通商破壊
通商破壊
ロシアは穀物輸出協定を失効させ、黒海を経てウクライナに向かう船舶は全て軍需物資を運搬していると看做し、船舶の国籍国は敵性国家扱いするとしています。
事実上の海上封鎖、通商破壊を行うと宣言している事になります。
対抗してウクライナも同様の措置を取ると宣言
、、、
う〜ん、、、オプションとして保持する意図かと思われますが、ロシアと同じ土俵に乗るのではなく、国際政治の場でロシアを糾弾する方が、個人的には正解の様に思います。
通商破壊は軍需物資の輸送を阻害することが主となる作戦ではなく、商船を含めた海運全般を阻害するものです。
ロシアの意図は明確で、当然ながら軍需物資などではなく、ウクライナの穀物輸出をストップさせるための宣言です。
軍事的に通商破壊に対抗するには海軍力が必要ですが、ウクライナに海軍と呼べるだけの戦力はありません。
軍事力では無く国際的な政治力で解決すべきでしょう。
欧州のパン籠、ウクライナの穀物は世界中に輸出されており、特に貧困国にあっては死活問題となるほど重要性が高く、ダイレクトに食糧危機に繋がる。
ロシアのソレは、食糧危機の責任を西側になすり付ける盗っ人猛々しい定番のやり口なわけですが、口実として「クリミア大橋攻撃に対する報復」が挙げられています。
7月17日にクリミア大橋が攻撃を受け、一部が崩落しています。
去年10月の爆発に続き二度目となりますが、今回の攻撃も実態がよく分からない。
いずれも攻撃主体が曖昧模糊としており、攻撃手段は今回「水上ドローン」とされていますが、どんなモノなのか分かっていません。
ウクライナ側はクリミア大橋を軍事目標だとしながら、攻撃への関与は曖昧にしています。
常識的にはクリミア大橋を攻撃するのはウクライナ側です。しかし、前回の爆発時にも述べましたが、これが攻撃であるなら余りにも破壊するという意思が徹底されていない。
鉄道部隊の稿でも触れた様にロシア軍の補給は鉄道に大きく依存しています。
クリミア大橋を軍事的に捉えるなら、ターゲットとなるのは道路橋ではなく鉄道橋になるハズです。
鉄道部隊と言えども橋脚を破壊されては手に余る。クリミアの急所は二箇所ありますが、最も効果的であるのはクリミア大橋の鉄道橋部になります。
道路橋への攻撃は象徴的な意味しか無い。
私は、クリミア大橋を対象とする偽旗作戦は、プーチンの矜持を傷つけるものであり、可能性は低いと考えていました。
しかし、所謂ワグネルの乱でも明らかな様に、プーチンはロシア国内の諸勢力をグリップ出来ていない。
カディロフなら、プーチンに黙ってクリミア大橋を補給に影響の小さいレベルで爆破しかねない、とも思っていましたが、或いは、FSB辺りがやったとしても今の状況なら違和感は無い。
というか、食糧危機の創出までが一連の偽旗作戦であれば、FSBがやったと考える方が腑に落ちるくらいです。
まぁ、この辺の話は妄想に過ぎません。問題はロシアの通商破壊の実効性でしょう。
黒海でのロシア海軍は旗艦モスクワを失っているだけでなく、老朽艦ばかりで作戦行動できる艦は多くはないハズです。
とは言え、海軍力が無きに等しいウクライナ相手の通商破壊であれば十分可能。この状態では、例え、通商破壊が脅しであったとしても商船が強行輸送するのは難しい。
ロシアの目的は食糧危機を盾に様々な制裁措置を解除させようとするものだと考えられます。
逆に言えば、制裁措置が効果的であることの証左でもあり、解除される可能性は低いでしょう。
だからといって、ロシアに対抗してウクライナも黒海で通商破壊を行うというのは現実的ではありません。
ここは中国やインドといった、ロシアが頭が上がらない国を巻き込むべきです。
通商破壊は民間人の殺傷にも繋がりかねない。
ロシアが民間人殺傷など屁とも思っていないのは間違いありませんが、ウクライナがやれば自分の非は棚に上げてウクライナを糾弾するでしょう。或いは、自作自演でロシア民間人を殺傷する偽旗作戦のネタとする可能性もあります。
黒海においてウクライナは軍事力で対抗すべきでは無い。
政治力で戦うべきです。




