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ロシア大統領選

ロシア大統領選


さて、ご存知の通り選挙イヤーの只中で最も注目に値しない選挙が間もなく始まります。

ロシアという、世界の安全保障、ウクライナ戦争の行方、エネルギー政策にまで影響を及ぼす国家の大統領が選ばれるというのに、誰が大統領になるか誰も気にしていない。

当然、プーチン以外の候補はラシアンファンタジーのエキストラに過ぎません。

なんちゃって民主主義の国には、事実上、選挙など存在しない。

反戦を掲げた候補者が候補者登録を拒否されたのも、別にプーチンの選出を危うくするからでも何でも無く、単に「目障りだ」という程度の理由でしょう。


まぁ、票読みしなくていいのは楽なんですけど、代わりにロシアでは宮廷パワーゲームが暗闘を繰り広げているんで、票読みより難しい面もあります。

いずれにせよ、当面、プーチン朝がひっくり返る気配は無い。

結果の決まり切った選挙の話なんかしてもしょうがないと思うんですけどねぇ。

と言う訳で(どういう訳?)ロシア選挙関連の情報戦とかプロパガンダの話でお茶を濁しましょうか。


夢の国ロシアの王様を決めるのに選挙などは必要ありません。

では、何故お金も手間もかかる選挙というセレモニーをやって見せるかと言えば、支配の正統性を示すためです。

それも、ロシアの場合、国民に対してはプーチン君の勢威を見せ付けるという面の方が強く、支配の正統性を示す対象は主に国際社会です。

俺はチンピラではなく正統な支配者だと国際社会に宣言する行為という訳。

ロシアがウクライナの占領地域で行った選挙(笑)と称する行為に鑑みれば、大統領選挙(笑)などどの様な代物か言うまでもないし、国際社会からは白い目で見られる。

それ故に、ロシアは盛んに「ロシアは立派な民主主義国家だ」とか「ロシアの民主主義は世界一ィィイイイィィィィ!!」とプロパガンダを繰り返すのです。

定番は「ロシアという国は、強権的な支配者の方が繁栄するし国民も強い支配者を望んでいる」即ち、ロシア国民がプーチンを選ぶ事は当然で何の不思議も無い、というもの。


ちゃんちゃら可笑しいわ


一面においてソレは事実と言えるでしょう。

誰しも、自分の国が三流国家であると思いたくはないでしょうし、大抵の人は自分に害が及ばなければどれほど非道な強権的支配者であろうと見て見ぬフリが出来るものです。

しかし、プロパガンダが言う「国民」とは何を指しているのでしょうか?

ロシアには1億4千万人ほどの人口があります。大体8割方がロシア人で、残りの2割は100を超える多民族の集合です。乱暴な言い方になりますが、つまりは強いロシアの支配者に征服された被征服民という事。

ウクライナ戦争を見ても民族的ロシア人以外の民族、特に少数民族に対する扱いはかなり酷い。

民族的ロシア人が繁栄している影には略取され迫害される他民族が存在します。彼らは強権的な支配者であるプーチンを望むでしょうか?

例えば、チェチェン人は歴史的にロシアによる支配に対する頑強な抵抗を行っています。

カディロフがプーチンの犬の様に言われるのは、チェチェンにおいて政治的基盤の危うかったカディロフをチェチェンのトップに据えるのと引き換えに不満分子を抑えさせているからです。

ロシアでは、プーチン政権下となってから連邦を構成する共和国のトップはロシア大統領による指名制に変更されました。即ち、それぞれの共和国は自国のトップを選ぶ事もできず、プーチンの言いなりになる首長を押し付けられている訳です。

首長、という呼称もカディロフが「ロシア大統領がいるのに(共和国)大統領は名乗れねえ!」とか言い出して首長を名乗るようになりました。マジで犬。

カディロフの様に強権的支配者を利用している者にはプーチンは望ましい支配者かも知れませんが、抑え付けられている大多数にとっては反発の対象でしかない。

そもそも、強権とは不満や反発があろうと押し通すためのものです。

望まれた支配者であれば強権など最初から必要がない。強権的な強い支配者を望んでいるなどという詭弁は強権に圧殺される国民を無視しているからこそ言える論理破綻した言葉に過ぎない。


そして、それは人口の8割を占めるロシア人とて全く変わる事はない。

ソシオパスなプーチンにとってロシア人とは自身を崇め奉り、ロシアを運営していくための労働力に過ぎない。

1億人居るのなら100万人が戦争で死のうと小指の先を切ったほどの痛みも感じないし、経済的な損失を気にしなければ数千万人が死のうと心も痛みません。それがソ連・ロシアの「強い支配者」というものです。

プーチンが盛んに顕彰する「偉大なロシア(ソ連)の指導者(支配者)」像とはそういった類いの人物です。

ロシア人はラシアンファンタジーの中で生きていますから、プーチンが「スターリンまんせー!ハラショーピョートル!」と叫べば「ああ、アレを褒め称えればいいんだな」と調子を合わせてくれます。

そんなものを見て「ロシアでは強い支配者を望んでいる」などと言うのは笑えないアネクドートと同じ。


プーチンを含め、ソ連・ロシアの支配者は、自身を「望まれる支配者」などと思っていないからこそ、秘密警察を権力基盤として重視してきました。

秘密警察に睨まれながらの選挙に何か意味があるでしょうか?ロシアでプーチンに投票するのは、同調圧力でも何かに期待しているものでもない。生命を守るためです。

特に、今回の選挙から、投票はオンライン投票が「推奨」されます。この意味は容易に理解できるでしょう。


今更改めて言うほどの事でもありませんが、ロシアの選挙には民主主義の欠片も存在しない。

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