閑話休題
閑話休題
チンピラ皇帝5期目の執政が始まりました。
プーチンは就任式と戦勝記念パレードに出席し演説しています。
式典映像を観ていましたが、特段注目に値する発言はありませんね。「何時でも核ぶっ込めるからな」なんてチンピラらしい恫喝も凋落ぶりが目立つだけです。
お飾りレベルの核部隊を振りかざさなければならない時点で深刻な北朝鮮化が察せられるというもの。
本来なら、栄光の象徴たる大統領就任式や対独戦勝記念日は、自負漲る皇帝を万雷の喝采で臣民が迎え、諸外国の特使が祝意を示すものです。
戦勝記念パレードの動員は昨年より増えて見えるものの、装備はウクライナで使用し無さそうなものばかりで、戦車などは旧式T34が一両のみ、ロートル車両を引っ張ってきた理由が振るっていて、ドイツに勝利した戦車だとさ。
プーチンは、一時の自信喪失状態は脱していますが、不安が拭いきれない様子も見てとれます。結局、2年3ヶ月の期間とソ連時代から積み上げてきた膨大な軍事資産、莫大な戦費と数十万人の兵士を浪費して、キーウは元よりドンバスすら落とせず、栄光の日に華を添える事すら出来ない。
なりふり構わず攻めさせても、損耗に見合うと言える成果には繋がらず、遂にアメリカはウクライナ支援予算を通してしまった。西側への分断工作も奏功しているとは言えない状態で、NATOはジリジリと包囲を強めている。味方はならず者国家が中心で、潜在的な脅威である中国に尻尾を振らねば国際的立場の維持も難しい。
楽観視できる方がおかしなレベルで、4期目就任時の不遜なまでの自信に満ちた笑みに比べ、微妙にしょぼくれた卑屈な笑顔は、6年の加齢を考慮しても明らかに憔悴の跡が見える。
まぁ、戦勝記念日の方は寒かった所為もあるかも知れませんが、、、ロシアとは言え戦勝記念日に雪とかビックリして別の画像が差し込まれたのかと思ったよ。
政権幹部の貼り付けた様な笑顔も、やる気が有るのか無いのか白けた感じで、コレなら北朝鮮の方がお約束感もあってまだ観てられる。
式典に西側諸国がボイコットしているのは「招待してない」で格好も付きますが、アルメニアなど旧ソ連構成国の不参加は、どう言い繕ってもロシアの凋落とプーチンへの反発を明確に示しています。
チンピラ皇帝はロシアのお友達の方が世界の多数派だと嘯いていますが、ロシアの窮状に付け込んで甘い汁を吸ってるだけで、助けてやろうなんてのは精々イランくらいのもの。
戴冠式を終えたプーチンが早速中国というか習近平詣でに馳せ参じるのも、もはや中国無くしてロシアは色んなとこが立ち行かなくなっていると骨身に沁みて理解しているからです。習近平との謁見で甘い毒杯をどれだけ呷ることになるか分かりませんが、飲まない選択肢は無い。
プーチンの執政自体はメドベージェフ時代も含めて変わる事がある訳でも無いのですが、大統領就任に伴い内閣は解散し、プーチンによる首班指名が行われます。
新たに、ではなく続投となったのは2020年から青びょうたんの後を受けて首相に就任しているミシュスチンです。
以前から、影が薄いだのロシア国民でさえ名前覚えてないだの大層失礼な事を言われたロシア首相ですが、ロシア憲政上のナンバー2であり、続投はまぁ既定路線と目されていました。
ミシュスチンは経済系のテクノクラートで、大統領の座を脅やかす権力基盤を持たず、そんなタイプでもないからです。増税に向けた体制固めとも言われていますが、理由としては二の次、三の次の話。
そういう意味で、今回の組閣で個人的に注目していたのはショイグ、ゲラシモフとパトルシェフ、ドミトリー・パトルシェフの処遇。
ショイグは国防相としてウクライナ戦争に当初から当たってきましたが、軍務経験も無く実務能力には疑問符が付いており、戦争が泥沼化した責任を問われ更迭の噂は絶えませんでした。
