周辺事態
周辺事態
ロシアによるウクライナへの侵略戦争は、言うまでもなく様々な国に影響を与えています。
遠く離れた日本においてもインフレなどの少なからぬ影響が現れていますが、ウクライナやロシア近隣の国家には対岸の火事などではない。
仮に、昨年2月にロシアのウクライナ解体が電撃的に成功していたなら「その次」を意識せざるを得ない国家は多い。彼らにしてみれば、ウクライナへの支援はロシアに対する盾でもあるわけで、決して国際秩序など理念の話ではなく、実利の話です。
ここで一つ問題となるのは、民主主義国家というものは、多様な価値観と利害関係に大きく左右される、という事。
日本に親露政治家や著名人が居るように、欧米にも多くの親露人脈があります。
特に、旧共産圏の国家では、共産主義により絶大な利益を得ていた者は日本などとは比較にならないほど多いし、現在、ロシアから有形無形の利益を供与されている者も多く、民主主義国家においても専制国家に与する政治家は数多存在しています。
まぁ、大なり小なり国を売って己の利益に変えるのが政治家なので、今更取りたてて騒ぐ話ではありませんし、そもそも政治家という権力者には専制国家の方が魅力的に映るものです。
共産党などという民主主義とは相容れない存在が日本の国会や地方議会に議席を有し、日本の立法と行政に一定の影響力を保持しているのは、ある意味で民主主義の重過ぎるコストの実例です。
ロシアは大国であり、様々な利権が絡んでいますが、最重要利権であるエネルギーは、当然ながら他国を取り込むツールとして機能しています。
ドイツの元首相がロシアのガス会社で取締役をやってるなんてのは分かりやす過ぎる実例。
そこまでしなくとも、ガスや石油の開発事業に他国の商社が関与しようとする時「我々ロシアは貴国の●●を通さなければビジネスはしない」と一言いうだけで計り知れない利権に繋がるのです。
この程度の利益供与であっても、喉から手が出るほど欲しい政治家など幾らでも見つけられますし、利権にどっぷり浸かっている政治家などにしてみれば、ロシアに対する制裁は手脚を捥がれる程の激痛でしょう。
プロパガンダの稿でも触れましたが、ロシアなど専制国家は民主主義国家の言論の自由を利用します。
著名人を使って自国に有利な発信するだけでは終わりません。アメリカなどでも問題となっていますが、サイバー戦・情報戦の領域では、SNSを通じて疲れを知らない大量のボットが日夜世論操作に活動しています。
日本での活動は話題となっていない?話題となるハズもないでしょう、日本にはそういった言論・世論操作を抑止する制度も検出する機能も存在しない。
日本という国が情報戦で対抗する術は個人個人の情報リテラシーとモラルに頼るしかないという寒過ぎる実状、このスパイ防止法すら持たない国家の惨状をおかしいと思わない方が異常でしょう。
アメリカがウクライナ支援を続ける限り、ロシアの勝利はありません。
バイデンはウクライナを勝たせる積もりですが、予算を下ろす議会がウクライナ支援予算をストップしました。
アメリカ政府関係の会計期間は10/1から9/30です。大抵の国は予算の裏付け無しに活動はできません。
予算を審議するのが議会ですが、来年9月末までの予算は審議が紛糾し、決着の見込みがありません。
このため、アメリカ議会は当面45日分の予算を「繋ぎ」として成立させました。
この繋ぎ予算も本当にギリギリの成立で、個人的にハラハラしながら観ていたのですが、成立に向けた妥協の結果、繋ぎ予算にウクライナ支援予算は盛り込まれませんでした。
予算成立は議会の責務であり、アメリカでは、これまでも幾たびか予算が成立しない危機に直面してきましたが、最終的には国家の威信を優先して成立させていたのです。
今回、アメリカの来年度予算最大の焦点となっているのが、アメリカ議会に30議席ほどの勢力を持つ「自由議連」の動向です。
自由議連は保守系の共和党にあっても「超右翼」とか「強硬派」と称されるガチ勢なんですが、ウクライナ支援の見直しなどを求めて予算成立に抵抗しています。
彼らの言い分は一見分からなくもありません。
自由議連曰く「ウクライナより国内を優先しろ」
まぁ、ご想像の通りかと思いますが、トランプのお仲間です。
アメリカの共和党は保守、即ちエスタブリッシュメントが支配する傾向が強く、反共産主義で、どちらかと言えばロシアを叩く側の政党、、、でした。
それが今やロシアを利する側に回っている。
アメリカの政党政治は日本とは比較にならないほどダイナミックではあるのですが、ネオコンやエスタブリッシュメントではなく、高々30議席の自由議連に振り回されるアメリカの姿も民主主義の一面を示していると言えるでしょう。
とは言え、自由議連にキャスティングボートを握られている状況は非常に拙い。
ウクライナ支援予算は枯渇こそしていないものの当然ながら来年9月までは保ちません。
自由議連の議席数を考えればウクライナ支援予算を0にまでは絞れないでしょうが、大きく制限される可能性は高い。
ウクライナ支援は超党派で望むべきものですが、予算は当然ながらアメリカ政府の一年間の活動を左右するもので、様々な駆け引きの材料となるため、一筋縄にはいかず、繋ぎ予算の期限となる来月半ばまでに事態が好転する可能性は低い、と言わざるを得ない。
この状況は、中間選挙の結果からある程度予想はされていましたが、ウクライナが秋・冬にかけても反攻を継続し、弾薬の供与が求められるこのタイミングでの顕在化はNATO諸国にも動揺が広がるかも知れません。
間の悪いことにNATO加盟国であり、ウクライナ支援に積極的であったスロバキアで、ウクライナ支援反対を掲げる政党が選挙に勝利し、第1党となる事態まで起きています。
スロバキアて、、、ウクライナの次と言われている有力候補じゃんね、、、まぁ、先に触れているように旧共産圏の国家はロシアと繋がりが太く根深いので、驚きではなく諦めの境地ですが、ここのところ親露人脈・政治家の攻勢が凄い。
ロシアは、戦場の劣勢を民主主義最大の弱点である民意を攻める事で覆そうとしている。それは、ラブロフらを始めとする外交攻勢の一端からも明らかです。
ロシアは外交・スポーツ・文化などなど様々なアクセス経路から使える手段を使えるだけ使って、ロシアの孤立を回避し、ウクライナを孤立させようと猛烈に活動している。
戦争が総力戦である以上、ロシアの戦場外の動きは至極当然のものです。
本来なら、国家レベルでロシアの分断工作に対抗しなければならないのですが、サイバーなど不可視の戦域での活動を含めた総合力はロシア優位に傾いています。
ウクライナの戦力は周辺事態に左右される危うさを常に抱えている。
言うまでもなく、最大のファクターがアメリカであり、予算成立の行方が懸念されています。
自由議連を変心させるのは不可能でしょうが、自由議連そのものは議席の一割も押さえてはいない。超党派で対応すれば乗り切れるハズです。
アメリカの威信に掛けて支援予算を確保すべきです。




