ザルジニー解任?
ザルジニー解任?
ウクライナ関連の報道で、現在のウクライナ軍総司令であるザルジニー大将が総司令を解任される、とするものが相次いでいます。
昨年、大反攻の雲行きが怪しくなったあたりからゼレンスキー政権とザルジニー総司令との間に隙間風が吹いている、という情報がチラホラ聞こえていたので懸念はされていたのですが、、、
まず、解任報道が事実か否かは不明です。
ロシア側のフェイクニュースである可能性も無きにしもあらず、です。
即ち、それはウクライナ側の悪手という意味。
ザルジニー総司令は、ウクライナ戦争を最初から指揮してきたウクライナ防衛の国民的英雄です。
戦争初期、ロシア軍の空爆などから対空装備を秘匿し、自軍の損害を抑えつつロシア軍に出血を強いる遅滞戦術で粘り強く戦ってきました。
解任となれば兵士の動揺は避けられないし、国民からも不満の声があがるでしょう。
私がロシア側であれば分断工作の一つとして採用するでしょうし、不可視の戦域の最重要分野であるウクライナ国内においてロシアが何の分断工作も行っていないなどという事はあり得ません。
政府と国民、政権と軍、細かく言えば軍制の縦と横の分断が戦争遂行能力にどれだけ悪影響を与えるかはロシア軍を見れば能く分かります。
ロシアという国が本当の意味で一丸となってウクライナと戦っていたのなら、おそらくその時点でウクライナに勝ち目は無かった。
ロシアによる分断工作は、レベル感は様々でしょうが、リアリティの無い陰謀論ではなく、現在進行形の深刻な脅威です。
その対象はウクライナ・アメリカは元より、日本とて他人事ではありません。というか日本とか工作対象としてはチョロ過ぎでしょう。
まぁ、その話は機会が有れば触れるとして、ザルジニー総司令の解任報道にも何らかの分断工作が関与している可能性は割と高いと思います。
それは、むしろ解任報道がフェイクでない場合の方が深刻です。
政権と軍の分断工作はある意味シンプルです。
「ザルジニーはゼレンスキー政権に批判的だ(丸っきりの嘘でも無い)」「ザルジニーがクーデターを図っている」「ザルジニーは大統領選のライバルとなる」などなど、逆に「ゼレンスキーがザルジニー排除に動いている」などと現在の流れになる様に工作していく。
ゼレンスキーとザルジニーのどちらかにでも疑心暗鬼が起きれば、嘘が真になったりもするし、そこまで行かずとも動揺を誘えるだけでも充分な価値がある。
やらないという選択肢は無いし、事実として、プリゴジンの乱やスロヴィキン更迭などではウクライナも同じ事をやっています。
繰り返すようですが、解任が事実であれば、ウクライナのソレは利敵行為に等しい。
戦争初期の段階から、ゼレンスキーとザルジニーのどちらかが居なければウクライナが負けていた可能性は割と高いと思う。
逆に言えば「両雄並び立たず」と史記の例えを出すまでもなく、分断工作の付け入る隙も大きいという事。
ゼレンスキー政権とザルジニーの軍首脳部に意見の対立があった事自体は事実かと思います。
昨年の大反攻で泥濘期の到来により中止か継続の選択となったとき、ザルジニーは中止を、おそらくはF16を待って再戦を期したのでしょう。
軍人としては自然な判断かと思いますし、私個人としても心情的に是としたい。
しかし、戦果を求め、また求められるゼレンスキー政権として、十数km前線を押し上げただけでは終われなかった。
結果として大反攻は継続し、ご存知のとおり失敗に終わりました。
軍人として最終的に政権の意向に従い継戦したザルジニーに非はありません。
大反攻の失敗も、結果論ですがスロヴィキンラインが強烈過ぎて航空支援抜きに実行するのは無理があった、という事でしょう。
その責をザルジニーに押し付けるのは酷というものです。
戦争が終われば、ゼレンスキー政権を含め何らかの形で責任が問われる場面もあり得るでしょう。
しかし、現在の局面でザルジニー解任はタイミングが悪い。
まぁ、これがエンタメ小説の世界であれば、敗戦を覚悟した政権が再起を期して軍司令を温存するための解任だった、な〜んてお約束展開もあるかも知れませんけどね。
ウクライナに仲間割れなどしている余裕は無い。
特に、今後、防衛主体の長期戦で最終的な勝利を得ようとするなら、ザルジニーを欠くことはできないハズ。
くれぐれもロシアを利するような事は起こさないで欲しい。




