカの予算審議がストップした要因、というか共和党が拒絶した際の言い分が、平たく言えば「何時までアメリカの金をウクライナに注ぎ込む積もりだ?金を使いたいのなら、その効果とウクライナが勝つという筋道を示せ」です。
まぁ、言ってる事は当然と言えば当然の内容ではあります。どんな目的であろうと血税で賄われる予算を野放図に注ぎ込む事が許される訳ではない。
大統領選がどっちに転んだとしても、連邦議会は共和党が優位となる可能性は高い。ヴィクトリープランは戦争計画であると同時にアメリカの政治リスクへの対応策でもある訳です。
計画は軍事・経済・政治・外交の四つの柱からなり、短期・中期・長期のステップを経て戦争(勝利)後の安全保障まで見据えたグランドデザインになっていると見られます。
問題は計画の実現可能性というより、アメリカの評価です。
ブリンケン国務長官ら現政権スタッフからは「機能する」「実行可能な戦略と計画」「現実的で公正な平和」と肯定的な評価を得ていますが、これは、計画策定の段階からアメリカのスタッフが関与していると考えられるので、提示されている時点でバイデン、おそらくはハリスまで了解済みの内容に仕上げているハズで、国連の場でゼレンスキーがバイデンに提示するというのは、外交プロトコル上の儀礼に過ぎません。
問題というのはコレからで、大統領選の結果により全てひっくり返される可能性が高い。
ヴァンスは、「ウクライナはロシアに勝てっこない、事の善悪みたいなセンチな理由でウクライナに肩入れすんな。支援は全て打ち切って借款は返してもらう。ウクライナのNATO入りは認めず中立とし、現在の戦線で停戦するのが平和ってもんだろ」というスタンスです。比喩的表現ではなく、まんまこの通りの事を言っています。昨年のウクライナ支援予算にも最後まで反対していました。
つまり、ウクライナは全面降伏してロシアの好きにさせろ、と言ってる訳。
さすがにトランプは口を噤むだけの分別はありますが、考えている事はヴァンスと大して変わらないでしょう。
ヴィクトリープランには、アメリカの一方的な支出に留まらず、ウクライナからの返済と装備購入や投資案件などトランプが好みそうなディールが盛り込まれていると想定されます。
しかし、バイデンやハリスが良しとした計画を選挙モードのトランプが酷評し「俺ならもっと上手くやる」と根拠もなく吹かすのはほぼ間違いない。
この辺をクリアする秘策がゼレンスキーに有るのだろうか?ハリスに全てを賭けるのは、現時点でも良く言って五分五分です。
尤も、ウクライナがクルスクを占拠している限り、ヴァンスが言う展開にはなりません。
そしてクルスク方面の戦闘は予想以上にロシア軍の動きが鈍い。ロシア軍の展開状況から見て1・2ヶ月でウクライナ軍を排除するのはほぼ不可能に思われます。
ドンバスとクルスクの二正面で攻勢を仕掛けるには、直接戦闘に参加する兵員の不足もさることながら、後方で兵站を支える事務系のマンパワーも大きく不足していると見られている。
現在のクルスク方面のロシア軍の動きを見る限り、攻勢に出るより徹底して防備を堅めるべき状況に思えますが、まぁ、これもチンピラ皇帝の面子の問題なのでしょう。
現状、クルスク侵攻はヴィクトリープランの一端として機能している。
ハリスが当選すれば、共和党の抵抗はあるにせよヴィクトリープランは実行されるでしょう。
懸念されるのがトランプ当選である事は言うまでもない。
ヴィクトリープランを提示されたトランプの反応が注目されます。




