トリチウム
トリチウム
めんどくせぇ
って言っちゃいけないのかね?
福島原発の処理水の問題は安全性とは別次元の話になっており、中国の政治問題のすり替えでしか無い。
中国や中国の尻馬に乗って騒ぐ連中を相手に、事なかれ主義で譲歩する姿勢を見せてはならない。
これは処理水自体の問題ではない。処理水以外の政治的不満をすり替えているだけだ。
正直、こんなの言うまでもない話だろ?
まぁ、うんざりする話ですが、本稿ではトリチウムについてザッと解説します。
トリチウムは三重水素とも呼ばれる水素の同位体になります。
言うまでもなく水素は陽子1個に電子1個からなる最も軽い元素です。
水素が中性子を1個取り込むと約2倍の重さになり、重水素、デューテリウムと呼ばれます。更に中性子が1個取り込まれ、陽子1個、中性子2個、電子1個となった原子が(約)3倍の重さの水素である三重水素、即ちトリチウムです。
水素は地球に遍在しており、海水は最も分かり易く水として存在する水素であり、大気中や地中にも水分として存在する外、様々な形の化合物として地中・海中・大気中に存在しています。
その水素が中性子を取り込み、重水素や三重水素に変化するのは自然発生的なものと人為的に生じるものがあります。
自然発生する同位体は主に宇宙線により生成された中性子が大気中の水分(水素)に取り込まれる事で生じます。
人為的なものは核兵器関連と原発関連です。
以前、核に関する説明で、核分裂時に放出される中性子が、ウラン235など壊れやすい原子を壊すことなく周囲の物質に取り込まれると、何の変哲もない物質が放射性物質に変わる、とお話ししたと思いますが、核兵器や原発で起きる人為(事故を含む)的な中性子の生成、これが水の構成要素である水素を同位体に変えるのです。
同位体は原子が中性子を取り込んだもので、中性子を取り込んだまま安定する原子は安定同位体と呼ばれ、誘導性放射する事はありません。重水素は安定同位体です。
一方、中性子を取り込んだ事で原子が不安定化すると自壊して別の物質に変化します。この自壊する過程で誘導性放射するため、放射性同位体、即ち放射性物質と呼ばれるのです。
二つの中性子を取り込んだ三重水素は不安定なため、中性子1個が電子1個を放出して陽子に変わり、陽子2個、中性子1個、電子2個からなるヘリウム3に変わります。ヘリウム3は安定同位体なので、放射線を発することはありません。
つまり、1個のトリチウムが安定同位体になるまでに放出する放射線は電子1個だけです。
まぁ、正確にはニュートリノも同時に放出されますが、ニュートリノは物質にほぼ影響を与えないのでここでは省きます(めんどくせぇからではない)。
電子は中性子や陽子の1/1840の重さしかありません。電子が放射され(β線と言います)ても、そのエネルギーは非常に小さい。
以前も説明したように、核エネルギーとは質量がエネルギーに変換されたものです。
三重水素とヘリウム3の質量差は極微であり、変換されるエネルギーが非常に小さいため、三重水素から放出されるβ線は大気中では数㎜しか飛びません。
原子に取り込まれるまで、ほぼ無制限に飛び回る中性子線は元より、同じβ線でも数m飛ぶものもあることを考えれば、トリチウムの放射線が比較するのも馬鹿馬鹿しいほど低エネルギーの放射線であることが理解できるのではないでしょうか。
付け加えるなら、β線は中性子線とは異なり、外の物質を誘導性放射させる事もありません。
トリチウムの人体への影響?勿論、有害か無害かで言えば有害です。
しかし、それは、この世界に存在する物質で人体に無害な物質など存在しない。そういうレベルでの話です。
私達が呼吸している大気、飲食している無害と思っている食べ物や飲料、外出時に浴びている陽光、家に籠っていてすら私達は様々な形で放射線に被曝しています。例え、プールの中に沈んだ鉛の部屋の中に隠れていたとしても、人体そのものが大量の水分で構成されていると理解すべきです。即ち、私達を構成する水分には自然発生のトリチウムが存在していると言う事。
トリチウムが怖しい?処理水とは無関係に私達の身の回りの水にもトリチウムは含まれているし、私達自身、トリチウムを含んでいます。処理水が汚染されていると言うなら、水分を有する全ての生命体は汚染されている事になります。
私達は日々、福島の処理水など話にならない程の放射線を浴びているし、私達の人体内部にも放射性物質は存在し、内部被曝しているという事。
因みに、水素以外にもカリウムなどの放射性同位体が私達の体内には存在し、放射線を放出しています。
こんなものが怖いですか?
また、放射性物質の話でよく勘違いされている言葉に「半減期」があると思います。
放射性物質が発する放射線量が半分になるまでの期間、と思っておられる方が多く、マクロ的視点では強ち間違っている訳でもないのですが、正確でも適切でもありません。
もうちょっとブレイクダウンするなら「放射性物質はずーっと放射線を出し続けていて、長い年月をかけて放射線の量が少しずつ減って行き、半減期になってやっと半分の量になる」という勘違いです。
単体の原子で見た場合、三重水素が電子を放出するのは1回だけです。
半減期というのは、放射性物質の原子が100個あった場合、50個が自壊するまでに掛かる期間を確率的に示したもの。逆に言えば、半減期が長いという事は、それだけ原子が安定していて、放射線が出る確率が低いという事に他ならない。
巷では、半減期が長い=それだけ長い間大量の放射線を出す危険な放射性物質、と、漠然とイメージされている方が多いのですが、完全な勘違いです。
因みに、劣化ウラン弾に使用されるウラン238は半減期が約45億年。異次元過ぎて私もピンとこない数値ですが、これは45億年間ず〜〜〜〜〜〜っっっっっと放射線を発しているのではなく、45億年かけて、やっと半分の数の原子が放射線を1回放出する、という意味。
三重水素の半減期は約12年、人間の視点では長い方です。換言するなら、エネルギーの弱い放射線を12年に1回放出する原子が2個の内1個存在する放射性物質という事。
これ、怖いですか?
一口に放射線と言っても、様々な放射線が存在し、一般的に放射線と呼ばれるものはα線、β線、中性子線、X線といった電離放射線を指しますが、光や電波などの非電離放射線も広義の放射線になります。
核兵器や原発で使用されるウラン235などの放射性物質は途轍もないエネルギーを持っており、放射線という目に見えない現象に怖しいイメージを抱くのは、ある意味当然のことでしょう。しかし、原子に関する基礎知識は中学校の教育課程で習得しているハズです。
核の問題は正しく怖れるべき、というのは全くもって正しい。
 




