榴弾砲
榴弾砲
ウクライナ軍はロシア軍を叩きのめす事を選択しました。
フランキングで側背を突くのでは無く、ヘッドオンで殴り合い、殴り倒すという事です。
機甲突破では機甲部隊が敵陣に突出することになります。
事前に抵抗力を奪うなり突破中は後方から支援するなりしなければ、機甲部隊は容易に孤立し袋叩きに遭う。
ウクライナ軍は機甲部隊を突出させるのではなく、前線そのものを押し上げようとしているのです。
具体的には榴弾砲で敵の砲兵部隊を攻撃し、敵の榴弾砲を破壊、若しくは後退させ、空白地を機械化歩兵部隊が制圧。この繰り返し。
塹壕を制圧する局面では、機甲部隊や機械化歩兵部隊も展開しますが、主軸となるのは砲兵部隊です。榴弾砲の撃ち合いが成否を決める。
当然ながらロシア軍も榴弾砲で応戦します。目標捕捉能力などの戦術的巧拙はありますが、火力勝負の面が強い。
榴弾砲はMBTに並ぶ陸戦の二本柱、陸戦がお家芸とも言えるロシア軍は榴弾砲の数と弾薬量はウクライナ軍を圧倒しており、火力差は10倍とも目されていました。
この戦争の序盤までは。
ウクライナ軍は開戦から一年半、ロシア軍に出血を強いてきました。
兵士から将校、大量の装備に弾薬、そして兵站能力。
ウクライナ軍にも相応の損害が生じていますが、総動員を掛けNATO諸国の支援を得ているウクライナに対し、部分的動員に留まり、ならず者国家の支援しか得られないロシアでは、損害からの回復力に明確な差異があります。
大反攻の経過を見る限り、既に、ロシア軍の火力面での優位は失われています。ウクライナ軍にクラスター弾が供与されたのも大きい。
榴弾砲は爆弾を30〜40km先まで撃ち出す兵器と考えればいい。敵陣で榴弾が炸裂すると非装甲目標であれば数十mの範囲を制圧できます。しかし、塹壕などに籠もられると直撃でもしない限り、ほとんど効果がありません。
これがクラスター弾であれば、当然、爆弾が小さくなるので、一つ一つの威力は低下しますが、より広範囲を一発で制圧可能となり、塹壕に直撃する可能性も高まります。威力の問題も塹壕に籠る守備兵や非装甲の砲兵部隊が相手であれば充分です。
つまり、クラスター弾を使った砲撃戦は、このゴリゴリの陸戦に非常にマッチしている、という事。
思い返してみると、クラスター弾供与の決定はタイミングが良く(最初から供与しておけば良かったとは思いますが)「弾薬不足のため」というのは丸っ切りの嘘ではないが、何となく方便めいた感じがします。
現状、ウクライナ軍優勢の状態が続いています。問題はこの後、泥濘期から厳冬期のビジョンをウクライナがどう描くか。
ある程度想像は付きますが、、、やはり泥濘期までに何処まで前線を押し上げられるかで選択肢も変わってきます。
もう一推し二推しできる手が欲しい。