そのショイグは安全保障会議書記への異動が速報で伝わっています。パトルシェフの後任になりますね。ゲラシモフはウクライナ特別軍事作戦総司令を留任です。
このタイミングでの同会議書記への異動は、更迭ではないというプーチンの意思表示で、ポスト的に叩かれがちな子飼いのショイグに配慮したものでしょう。ゲラシモフは、まぁ、引き続き頑張れ、と、、、
安全保障会議の意思決定は事実上議長であるプーチン一人に委ねられており、事務方トップの書記は名誉職と目されますが、安全保障面における省庁間横断的な同会議で、名誉職に近いとは言え議決権を有する書記職にパトルシェフを置いておきたくない、というプーチンの思惑が透けて見えます。
目的はパトルシェフの排除というよりもプリンスの一人であるD・パトルシェフの権力基盤を削ぐことにあるのではないでしょうか。パトルシェフの異動に係るアナウンスはまだ出ていませんが、当たり障りの無い名誉職に就くパターン。
D・パトルシェフの方は農相から副首相へ「昇格」とされていますが、、、プーチンが副なんちゃらみたいな職を当てがうのは実務家としてのテクノクラートか飼い殺しと見るべきでしょう。
副首相と言ってもロシアでは10人くらい居るので首相に次ぐナンバー3どころか第一副首相でもなければその他大勢でしかありません。
プーチンが鷹揚に振る舞うのは相手が皇帝位を脅やかす存在でない時だけです。青びょうたんが千切れるほど尻尾を振って従順に振る舞って見せても「僕を大統領にしてワン!」という心の声がダダ漏れで話になりません。メドベージェフは2020年に首相を更迭され、安全保障会議「副」議長に就きました。即ち、ここでキャリアは終わりという事です。どうも本人は気付いていないというか気付きたくないのかも知れませんが、大統領への返り咲きなどプーチンが消えてもあり得ません。元大統領としてそこそこの名誉職を歴任してフェードアウトするだけです。
戦争が泥沼化しているのに政争か、と思われるでしょうが、プーチンの最優先事項は自分の生命と皇帝位で、ウクライナとの戦争など比較の対象にすらなりません。泥沼化しているからこそ政争も果てしなく続く。
ロシアのプロパガンダは「ウクライナはロシアと和平のチャンスがあったのに西側の圧力で機会を失った。戦争拡大は西側の所為だ」と繰り返し繰り返し責任転嫁していますが、和平がならなかったのは、ウクライナが「プーチンが大統領でいる限り話をしないよ」とまぁ、気持ちは分かるけど、、、な条件だしたからチンピラ皇帝が怒り狂っただけの事。
むしろNATO事務局などはプーチンの進退はタブーとウクライナを宥める側だったくらいです。
ロシアは、衰退の道を転がり落ちています。どう覆い隠そうとしても実体経済に良い方向へ進む要素がない。
ロシアがソ連崩壊から立ち直れた要因を悉くチンピラ皇帝がふいにした。軍事などの限られたブロック以外は非常に苦しい。国民は元よりオリガルヒからも怨嗟の声は高まっていくでしょう。
チンピラ皇帝はますます後継者潰しに偏執的になっていくしかない、今回はシロヴィキの重鎮パトルシェフを切った形です。
一部FSB系からの反発はあるでしょうが、ボルトニコフが抑えると言うか潰します。ボルトニコフはパトルシェフの後を受けFSB長官となった人物で、これも宮廷闘争の結果の人事です。
スターリンや北朝鮮の事例を見ても、あっち系(あっち系てなんぞ)の支配者は自身の権力基盤であっても容赦なく切ります。いきなり処されたりシベリア送りにならないだけまだマシなのかも知れません。
あっち系の嫌な面の一つ、恐怖政治はこれからが本番です。




