ナイフとバット
ナイフとバット
ウクライナ軍は分厚い地雷原を突破し、要衝トクマクを窺う位置まで進んでいます。
進行距離的には全行程の1/10程度ですが、非常に厄介だった地雷原を抜けたのは大きく、今後、進行速度は上がると考えられます。
因みに、この地雷原敷設を主導したのは、更迭されたスロヴィキンとの事。
名前を取ってスロヴィキンラインと呼ばれている様ですが、世界大戦時の実例と比較しても外に類を見ないレベルの規模と密度になっています。ロシアの山賊まじパネェっす。
スロヴィキンラインを抜けたウクライナ軍ですが、前途は多難です。
ロシア側も伏せていた主戦力を投入しており、主力と主力がヘッドオンでぶつかる撃ち合いの様相を呈している外、難儀な泥濘期が到来します。
ウクライナでは例年、8月下旬頃から秋雨の季節に入り、舗装路以外は泥濘と化します。
今年のウクライナは気温が高い所為か、未だ本格的な秋雨とはなっておらず、なんかまだ夏って感じ、、、気象データの予測も暫くは保ちそうですが、流石に一ヶ月は続かないでしょう、、、、、、続かんよね?
といいますか、現実的な話をするなら、ウクライナによる機甲突破戦、諸兵科連合作戦としては既に失敗と評価する方が適切かも知れません。
8月に入ってからは、ウクライナの大反攻における戦術は機甲突破ではなく、真正面からぶつかる力業の闘いに移行していました。
これはウクライナ軍が、NATO流の諸兵科連合作戦に見切りをつけ、第二次世界大戦ばりの陸戦、ゴリゴリの塹壕戦を選択したという事です。
分かり易くするために擬人化してみましょう。
機甲突破・諸兵科連合は、バットを持った相手の急所をナイフで突くものだと考えてください。
考え無しに急所を突こうとしても相手にバットで殴られるだけです。
そこで、諸兵科連合は先に投石などで相手を痛めつけ、バットを持てない様にし、或いはバットそのものを破壊して、半ば以上、トドメに近い状態で急所を突くことになります。本来は。
しかし、今回はむしろ相手からの投石の方が激しく、相手はバットを持ったまま。諸兵科連合が手傷を負いながら接近し、フェイントを交え急所を突こうとしても狙いは相手にもバレています。
これでは成功など覚束ない。
ウクライナは「これは無理ゲー」と考えを改めたのです。
ナイフでスマートに一撃必殺を狙うのではなく、自らもバットを持って野蛮に殴り合う事を選択した。
相手のバットをへし折るために殴り合い、相手を叩きのめすために殴り合う。
当然、ウクライナ側の犠牲も消耗も大きい。
それでも、F16などの航空支援が無い状態で諸兵科連合作戦は不可能に近いと判断した結果なのでしょう。
現状からみれば、おそらくは正しい。
時間と犠牲と消耗を許容できるなら、ウクライナは勝てます。
ロシアとて苦しいのはウクライナ以上、双方が散々殴り合ったところにF16が投入されれば勝負は決まりとなるでしょう。
そうなると焦点は、やはりアメリカの大統領選になります。
現在のウクライナの戦術は、突破するためのものでは無く、ロシア軍を叩きのめすためのものです。ロシア軍が倒れるか逃げ出すかするまで続く、明らかに時間を掛けることを許容した動きを見せています。
残念なことに今年中のF16供与は望み薄、そうなると時期的にアメリカ大統領選と選挙活動が戦局を直撃するのは避けられない。
これがウクライナが許容できるリスクであるのか懸念されます。




